「もし世界から冷蔵庫が消えたら?」-中学生とジャムを作って気づいた、人類最古の知恵|食×授業#5
この授業は、かつて中学校にあった選択教科という授業で行った実践です。
選択教科だからこそ、
テストのための知識ではなく、
やってみる
失敗する
自分の感覚で確かめる
そんな学びを大切にしたいと考えていました。
そこで今回紹介するのが、
ジャムを、みんなで作る授業です。
1.ジャムは、人類最古の保存食品
この日の授業は、この一つの問いから始まりました。
「もし、世界から冷蔵庫がなくなったら、どうする?」
教室からは、すぐに声が上がります。
「コンビニ行く」
「コンビニだって冷蔵庫あるでしょ」
「土に穴掘って埋める」
「一生、カップ麺食べて暮らす」
一気に教室がざわつきます。
そこで、黒板に一言だけ書きました。
「ジャム」
パンに塗るもの。
ヨーグルトに入れるもの。
子どもたちにとって、
ジャムはとても身近な存在です。
「えー、なんでジャム?」
「冷蔵庫なかったら腐るじゃん」
「ジャムだけじゃ生きていけない」
そこで、次の問いを投げかけます。
「ジャムって、いつからあると思う?」
返ってきた答えは、
「昔のヨーロッパっぽい」
「中世くらい?」
「冷蔵庫ができてから?」
どれも、もっともらしい意見です。
そこで、こう伝えました。
「実は、ジャムは人類最古の保存食品のひとつなんだ」
教室が、少し静かになります。
2.ジャムは、古代から人を助けてきた
ジャムの原型は、
1万〜1万5千年前の旧石器時代後期までさかのぼるといわれています。
ミツバチの巣から蜜を採る壁画。
果実を土器で煮た痕跡。
そこにあるのは、
「甘くする」
「火を通す」
という、ごくシンプルな工夫です。
けれどそれは、
生き延びるための知恵でした。
時代が進み、砂糖が広まると、
ジャムは一気に価値を持ち始めます。
アレクサンダー大王
十字軍
海を越えた貿易
ジャムをたどると、
世界史の話にまでつながっていきます。
かつて、ジャムは
一部の特権階級しか口にできない食べ物でした。
それを知ることで、
今の食卓がどれほど恵まれているかも見えてきます。
3.そして、実際に作ってみる
知識を入れたあと、
いよいよ実習です。
班ごとに選んで買ってきた果物。
レシピを見ながら、
砂糖(またははちみつ)の量を相談します。
鍋を囲み、木べらを動かすと、
教室の空気が一気に変わります。
教室中に広がる甘酸っぱい香りと、パチパチと跳ねる鍋の音
そして
「こんなに砂糖入れるんだ」
「焦げそう!」
「まだシャバシャバじゃない?」
「いい匂いしてきた!」
といった声。
ここで起こるのは、
教科書には載らない学びです。
混ぜるのをやめると焦げる
甘さで保存性が変わる
火加減で仕上がりがまったく違う
残念ながら、
焦げて苦くなってしまった班
水分が飛ばずにソースのようになってしまった班
もありました。
でも、その『なぜ?』を考える顔は、成功した班よりも真剣でした。
4.「保存」という言葉の意味が変わる瞬間
完成したジャムを見つめながら、
ある生徒が、ぽつりと言いました。
「昔の人、すごくない?」
その一言で、
この授業はやってよかったと感じました。
保存とは、
技術であり
工夫であり
生きるための知恵
だったのだと、
実感として伝わった瞬間でした。
5.ジャムから学べること
この授業で扱ったのは、
レシピではありません。
人類の知恵
「保存」という発明
食と歴史のつながり
技術が生活をどう変えてきたか
料理は、
最高の教材になり得る。
ジャム一瓶から、
人類の歴史が立ち上がってくる。
そんなことを改めて感じた実践でした。
今日の話が、社会科の面白さを思い出すきっかけになれば嬉しいです。 このテーマを「中学社会科の視点」で読み解く授業は、メンバー限定でお届けしています。 土曜夜の社会科教室で、学びなおしを一緒に楽しみませんか。
👉 入学案内はこちら
▼食×授業シリーズ
前回:
第4話:讃岐うどん
次回:
第6話:広島のお好み焼き
▼食×授業シリーズがまとめて読めるマガジン
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!