あゆみの代わりに,何を保護者へ伝えるのか― 単元テスト,個別懇談,そして学びに返る評価へ
前回,私は,学校運営協議会に出した資料をもとに,
「あゆみをやめることは,評価をやめることではない」
ということを書いた
私が考えていたのは,評価をなくすことではなかった
まとめて渡す評価から,その場で返る評価へ
一律に並べる評価から,一人ひとりに向き合う評価へ
結果を知らせる評価から,次の学びを支える評価へ
評価を,もっと子どもの学びに近いものにしたかった
しかし,ここで大切な問いが残る
あゆみをやめるなら,保護者には何をどう伝えるのか
学校運営協議会でも,その声は出ていた
「何かしら,成績の分かるようなものは欲しい」
「個別懇談会などで,具体的に知りたい」
その声は,もっともだった
あゆみをやめることは,
子どもの学びを伝えなくてよいということではない
保護者が,子どもの学習状況を知る必要がなくなるわけでもないからだ
むしろ,あゆみをやめるなら,
これまで以上に具体的に伝える必要があるのではないか
情報を減らしたかったのではない
私がしたかったのは,保護者へ伝える情報を減らすことではなかった
むしろ,逆だった
子どもが今,どこでつまずいているのか
どこまで分かっているのか
どんな支援があれば次に進めるのか
どのような学び方が,その子に合っているのか
そうしたことを,より具体的に伝えたい……
あゆみには,長く学校と家庭をつなぐ役割があった
それを否定したいわけではない
ただ,学期末にまとめて渡されるあゆみだけでは,
子どもの今の学びを十分に伝えきれないのではないか
特に,個別最適な学びを進める中では,
子どもたちの学び方は一人ひとり違ってくる
ある子は,基礎に戻って学んでいる
ある子は,発展的な課題に進んでいる
ある子は,友だちの考えを参考にしている
ある子は,教師の支援を受けながら,一歩ずつ進んでいる
その姿を,学期末にまとめて伝えるだけでよいのだろうか
もっと早く,
もっと具体的に,
もっと次につながる形で伝えられないだろうか
そう考えていた
単元テストの結果を,学びに返す
資料では,代替案として,
各単元テストの結果レポート配付と懇談会の充実を示した

「懇談会の充実」を示した。※一部加工
単元テストの結果を,テストの返却だけで終わらせるのではない
テスト内容の解説
結果に基づくアドバイス
次に取り組むべき課題
そうしたものを,子ども一人ひとりに返していく
資料にも,各単元テストの結果について,テスト内容の解説や結果に基づくアドバイスなどを,子ども一人ひとりに作成し,子どもを通じて配付することを代替案として示していた
ここへ,市が次年度より,
デジタルコンテンツとして,
「ミライシード」(ベネッセ)を使用することを通知してきた
この中に,「テストパーク」というコンテンツがある
タブレットで,単元テストを行うと,
その結果が集約され,テストの解説やふりかえり,
そして結果に合わせた課題の提示までしてくれるものだ
もちろん,テストだけで子どもの学びのすべてが分かるわけではない
テストで測れる力もあれば,測れない力もある
授業中の姿,友だちとの関わり,考え方の変化,学びに向かう姿勢……
それらも大切な学びである
だから,単元テストの結果レポートは,評価のすべてではない
ただ,少なくとも,
子どもたちの学習の中で,
どこでつまずいているのか,
どこまで理解しているのかを,
今までより具体的に共有する手がかりにはなるだろう
結果を知らせるだけではなく,次につなげる
大切なのは,結果を知らせることだけではない
何点だったか
マル(○)がいくつあったか
できたか,できなかったか
それだけでは,子どもの学びは前に進みにくい
必要なのは,次に何をすればよいかが分かることだ
どこでつまずいたのか
どの問題で考え方が止まったのか
どの内容をもう一度確かめればよいのか
どんな支援があれば次に進めるのか
評価が,次の学びへの入り口になること
そこを大切にしたかった
あゆみが学期末にまとめて渡されるものだとすれば,
単元テストの結果レポートは,
学びごとに,そして学期の途中で返すことができる
子どもがまだその学びの中にいるうちに返せる
保護者も,今どこでつまずいているのかを知ることができる
教師も,次の支援を考えることができる
評価を,結果で終わらせない
これが,私の考えていた方向だった
個別懇談で,より具体的に伝える
資料では,必要があれば,学習面について
個別懇談会などでより詳しく伝えることも示した
保護者に直接話すことで,伝わることは多い
この子は,どんな場面で力を発揮しているのか
どんな場面で不安になりやすいのか
どのような手立てがあると,学びに向かいやすいのか
家庭では,どのように支えていくとよいのか
そうしたことは,対話の中でこそ伝わることが多いからだ
あゆみは,一方向に渡すものだった
そして分かりにくい……
しかし,子どもの学びを本当に共有しようとするなら,対話が重要であろう
保護者が気になっていることを聞く
教師が捉えていることを伝える
家庭での様子も知る
そして,子どもにとって次に必要な支援を一緒に考える……
個別懇談会後は,私のところへも、保護者がやってくる
校長ではあるが,
公認心理師・特別支援教育士スーパーバイザーでもあるので,
発達という視点からの学習へのアプローチをお伝えしている
これもまた,評価を学びに返すための大切な機会であり,
直接話すことの価値は大きい
デジタルドリルが開いた可能性
子どもたちのタブレットに導入されるデジタルドリルにも,
大きな可能性を感じていた
即時採点,アドバイス,振り返り問題の機能があるからだ
問題に取り組む
結果がすぐ返る
どこで間違えたのかが分かる
アドバイスを読む
振り返り問題に取り組む
これなら,評価が結果で終わらない
間違えたその場で,もう一度考えることができる
つまずいたところに戻ることができる
次の学びにつなげることができる
即時採点は,全て行ってくれるものではないが,
教員への負担も軽減してくれそうだ
現在使用しながら,使うコツを全職員で確認しているが,
働き方改革のひとつとして,使うことができそうだ
この仕組みは,高学年のあゆみに代わる評価情報の一部として
活用できそうだ
もちろん,デジタルドリルだけで評価が完結するわけではない
子どもの学びは,画面上の結果だけでは見取れない
教師が授業の中で見る姿もある
友だちとの関わりの中で見える成長もある
粘り強く取り組む姿もある
けれど,即時に返るという点では,デジタルドリルには大きな意味がある
学期末にまとめて返すのではなく,
学びの途中で返すこともできる
その方向性と,とても相性がよいものではないだろうか
あゆみの代わりに必要だったもの
あゆみの代わりに必要だったのは,単なる別の紙ではなかった
必要だったのは,子どもの学びを
より具体的に,
より早く,より次につながる形で
伝える仕組み……
単元テストの解説
デジタルドリルによる即時フィードバック
個別懇談での対話
授業中の教師のみとりと支援
低学年は,単元テストに答えが付いているものを保護者へ伝え,
テスト実施後は,学校連絡アプリで,保護者へ伝えた
それらを組み合わせながら,子どもの学びを伝えていく
一つのものですべてを担うのではなく,複数の方法で補い合う
これが,私が考えていた「あゆみの代わり」だった
情報を減らしたかったのではない
評価を軽くしたかったのでもない
むしろ,子どもの学びを,
より具体的に,より早く,より次につながる形で返したかった
評価を,学びの中に取り戻す
あゆみをやめることは,評価をやめることではない
評価を,学びの中に取り戻すこと
まとめて渡す評価から,その場で返る評価へ
一律に並べる評価から,一人ひとりに向き合う評価へ
結果を知らせる評価から,次の学びを支える評価へ
この方向へ進みたいと考えていた
もちろん,これで全てが解決するわけではない
単元テストの結果レポートにも課題はある
デジタルドリルも万能ではない
個別懇談にも時間の制約がある
教師の見取りをどう共有していくかも,考え続けなければならない
それでも,私は,この方向に可能性を感じていた
評価とは,子どもを並べるためのものではない
評価とは,子どもの学びを前に進めるためのものだ
だからこそ,あゆみをやめるという選択は,
評価を手放すことではないということだ
評価を,子どもの学びに返すための一歩なのだ
次回は,あゆみをやめる方向へ進んでいく中で,
学校としてどのように教職員と共有し,保護者へ伝えていったのかを
書いてみたい
