生徒全員で「スリラー」を踊りたい!-映画『マイケル』を見て【映画×授業#20】
話題の映画『マイケル』を見てきました。
私は、普段、映画は配信サービスで十分だと思っているタイプです。家のパソコンやテレビで見ることがほとんどです。
でも、この作品だけは違いました。
「歌とダンスのシーンは、絶対に映画館で観るべき!」
そんな評判を耳にし、久しぶりに劇場へ足を運びました。
8月中旬の平日。それでも、座席はまさかの全席完売。改めて、マイケル・ジャクソンという存在の大きさを実感しました。
正直に言えば、私は熱狂的なファンではありません。CDを持っているわけでもなく、ライブ映像をあまり見たこともありません。
私の中のマイケルは、
「歌もダンスもすごい人。」
「でも、チンパンジーと暮らし、整形を繰り返していた、少し変わったスター。」
その程度のイメージでした。
ところが、映画が始まって数分。その印象は、静かに崩れていきました。
1.圧巻のライブシーン→そして教師の「悪い癖」
とにかく、歌とダンスがすごい。
スクリーンいっぱいに広がるステージ。
体の芯まで響く音楽。
まるで本物のライブ会場にいるような臨場感に、何度も鳥肌が立ちました。
そして、そのときです。
いつものように、教師だった頃の「悪い癖」が、むくむくと顔を出しました。
「これ、全校生徒に見せたら、きっと楽しいだろうな!」
気づけば、映画ではなく学校の体育館を想像していました。
大きなスクリーンに映し出される『マイケル』。
エンドロール後、体育館に大音量の『Thriller』を流す。
すると、最初は数人の生徒が立ち上がる。
隣の友達も立つ。
先生も立つ。
体育の先生も。
生活指導主任の先生も。
そして最後には、校長先生までゾンビになって踊っている。
そんな学校行事があったら、最高じゃありませんか。映画を見ながら、一人でそんな妄想をし、ニヤニヤしていました。
2.この映画は、ただの「音楽映画」ではない
でも、この映画の魅力は、歌やダンスだけではありません。
教師の目で見ていると、何度も映像を止めて、子どもたちに問いを投げかけたくなる場面があったのです。
◆「良い作品は、才能だけで生まれるのだろうか。」
『Billie Jean』『Thriller』…
誰もが知る名曲も、一夜にして生まれたわけではありません。
映画には、納得するまで曲を作り直し、ダンスを磨き続けるマイケルの姿が描かれています。
「才能があるから成功した。」
そう言ってしまえば簡単です。でも、本当にそうでしょうか。
私は子どもたちに、こんな問いを投げかけてみたいと思いました。
「良い作品は、才能だけで生まれるのだろうか。」
探究学習にも通じる、とても大切な問いだと思います。
◆「人は、なぜ自分を変えたいと思うのだろう。」
チンパンジーと暮らしたこと。
整形を繰り返したこと。
以前の私は、「少し変わった人だな」としか思っていませんでした。
でも映画を見ると、その背景には、普通の子ども時代を送れなかったことや、父親との関係、外見へのコンプレックス、世間の視線など、さまざまな事情が見えてきます。
もちろん、すべてを肯定することはできません。それでも、
「人は、なぜ自分を変えたいと思うのだろう。」
そんな問いから始まる道徳の授業は、きっと子どもたちの心に残るはずです。
◆「厳しい指導」と「虐待」の境界はどこにあるのだろう。
父であるジョセフ・ジャクソンの厳しい指導。その結果、世界一のエンターテイナーが誕生したことは事実です。
でも、その教育は正しかったのでしょうか。結果が出れば、過程は許されるのでしょうか。
家族とは何か。
教育とは何か。
子どもの幸せとは何か。
その簡単に答えが出ないテーマだからこそ、子どもたちとじっくり考えてみたいと思いました。
3.社会科の教材としても、一級品でした
私が最も「社会科の授業になる」と感じたのは、MTVの場面です。
当時、MTVでは黒人アーティストのミュージックビデオはほとんど放送されていませんでした。しかし、マイケルの圧倒的な実力と人気が、その壁を動かしていきます。
ここで私は、こんな問いを投げかけたくなりました。
「差別は、法律が変わればなくなるのだろうか。」
制度が変わっても、人々の意識はすぐには変わりません。だからこそ、一人のアーティストが社会を変えていく姿には、大きな意味があります。
さらに、幼い頃から学校ではなくステージに立ち、大人と同じように働き続けた姿からは、「児童労働」という世界的な課題についても考えることができます。
歴史にも、公民にも、総合的な学習にもつながる場面が、この映画には数え切れないほどありました。
4.映画は、「問い」を生み出す
教師という仕事は、不思議です。
映画を見ても、旅行へ行っても、ニュースを見ても。
気がつくと、
「これ、授業で使えないかな。」
そんなことばかり考えてしまいます。
映画館を出たあと、私の頭の中に残っていたのは、『Beat It』、『Billie Jean』、『Thriller』…だけではありませんでした。
そう、頭の中には、
「この映画を子どもたちに見せたら、どんな問いが生まれるだろう。」
という私自身の問いでした。
そして、もう一つ。
「マイケル、すごいな……。」
映画を観る前は、知っている曲がいくつかある程度でした。ところが、映画を観終わってからというもの、すっかり私はマイケルに魅了されてしまいました。だから、最近は家でも、
『Billie Jean』を聴き、
『Beat It』を聴き、
そして『Thriller』を聴く。
映画を観る前より、明らかにマイケルが身近になりました。これも、映画の力なのかもしれません。
映画は、答えを教えてくれるものではありません。だからこそ、授業になります。
歌とダンスに心を動かされる。
その裏側にある人生、家族、差別、人権、自己肯定感、児童労働について考える。そんな時間が、学校にあってもいい。
もし私が今も教壇に立っているなら、この映画を全校生徒と一緒に見たい。そして、上映が終わったら、体育館中に『Thriller』を流すでしょう。
最初は照れながら踊る生徒たちも、きっと途中から笑顔になる。
先生も、生徒も、校長先生も。みんなでゾンビになって踊る。
そんな学校なら、きっと一生忘れられない思い出になります。
あなたなら、この映画を見た子どもたちに、どんな問いを投げかけますか。
今日の映画の話が、社会科の面白さを思い出すきっかけになれば嬉しいです。 この作品を「中学社会科の視点」で読み解く授業は、メンバー限定でお届けしています。 大人の学びなおしとしての社会科を、一緒に楽しみませんか。
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