AIは「頼る」ものじゃない、「使い倒す」ものだ──僕のリアルなAI活用方法
株式会社BPIOで社長室付けの堀江 孝輔(ほりえ こうすけ)です。セブンリッチには2025年12月に入社しました。僕の仕事には、定型的な業務がほぼありません。研修事業の立ち上げ、総務BPOサービスの設計、新卒向け育成プログラムの構築、インターンシップの企画など、いわゆる「なんでも屋さん」です。基本的にはプロジェクトベースでサポートをしていますが、すべてが初めての連続なので、前例がないことを自分で考えて形にしていく毎日です。
正直に言うと、AIがなければ今の仕事量はこなせません。ただ、AIがあるからといって楽になったわけでもなく。使い方を間違えて痛い目を見たことも、一度や二度ではありませんでした。この記事では、多くのプロジェクトを抱える僕がAIとどう向き合い、実務でどう使い、どんな失敗と成功を経験してきたか、そのリアルをお伝えします。
AIとの衝撃的な出会い
2022年12月、ChatGPT3.5がブラウザで使えるようになったときの衝撃を今でも覚えています。当時、僕は会社経営をしていたのですが、「すべての物事は言語で表現できる」という考えを持っていました。
経営者という立場になると、社長やオーナー、優秀な人間ばかりが目に入ってきます。学生時代までは自分はそこそこ頭がいいと思っていましたが、ビジネスの世界に入ると、自分より強い人間がわんさかいます。「いつか見返してやる」と、ずっとそう思っていました。
だからこそ、言語による指示だけで問題を解決するAIの登場は、ビジネスの根底を変えると感じるほどの衝撃でした。「すべては言語で表現できる」と信じてきた僕にとって、やっと自分にも勝ち目が出てきたと感じ丹です。
それからAIを徹底的に使い倒し、パートナーとして扱い方を磨き続けました。具体的には、有料プランへ課金したり有識者のnoteでインプットしたり。Xでのキャッチアップも欠かしませんでした。何をするにもまずAIを絡ませて、自分の手を動かして、どうにか実務に組み込んでいくことをトライし続けました。
僕だけの頭脳レベルで負けていたとしても、AIという武器を含めた総合力でなら、誰にも負けなくなるかもしれない。そう信じて今もAIと向き合っています。
セブンリッチでのAI失敗談
僕が普段よく使うのはGemini、NotebookLM、Antygravityのみっつ。用途に応じて使い分けています。具体的に任せていることを挙げると、市場動向のリサーチや競合調査などの情報収集、一次資料をもとにしたデータ分析、新規事業のコンセプト検討などのアイデア出し。タスク整理・スケジュール管理・議事録の要約、提案書のドラフトや報告書のフレームワーク構築なども任せているので、業務の9割以上にAIが関わっています。
唯一、今のところAIだけでは完結できないのが、研修用動画の録音と動画編集でした。ここでは、僕が試して失敗した事例を紹介します。
AI音声で研修コンテンツを量産して失敗
直近で最も痛かった失敗は、研修コンテンツの音声をAIで作成しようとしたことです。テキスト原稿からAI音声を生成して、大量のコンテンツを効率よく制作する。プランとしては合理的でした。でも、結果として商業レベルのクオリティには届きませんでした。
何度もパラメータを調整し、複数のツールを試す中で、人の温かみに関してはかなり良い線まで行きました。(技術の進歩はすごい!)
ただ、問題が発生しました。生成するたびに声色やトーンが変わってしまうんです。チャプターごとに声のニュアンスが違ってしまうコンテンツは、商業用として使えません。クオリティを揃えようとすると、パラメータの微調整、リテイク、音声の繋ぎ合わせを行わなければならず、結局、自分で喋って録音するより数倍の時間がかかりました。効率化のためにAIを使ったはずが、完全に本末転倒でした。
この失敗で失ったものはふたつ。単純に時間と人件費のロスです。AI音声に費やした時間は、すべてやり直しになりました。撤退判断の遅れがあったことも原因のひとつです。「ここまでやったんだから」というサンクコストに引きずられて、切り替えのタイミングが遅れてしまいました。
AIでできることとできないことの線引きを見誤ると、AIは味方ではなくコストになるのだと学んだ出来事でした。
失敗を経たからこそ得た成功例
失敗を経てAIとの正しい距離感をつかんでからは、成果が明確に変わりました。
成功① 20時間の作業を2時間に短縮したローカルアプリを開発
直近の労務BPOプロジェクトで、従業員情報を整形して定型フォーマットに落とし込む作業がありました。毎回20時間もかかっていた業務です。方法として、単純にGeminiに従業員情報を入れてデータ整形させるやり方もなくはない。でも、毎回同じフォーマットで出してくれる保証はなく、そもそも従業員の個人情報を外部のAIに入れることはNGです。
そこで別のアプローチとして、AIを使って自分のPC内だけで動くローカルアプリケーションを作りました。外部に情報が漏れない方法で、定型的なルールに基づいて従業員情報から必要なデータを抽出し、決まったフォーマットで出力する仕組みです。出力は毎回固定され、セキュリティの問題もクリアできます。
アプリ開発にかかった時間はたったの1時間。このアプリのおかげで、毎回20時間かかっていた作業が2時間で終わるようになりました。1時間の投資で、毎回18時間の節約が生まれる計算です。
僕はここに、AI活用の重要な分岐点があると思っています。おそらく、「AI活用」と聞いて、多くの人がイメージするのは「既存の業務ワークフローの一部をAIに任せること」ではないでしょうか。たとえばメールの文章をAIに書かせる、アイデア出しにAIを使う、10ステップある業務の一部をChatGPTでやってみる、など。ただ、そうした活用方法だと出力がブレるため、なかなか商業レベルでは使えません。
その解決策が、AIで直接業務を自動化するのではなく、AIを使って業務を自動化するためのツールやアプリを作ること。そうすれば、定型的な出力ができるツールを作り、そのツールで業務を回すことで出力は固定され、セキュリティもコントロールできるようになります。
成功② 20時間かかっていた研修用スライド制作も1〜2時間に
研修事業で使うスライド資料の作成もうまくいきました。研修や勉強会のスライドを、箇条書きのような簡素な資料ではなく、図解入りで商業レベルのデザインに仕上げようとすると、1枚あたり最低でも10〜15分かかります。凝ったものなら30分ほどかかってしまうこともザラにありました。加えて、デザインの統一も難しい。スライド制作の手間が想像以上にかかることは、1から資料を作ったことがある方なら実感されていると思います。僕の研修コンテンツは1本の動画で50〜80枚のスライドを使います。仮に1枚15分として80枚作ると、それだけで20時間もかかってしまう計算になります。
最初に試したのは、AIにGoogleスライドやPowerPointを直接出力させるアプローチです。GensparkやManusのようなツールも、Geminiのキャンバス機能でスライドを生成する方法も試しました。でも、ことごとくうまくいきませんでした。座標指定ができずレイアウトがズレたり、エクスポートすると崩れたり。文字サイズの制御もできず、安定したアウトプットが思うように出せません。
ここでも、先ほどのように発想を転換しました。次に試したのは、スライドをHTMLで作らせるというアプローチです。HTMLはAIとの相性がよく、デザインやレイアウトをコード上で厳密に定義できるので、テンプレートとして型を作ってしまえば、AIはその型に沿って安定した出力を返してくれます。実際にやってみると、統一されたデザインで、図解まで含めたきれいなスライドをバンバン生成してくれるようになりました。
ただ、HTMLにも壁がありました。HTMLはコーディングの知識が必要なため、そのままでは現場での編集が難しいんです。
そこでさらにAIを使い、HTMLスライドを読み込んでページ単位で編集・PDF出力できるアプリを自作しました。

これで、生成されたスライドをGoogleスライドと同じ感覚で微調整し、そのままPDFとして書き出せるようになりました。
もう一つ工夫したのが、AIへの指示の出し方です。カスタム指示に「こういうデザインで」と言葉で定義するだけでは出力がブレるので、テンプレートとなるHTMLコードと完成版のHTMLサンプル、完成版のPDFの3点をリファレンスとしてAIに参照させました。「型」「ゴールのコード」「ゴールの見た目」の3つを揃えることで、AIが迷わず安定した出力を返せるようになりました。
その結果と、最初の15枚が軌道に乗れば、以降のチャプターは安定して生成されるようになり、80枚のスライドを1〜2時間で作れるようになりました。手作業なら20時間かかる作業が、10分の1以下の時間で終わる計算です。
トライし続ける中で気づいたこと
使い込む中でふたつ大きな気づきがありました。ひとつめは、最新のAI情報をキャッチアップし続けることには、実務上そこまで大きな価値がないこと。僕は、AIを使い続けるうちに、「どのモデルが最強か」という議論に、以前ほど価値を感じなくなりました。こちらのモデルが良くなればあちらも良くなる。どんどんアップデートされていくから、どんぐりの背比べなんです。プロンプトがどうだとか、どのAIを使うとか、正直に言えば、それは枝葉の話です。
本当に大事なのは、「これが実務でどう使えるのか?」「商業レベルで通用するのか?」を見極めること。そこに正面からぶつかって、試して、失敗して、また試す。その繰り返しの中で蓄積される経験こそが、最も重要だと感じています。
もうひとつは、AIは日進月歩で成長し続けているということ。AIの世界では、1週間前にできなかったことが、今週はできるようになっている。「前に試してダメだったからもうやめよう」は、AIにおいては通用しない考え方です。定期的に同じ課題をぶつけてみると、アウトプットの質が変わってくるはずです。
これからもAIと一緒に
生成AIが騒がれ始めた初期に「AIはすごく優秀な新入社員だと思え」という表現がよく使われていました。これは本当にその通りだと思います。「何をやるか」だけでなく「どのようにやるか」をきちんと指示してあげる必要があります。出力に対してフィードバックもしてあげなきゃいけない。新入社員を放置したら成果は出ませんが、しっかり育成したらとんでもない戦力になる。AIも同じです。
どれだけ前提知識や文脈情報を与えてあげるかで、AIの挙動はまったく変わります。僕も今、複数のプロジェクトをAIと一緒に走らせています。研修事業や総務/労務BPO、新卒育成にインターンシップ企画、など。どれも初めての連続で、一筋縄ではいかないものばかりです。
AIを使いこなせるかどうかは「AIの性能」ではなく「使う側のマネジメント力」で決まる。2年以上向き合い続けて、たどり着いた結論です。ただし、「自分の頭で考えることだけは絶対にやめない」と自分に約束しています。方向性を決め、構造を組み、そこにAIを使い倒す。この順番を守ることが、僕のAI活用の原則です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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