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AI活用の前に、業務データを資産にする。BPIO代表・一杉勇輝が語る「負けない組織」のつくり方

バックオフィスのBPO・DX事業を展開する株式会社BPIO。「AIで仕事がなくなる」とも言われる時代に、組織はどうAIと向き合えばいいのか。代表・一杉勇輝が語ったのは、AI活用の前段にある「データを整える」という発想と、選択肢を増やし続ける組織のつくり方でした。


noteに登場する社員

一杉 勇輝(ひとすぎ・ゆうき)
北海道大学在学中にSRA札幌事務所でインターンを開始。新卒入社後、経理BPO事業の推進に携わり、札幌事務所マネージャーを経て、2023年に経理BPO事業部を法人化。現在は株式会社BPIO代表取締役を務めています。


「データを整える」ことから始める。80人組織のAI浸透の土台づくり


── 現在セブンリッチグループ全体でAI活用を推進していますが、BPIOではどんな変化がありましたか。

一杉:
大きく2つのフェーズが同時に進んでいる状態です。

BPIOの組織全体としては、まずAIを定着させるための土台づくりのフェーズです。Slackチャンネルでの活用事例の共有、生成AI研修、有志による勉強会などを行い、すぐに成果は求めず自然とAIを使う……すなわち「AIを使って遊ぶ」ことを推奨しています。

一方で、一部の業務ではすでにAI活用の効果が大きく出ています。たとえば特定のツールを活用した場合の業務工数を減らすことには成功しています。ただ、現状は利用できる場面に制限があり、導線が整えばより広い業務でも工数を削減できる状態です。いくつかの条件があるので組織全体で生産性が大きく上がるのはもう少し先のフェーズですが、成果が出始めている領域もあります。


──  組織全体としては土台づくりのフェーズとのことですが、BPIOはグループ事業のなかでもとくにAI活用に精力的に取り組んでいる印象です。メンバーには、どんなコミュニケーションを取っていますか。

一杉:
いまは強制するよりも、触りたい人が自然に触れる環境づくりを優先しています。なにより大事なのは、AI活用以前に「AIのためのデータを整えていく」ことではないかと。AIは万能ではないので、データがなければ判断してくれません。だからこそ、判断の元になるデータ・コンテキストがしっかり揃っていることが価値になると考えています。

その前提を理解してもらうため、BPIOのメンバーにはAI活用をドラクエに例えた文章を送ったこともあります。「AIはメタルスライム。倒せれば一気に経験値が稼げる存在だけど、そもそもメタルスライムに出会うにはレベル15まで育てる必要がある。会社のレベルとはデータの蓄積量と質のこと」という話です。

企業を企業はRPGの「キャラクター」に例え、
データの蓄積(=レベル)の必要性を例えたページをAIで作成・展開を行いました。


── ドラクエの例えはキャッチーでわかりやすいですね。

一杉:
とにかくAIを使うことのハードルを下げたいなと。正直、各メンバーが触って作るものについてはすぐに効果があってもなくてもどちらでもいい。まずは触れてもらうための環境づくりが大切だと考えています。

なので、SlackにAI活用事例の共有や、業務改善の相談が気軽にできるチャンネルを作りました。社員は「効率化してほしいこと」「困っていること」を自由に投稿でき、それを誰もが改善・解決に携われるというものです。

この仕組みがあれば、やりとりを見ているメンバーのAIを使うハードルが下がり「触ってみようかな」と思う人が増えるはずだと考えたんです。

加えて、社員全員が積極的にAI活用に踏み出せる基盤として、生成AI研修を社員全員が受講しています。研修を受けておけば、AIの基本が理解でき「使えるなら使おう」という状態になるはずです。「得体の知れないものだから嫌だ」という状態がなくなるだけでも、AI研修の価値はあると思っています。


また研修と並行して、BPIOのAI推進を担ってくれている外林さん堀江さんのふたりが、社内向けの勉強会を開いてくれています。先月のClaude Code勉強会には社員10名以上が参加しました。疑問点はその場で2人が答えてくれるので、導入のハードルがぐっと下がっている実感があります。

全員への研修で入口をそろえ、「聞きやすい人」を社内に置く。この2段構えが、組織にAIを浸透させる意味で大きいと感じます。

有志でClaudeCode勉強会を実施。
オンライン開催で全国の拠点にいる社員も参加可能に。


代表自ら「とりあえず触る」。提案書の下書きが2時間→1分で


── 個人のAI活用についてもお伺いしたいです。セブンリッチ全社員がAI活用を投稿する「AIアクセラレータープログラム」で、一杉さんは月12個以上の成果を出されていますよね。BPIO代表として日々の業務もある中で、なぜそこまでAIに向き合えているのでしょうか。

一杉:
これだけ世の中で「AIがすごい」と言われているから、まずは理解できるまで自分で触ってみようと思いました。もちろん最初は大変でしたが、AIに詳しいメンバーから「とりあえず全部Claudeに聞けばいいです」と言われて触ってみたら、意外とできると気づけたのが大きかったですね。


── 具体的に、どんな業務改善を行いましたか。

一杉:
もっとも効率化を実感しているのは「提案書自動作成ツール」です。ヒアリングした議事録から論点を整理し、スライド制作まで完了するのを自動化しました。設計にClaude Codeを使用し、GAS(Google Apps Script)とGeminiを組み合わせて動かしています。重要な情報はマスキングして処理をしています。これまで2時間ほどかかっていた提案書作成が、ドラフトを1分で出せるようになりましたね。


── 2時間の作業が1分! 素晴らしい成果ですね。この他にもさまざまなツールを作成していますよね。

一杉:
そうですね。ただ、こうしたツールは「1年後には使われていない前提」で出しています。本当は大きな構想を持って、全体にインパクトのあるものを作らなくてはいけない。とはいえ、それには数か月かかります。

だからその間「あったらちょっといいよね」という日常的に少し楽になるツールをあえて小出しにしているんです。「こんなものがすぐ作れるんだよ」という姿を私が見せることで、メンバーにとってAIがぐっと身近な存在になる。触ってみようかな、自分の業務にも応用できるかも、と思える人が増えていく。そこを狙っています。また、制作したツールを資産として蓄積していけば、時間がかかる大きな開発に活かしていくことはできるので無駄にはなりません。


「AXの前にDXしましょう」。DX支援のニーズが残り続ける理由


── AIを活用する企業が増える中、BPIOの主戦場であるバックオフィスの業務はどのくらい変わると考えていますか? 「AIで仕事がなくなる」という不安の声もあるかと思いますが……


一杉:
前提として、AIを導入できても、組織に浸透させられる会社は多くないのではないでしょうか。

クラウド会計ソフトが世に出て13〜14年が経ちますが、それでも普及率は3〜4割にとどまっていて、まだ触れていない会社がほとんどです。また、導入していながらも活用しきれていない会社も多くあります。そこにさらにAIが乗ってきても、キャッチアップできる会社は限られる。だからこそ、DX支援のニーズはまだ残り続けると考えています。


── そうすると、BPIOのDX支援事業にも、人の介在する余地はまだ大きく残っていると。

一杉:
そう思います。どれだけハードルが下がっても、使わない人は使わないと思います。スマホを使っていない人がまだ多くいるぐらいで、ツールの浸透にはどうしても時間がかかります。

ですが、バックオフィス業務の支援はそういった人も対応できるような仕組みにしなければ会社が成り立たない。ここを埋められるのは、ツールではなく人の伴走です

そして、BPIOがこだわっているのは「最先端を知りつつ、現場まで降りていく」こと。たとえばDXといえばペーパーレス化が思い浮かぶかもしれません。でもそれは過程にすぎなくて、紙をなくせばいいという問題ではないと思うんです。データをどう使うかが本質です。

そこまで見据えて提案するには、私たちは一番生産性の高い形を常に知っておく必要がある。いまはそれがAI活用だと思うんです。一番いいものを知らなければ、そもそもゴールが考えられませんから。

SaaSは各社がどんどん良くしてくれています。BPIOはそれらをすべて組み合わせた状態でバックオフィス業務を効率化し、提供する。使える人と使えない人の格差が広がるこれからの時代に、私たちがこの領域で一番先を走っていれば、むしろ勝てるチャンスが増えると思います。


基盤を作り、「選択肢」を増やす。負けない組織のかたち


── 今後AIを使って、BPIOではどんなことを実現したいですか。

一杉:
とにかくデータを集めて、改善していく良いループを作りたいと思っています。いま、セブンリッチの業務データはkintone・Notion・Slack・スプレッドシート・ドキュメントなどさまざまなところに分散しています。これをひとつの基盤に集約して、顧客管理もタスク管理も、さらには提案書作成のようなAI機能も、誰でも使える状態で載せていく構想を進めています。

この基盤の本当の価値は「過程のデータ」にあります。世の中に「成果のデータ」はたくさん溢れていますが、そこにたどり着くまでの過程のデータは自社分しか集められない場合が多い。私たちは180社以上のバックオフィス支援を行ってきたからこそ、守秘義務の範囲で、業務プロセスのノウハウ・パターンを蓄積することができる。ここは他社にはない価値だと思っています。

これをいち早く形にできれば、本当の意味で「負けない状態」が作れる。そう考えています。

加えて、大事にしているのが会社としての「選択肢を増やす」ということ。他社に追いつけない状態は、選択肢がない状態だと思うんですよ。逆に先端を走っていれば、選択肢は無限に広がります。競合を気にせず、市場のニーズだけを見て打ち手を決められる。この状態こそが、一番選択肢が大きい。みんなが気持ちよく組織を伸ばせるし、気持ちよく働ける。その状態を目指しています。


── そのために、BPIO代表として意識していることは何ですか。


一杉:

怖がらずに事業と組織を伸ばすこと。これに尽きます。

「AIで人が必要なくなる」という話は世の中に溢れていますが、だからこそ組織に人がいる状態を作れれば、他社に負けないのではないかと考えています。

利益率を上げることだけを考えるなら、新規採用を絞って、習熟度の高い既存メンバーが対応できる範囲で業務を受注すれば生産性は高くなります。けれど、私たちはそれがやりたいわけではない。組織の形を維持したまま会社を伸ばして、選択肢を増やしていきたい。この規模だから集められるデータの数、改善できる数があります。そこを見据えて伸ばしていく。これが、個人として一番意識していることですね。



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