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ビンタされていた「山ちゃん」が、私に教えてくれた本当の覚悟-月亭方正さんの落語を聴いて|休み時間#14

#休み時間シリーズ (第14話)
学校の先生や教育全体に関する
あるあるな話題を取り上げていきます。

※このシリーズは、どの回からでも読めます。


みなさんは、月亭方正さんという落語家をご存知でしょうか。

私ぐらいの年代の方なら、あの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」で、よくプロレスラーの蝶野さんにビンタされていた「山ちゃん」だよ、と言うとピンとくるのではないでしょうか。

その頃の彼の芸名は、山崎方正。
にぎやかで、いじられて、罰ゲームを受けて、場を明るくする。
そんな「リアクション芸人」としての姿が印象的でした。

今から20年近く前、その山ちゃんが落語家になった――。
しかも、芸人と落語家の二刀流ではなく、本格的に落語家として歩んでいくというニュースを聞いたとき、私は「へぇ、なんで今さら?」と、どこか遠い話のように感じていたのを覚えています。

ところが昨年、たまたま彼の落語と講演の会があることを知り、なんとなく足を運んでみました。

もともと落語が好きで、時々寄席に運んでいたこともありますが、それ以上に「なぜ、40歳を前にして落語の道へ進んだのか」ということが、どうしても気になったのです。


1.「自分には本当の芸がない」という気づき

第一部の講演の中で、方正さんは、次のようなことを語りました。

「仲間のお笑い芸人たちとステージに立った時、皆は始めから終わりまでドッカンドッカンと笑わせる。でも自分が出ると、最初こそ笑ってくれるが、だんだんと静まっていく。そこから、自分には本当の芸がないと気づいた。このままではいかんと思って、落語という芸を身につけたいと思ったんです。」

この言葉は、私の胸に強く残りました。

40歳目前。芸能界ですでに十分なキャリアも知名度もある。
それでも、もう一度ゼロから修業する道を選ぶ。

師匠は、月亭八方さん。
弟子入りし、叱られ、頭を下げ、覚え、稽古を重ねる。

その姿を想像したとき、私は「勇気」というよりも、
「覚悟」という言葉を感じました。


2.テレビの「山ちゃん」が消えた瞬間

そして、第二部の落語。
高座に座った瞬間、会場の空気が変わりました。

そこにテレビの「山ちゃん」はいません。
座っていたのは、紛れもない「噺家・月亭方正」でした。

間の取り方。声の強弱。ふっと会場を包み込む笑い。
大きな動きがあるわけではないのに、物語の中に自然に引き込まれていく。

笑いながらも、どこかあたたかい。
人情噺の余韻が、静かに心に残りました。

「ああ、この人の芸は本物だ」と、深く感動したのを覚えています。


3.叱ってくれる人がいる有り難さ

後日、一冊の本を買いました。

『僕が落語家になった理由(わけ)』

そこには、改名までの葛藤、家族への思い、そして
「叱ってくれる人がいる有り難さ」などが書かれていました。

四十歳で師匠を持つということ。
積み上げてきた肩書きを一度手放すということ。
それは、決して簡単なことではありません。

けれど、読み進めながら思いました。
挑戦に遅すぎることはないのかもしれない。
天職は、出会った瞬間には分からず、やり続けた先に「これだったんだ」と気づくものなのかもしれない、と。

4.人生は、一生が「修業」

「人生って修業ですよね」

本の中にあったこの言葉が、私の心に残っています。

自分自身の教員生活を振り返ってみても、

「生徒とは友達じゃないんだぞ。ダメなことはダメと言わなきゃ。」
「部活やってる場合?仕事の優先順位が違うよ。」
「君は社会科教師として採用されてるんだよ。もっと教材研究しなさい。」

などと、厳しく叱られたことがありました。
迷ったことも、立ち止まったことも何度もありました。

けれど今振り返ると、あの「叱られた時間」や「もがいた時間」があったからこそ、長い間続けてこられたのだと思います。

落語は、決して派手なエンターテインメントではありませんが、
人を笑顔にし、心を優しくしてくれる力があります。

もし機会があれば、ぜひ一度、生の落語を聞いてみてください。
穏やかな時間とともに、きっと何かが心に残るはずです。

それは、笑いかもしれません。
あるいは、自分自身への問いかけかもしれません。

私にとって、そんなしみじみとした、大切な時間になりました。


【私が購入した本】
『僕が落語家になった理由(わけ)』
※本リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。

【月亭方正さん 公式サイト】



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前回:
第13話:謎解き授業


次回:
第15話:腰痛①

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