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今だからこそ『フラガール』を!-なぜ、常磐(いわき)にハワイを作ったのか?【映画×授業 #13】

最近、石油価格の高騰がニュースになるたびに、ある時代のことを思い出します。

エネルギーが変わると、社会はどう変わるのか。そして、地域はどう生き残るのか。

その問いに真正面から向き合った物語が、今回取り上げる映画『フラガール』です。

私はこの作品を、かつて選択社会の授業で扱いました。そして今でも思っています。

これは「社会科で扱うべき映画」だ、と。

※この記事は、一部、物語の展開に触れています



1.最初に投げた、ひとつの問い

映画鑑賞をする前、私はこう聞きました。

「みんな、スパリゾートハワイアンズって知っているかな?」

私が、ハワイアンズを訪れた時のこと…常夏のテーマパークで、スライダーではしゃぎ、温泉で癒され、そしてフラガールのショーを見た話を語り、こう伝えました。

「このハワイアンズの前身は、かつて常磐ハワイアンセンターと言っていました。今日は、そのハワイアンセンター誕生の物語を描いた映画を見て行こう。」

そして、映画を流す前に、

「なぜハワイアンセンターは、常磐(現在のいわき市)に作られたのか?」

と問いかけました。

「ハワイみたいに気温が高いのかな?」
「えっ?この辺りは反対に寒いんじゃないの。」
「もしかして、ハワイ出身の有名人が住んでいたりして。」
「地物の名産がハワイと同じってことはないかな?」
「でも、作るなら人口が多い都会のほうが良さそうだよね。」

生徒たちは、様々な予想を出し合いました。

では、なぜ常磐だったのか。各自がその問いを持ったまま、いよいよ映画鑑賞開始です。


2.「東北にハワイを」という発想

映画では、当時の炭鉱の町が大きな転換点を迎えていたシーンから始まります。

石炭から石油へ。エネルギー革命によって、炭鉱は急速に厳しい状況へ追い込まれていくのです。

そんな中で掲げられたのが、

「東北にハワイを!」
「炭鉱から観光へ!」

という、あまりにも大胆な構想でした。

それは夢ではなく、生きるための選択でした。さびれていく炭鉱の町に、ハワイを。現実味がないと言われても無理はありません。

「本当に人が来るのか」
「10年もつのか」

そんな声もあったといいます。

それでも、計画は進められました。このままでは、必ず地域が立ち行かなくなる。炭鉱の関係者は失業してしまう。家族はどうなる…そんな危機感があったからです。

3.「一山一家」という選択

テーマパークの目玉として、フラダンスのショーが計画されました。それも、地元の女性たちからダンサーを募集して…

ここで、いったん映画をストップ。生徒からは、こんな疑問が出てきます。

「なんでプロを呼ばなかったの?」
「絶対そっちのほうが早いのに」

確かにその通り。それでも、あえて地元の娘たちを育てる道を選んだ。その背景には「一山一家」…同じ山で働く者は、みな家族という考え方がありました。

この話をしたとき、生徒のひとりが言いました。

「うまい人じゃなくて、自分たちでやるってことか」

この一言が、物語の核心を突いていたのです。

4.そして、物語は 全国を回るフラガールに

ハワイアンセンターは、作れば人が来るわけではありませんでした。だから彼女たちは、全国を回って自分たちを知ってもらうことにしました。これが、フラガールによる全国キャラバンです。

このシーンを見ると、生徒たちはこう言います。

「待ってるだけじゃダメなんだ」
「自分たちから行ったんだ」

いよいよオープンの日。彼女たちの決死の努力もあり、ハワイアンセンターには全国から大勢の観光客が押し寄せました。

そして、映画は感動のラストシーンへ。

あの素人集団だった、地元の女性たちによるフラダンスショー。
ノンストップで繰り広げられるショーの映像は、まさに圧巻です。

何度もこの映画を見て、あらすじも知っているのに、私の目には思わず涙が…(笑)
生徒たちも食い入るように画面を見つめていました。

5.常磐でなければならなかった理由

映画を見終えたあと、生徒たちからこんな声が出ました。
「都会じゃなくても、人を呼べるってこと?」
「観光って場所より中身なのかも」
「ここでやる意味があったってことか」

どれも核心に近い意見です。常磐には、炭鉱で働き続けた人々がいて、その家族がいて、生活が失われようとしていました。

だからこそ、この計画は観光ではなく、地域の生存のための挑戦だったのです。

そこで、私は、もうひとつの問いを重ねました。

「フラガールは、近年も全国キャラバンをしているのをしっているかな?」

彼女たちは、東日本大震災(原発事故を含む)のあと、コロナ禍のあと、再び全国を回っていたのです。

生徒からは、
「観光客を戻すため?」
「福島のイメージをよくするため?」
という疑問が出てきます。

そして、フラガールは復興のシンボルなのかもしれないと、考え始めます。

「それって、前と同じじゃない?」

炭鉱が閉じたときも、
震災のあとも、
コロナ禍のあとも


映画の主題歌の「虹」は、いまもフラガールたちの全国キャラバンで使われています。つまり、あの物語はいまも続いているということです。

スクリーンの中の物語が、目の前で続いている。そんな感覚になりました。


6.今、教師として思うこと

この映画は、私が本当に好きな作品です。

しずちゃんの温かい演技に笑い、蒼井優さんの迫真のダンスに引き込まれる。

でも、それ以上に心に残るのは、「人が本気で地域を支えようとする姿」です。うまくいく保証なんてない。それでも、自分たちの場所を守るために、誰かの生活をつなぐために、一歩を踏み出す。

その姿が胸に刺さります。

授業で鑑賞しているとき、生徒たちの表情が変わっていくのを感じました。笑っていたはずなのに、気づけば真剣に見ている。あの空気は、今でも忘れられません。

「なぜハワイアンセンターは、常磐(現在のいわき市)に作られたのか?」

この問いの答えが見えた生徒に、最後の問いかけをしました。


「私たちの地域には、どんなフラガールが必要だろうか。」

『フラガール』は、その問いを、自分ごとにしてくる映画です。


気になった方は、ぜひ一度ご覧ください。

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