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制限戦争指導論について、その無制限戦争


 J・F・C・フラー氏の軍事学書『制限戦争指導論』を読みました。

 よっしゃー! 読み終わったー!!w
 大変でしたよ⋯⋯2月8日から読み始めて、何とか1週間半くらいで読了。

 2月は確実に潰れると危惧してたが⋯⋯フラーの霊が後押ししてくれたかもw
 最近、アメリカ・イランの関係が怪しくなってきて、今時期に読んでおきたかったし、何か天啓のような気もしたんだよね。

 本当は面倒臭くて、読みたくなかったんだけどw
 前回『機動の理論』で出てきたフラーの思想をどうしても詳しく知りたくなって。

 戦術本を続けて読了してる、このままの流れ・勢いに乗ってみようと思い購入。
 ただ、本を開いての読み初めは苦戦をヒシヒシと感じましたよw

 というのも、これが超面白くてですね。非常に興味深い内容でめっちゃ勉強になりました。
 本書を丸ごと飲み込んで暗記したいくらい。フラーのことを何でも分かりたくなる。

 そういう魅力が詰ってる。70年前の本だけど、現代への警鐘がしっかりと響いてくる。
 でも、本格的な軍事書なんで一読だけじゃ分かんなくて何度も読み直して大変は大変だったなw

 もう仕事・飯・睡眠以外は本書に全力投球。久々に読書へのめり込んだわ。
 俺は本読む時うつ伏せ姿勢なんですが、うつ伏せになりすぎて肩を負傷しましたw

 知らずに力が入ってしまったかもしれん。まぁ、今や良い思い出です。
 肩を犠牲にしたおかげか短期間で読み終えたし。頑張った甲斐があったわ。


 本書の紹介

 で、早速、本書の紹介なんですが、イギリスの軍事研究家・フラーが著した学術書。
 フラーの思想で一番重要な『制限戦争』という理論を解説している本になります。

 フラーは英軍参謀として第一次世界大戦の西部戦線へ従軍。カンブレーの戦いの作戦立案で有名。

 そこでの戦いで新兵器・戦車を大量活用したことから着想を得て、機甲戦・機動戦の概念を提唱。
 現代まで続く戦術の先駆けとなった軍事思想を生み出しました。

 ただ、このフラーの機動戦は別にそれが主旨というわけではなく、本書の制限戦争って理論や考え方の一部分に過ぎないんですね。
 機動戦はフラーが提唱・理想とした制限戦争を導く為の手段・方法に過ぎないということ。

 制限戦争

 じゃあ、フラーの言う制限戦争ってナンジャラホイってことなんですが。
 元々はナポレオン戦争時代に活躍したプロイセン軍人・クラウゼヴィッツが著した『戦争論』から端を発した概念で。

 クラウゼヴィッツの名言である「戦争は政治の一手段」。これに集約されてますかね。
 戦争の目的を政治が明示し、外交で戦争の原因を除去する。政治が明朗に機能する理性的戦争。

 まぁ、簡単に言うと、人命や物資を消耗・浪費する無駄・無益な戦争を止めませんかい?っていう。

 勝利を第一の目的にし、それ以外を無視した戦争主義やスタイル。
 人や物を注ぎ込む総動員・総力戦。その為なら何をしても構わない非理性な政策。無制限戦争。 

 その無制限戦争の対義語として、戦争が起きるのは仕方ないにしても、戦争のやり方。
 戦争の目的はあくまで平和であり、敵の壊滅を目指してはいけない。

 戦争を残虐性に傾かないよう中庸を保ち、迅速かつ的確な作戦で敵軍を妥協的な講和へと導く。
 この一環した戦争の流れを政治がコントロールし、平和を希求する。制限戦争。

 ただ、当時フラーが体験した第一次・第二次世界大戦は夥しい被害を出した無制限戦争と化す。
 政治家・将軍共に勝利を重視し過ぎて目的を見失い、終戦後も禍根を残す結果に陥る。

 フラーは前時代的な野蛮思想、戦争を指揮したルーズベルト大統領やチャーチル首相を痛烈に批判。
 日本・ドイツを叩きのめしたせいでソ連や共産主義など、別の敵を自ら伸長・生み出してしまった愚を追及してます。

 フラーはクラウゼヴィッツにかなり影響を受けて本書を執筆してるそうですが、
 そのクラウゼヴィッツの思想・理論のアップデートを目指してるのかなとも感じます。

 クラウゼヴィッツは、ナポレオンのハイライト、アウステルリッツの戦いを目撃し、「戦争芸術」と称したことでも有名。

 だからその分、クラウゼヴィッツはナポレオン戦争の苛烈さに脳を焼かれてますw
 現在でも戦術の参考にされてる天才をリアルタイムで見てる分、ナポレオン時代の無制限戦争に思想が寄っちゃってるんですね。

 フラーもそのクラウゼヴィッツの不完全や偏重を本書で指摘しています。
 ナポレオン戦争から150年後に行き着いた世界大戦という岐路に、改めて制限戦争の意義を問い直す。

 「国家は相互の真の利益に害を及ぼしてはならない。平和時には相互に最大の善意を尽くし、戦時には最小の害悪に止めるべきである」
 モンテスキューの言葉です。正にその通りなんですけど、その理性を政治の手続きとしてやる難しさも読んでて痛感したり。

 無惨な戦争を繰り返さないように、自身の制限戦争の理論を後世へ示唆。
 そもそも何故こんな無制限戦争が生まれてしまったのかを、歴史のルーツを辿り分析したのが本書の内容になります。

 三十年戦争〜フランス革命

 本書はまず人類が世界大戦という無制限戦争の極致へ至るまでの過程を順を追って解説。
 その始まりとなったのが三十年戦争。民間人を巻き込んだ悲惨な宗教戦争。

 ウェストファリア条約などヨーロッパ初の国際会議が開かれたり、先進的な面もありつつ。
 人間の本能が牙を剥く、無制限戦争への入り口が現れる。

 それからオーストリア継承戦争、七年戦争など。
 サックス元帥やフリードリヒ大王というカリスマが戦争技術を先鋭化させつつ時代が進み。

 そして、運命の時来たる。フランス革命勃発。
 ルソーの著した『社会契約論』。人類が民主主義へと歩みを進める。

 ナポレオンの軍略とイギリスの産業革命とが混ざり合い、新たな文明を誕生させる。
 しかし、それは本能の箍を外す無制限戦争、悪夢への誘いでもあった。

 民主主義

 「制限戦争は18世紀の偉大な業績の一つ。貴族的な良質文化の中でしか育たない温室植物。
 我々はそれを失った。フランス革命によって失った、素晴らしい物の一つ」
 グッリエルモ・フェレーロ (イタリアの歴史家)。

 フラーは本書でフランス革命を契機として無制限戦争が始まってしまったと、かなりこの事件を重要視しています。

 15〜18世紀までは、三十年戦争という例外はあれど、なんやかんや君主同士が折り合いを付けながらの損得勘定な戦い方をしてたのが、
 フランスが共和国になり、国民が政治を担い、徴兵制で総動員・総力戦が幕開け。

 「フランス革命は全国民を情熱の渦へ巻き込み、全国民の全力を天秤皿に載せた。
 戦争の天秤。以前なら、限りある軍隊と財力だけが載り、各国は戦争か同盟かを打算したが、フランス軍は打算に目を向けず進撃し続けた」

 クラウゼヴィッツの言葉です。フランス革命から始まった自由への渇望。
 その革命を守る為に、一国のありとあらゆる力を戦争に捧げる。無制限戦争の雛形。

 その無制限戦争に拍車をかけてたのが民主主義。
 フラーはこの民主主義の欠陥をかなり強く指摘してて、読んでて目を見張りました。

 「諸君は大臣によって欺かれることはないにしても、自分自身によって欺かれることはないか?
 政治的集会を見よ。それが戦争を宣するのは常に激情の虜になった時だ」
 オノーレ・ミラボー (フランス革命の指導者)。

 「バラバラの集まりである大衆を金科玉条のように賛美する神話の存在。大衆は社会の腐敗や階級害毒の結果生まれたもの。
 大衆の危険性は反抗や抗議よりも政治的参加能力の欠如にある」
 ピーター・ドラッカー (アメリカの経済学者)。

 まぁ、一般民を馬鹿にしてるエリートの選民思想みたいなとこもあるんですがw
 ただ、分からんでもないというか。現に今の人類が直面してる問題だと思う。

 人間が元々獣だった頃の本能を受け継いでるってのもあるだろうし。
 ナポレオンやヒトラーのようなカリスマや独裁者にコロッと騙されて従属する愚かしさ。

 第一次・第二次世界大戦も宣伝戦、プロパガンダの過熱で憎悪の応酬になり。
 現代でも、イラク戦争では大量破壊兵器とかいうでっち上げのせいで世論を誘導され。

 イラク戦争のプロパガンダについては『グリーンゾーン』『記者たち』という映画がオススメ。
 自分は騙されないと思っていても、既に日本人は戦争に加担させられてるんです。

 XやらSNSでも、高市ガートランプガーと理性の欠片もない連中が今も犇めいてるし。
 現に民主主義の欠陥が進行中なのを目撃してるからね。グゥの音も出ない正論ですw

 でも、だったらどうしたらええねんっていう。君主制に戻る訳にもいかんしのう。
 フラーはその疑問には答えてないから。まぁ、これから人類が克服すべき課題ってことなんだろ。

 現代の時勢的には民主主義や資本主義の限界が見えてきたんだとも思うが。
 そろそろ第2のマルクスやレーニンが生まれて歴史の繰り返しになりそうな、怖い予感もする。

 ビスマルク⊿

 君主制の時代が終わりを告げ、無制限戦争という地獄の釜が開いた近代。
 人類に希望の光はないのか⋯⋯ありま〜す!w

 ヴィルヘルム1世治世のドイツ帝国。
 宰相ビスマルク・参謀総長モルトケ・陸軍大臣ローンの三位一体。

 何となく普墺戦争・普仏戦争は知ってたけど、本書の制限戦争理論と重ねてみると、制限戦争の意義を体現してるのはビスマルク体制やと思う。

 ドイツ統一を第一の目的として、普墺戦争と普仏戦争をスマートに戦い抜く。
 これぞ制限戦争。フラーはクラウゼヴィッツを参考にせいとは言うてるが⋯⋯

 ビスマルクこそより実践的な見本なんじゃないかって読んでて強く感じました。
 マジで本書読んだらビスマルクさんカッケェ!ってなりますよw

 普仏戦争時に、敗戦したナポレオン三世の処遇が軽すぎると国民から不満が出て、それに対しビスマルクは、

「国民感情・世論は常にそんな批判をする。国民は戦争に於いて勝者が敗者に懲罰を科すべきだと主張する。
 これは不合理な要求だ。懲罰・復讐は政治と何の関係もない。
 政治はネメシスを呼び出したり、裁判の開催を願ってはならない。
 政治上から見れば問題は、ナポレオンを虐待するか歓待するか、どちらが我々にとって有益か。
 ナポレオンがいつの日か、また浮上してくることも有り得るのだから」

 カッケェ〜w この言葉は痺れました。国民に阿らないで、スパッと言い切る感じ。
 現代の政治家全ての耳にこの言葉を捩じ込んでやりたいくらいだ。

 ただ、この制限戦争も結局は為政者の手腕によるってことなんでしょうけどね。
 ヴィルヘルム1世・ビスマルクという名君・名宰相がたまたまかち合っただけで、理論に従って生まれたものではないと。

 ビスマルク体制の輝きが鮮やかであるほど、以後の時代の醜悪さもより際立つ。
 次代のヴィルヘルム2世により、ビスマルクは罷免される。

 ヴィルヘルム2世はドイツ近代化に努めたものの、無神経な外交でイギリスとの対立を悪化させてしまい、後の第一次世界大戦の遠因を作る。

 一方のビスマルクもビスマルクで、後進育成に無沈着だったらしく。
 ビスマルク以後のドイツ政治には有力な指導者がいなくなり腐敗が進んでしまう。

 綺羅びやか天才政治家も完璧ではなかった。結局は走馬灯のように過ぎ去る黄金時代。
 制限戦争の化身たるビスマルク体制も、所詮は人間が一代で生み出した儚いものでしかなかった。

 ドイツ帝国は約50年の歴史で、敢え無く破綻してしまう。
 世界大戦という地獄の始まり。そして、もう一匹の野獣・共産主義の鎌首がもたげる。

 破滅へ

 結論から言おう。アメリカは信用したらアカンw
 なんか本書の第一次・第二次世界大戦の章を読んでたら、そう感じるようになってきた。

 そもそものアメリカ自体が歪みの中から生まれたようなもんだったんじゃないか?
 戦争に対する冷酷さは他国とは全然感覚が違うと思う。そりゃ地球の覇者になるだけの強国なんは確かだが、それが正しかったのかどうか。

 その歪みを現代まで持ち越した国を地球人類の主導国に据えてしまったことが、何よりの誤りだったんじゃないか。
 まぁ、そんなこと言ったら世の中全部が間違いだらけに感じてしまうがなw

 ただ、南北戦争の凄惨さを改めて見るとな。
 国民が分裂しての殺し合い。主義の違いだけならまだしも。

 シャーマンのような殺戮者の登場、リンカーン暗殺による南部への憎悪といい、
 奴隷制廃止の為に、アメリカの国民性を荒廃させてしまったように感じる。

 その後、参戦した第一次・第二次世界大戦でアメリカ国民は敵への憎悪を沸騰させ、殲滅へと傾く。
 その代表者たるウィルソン大統領、ルーズベルト大統領共に民意・世論という暴力の正当化を笠に来て平和を弄ぶ。

 第一次世界大戦のヴェルサイユ条約はドイツ人に復讐心を植え付け、後にヒトラーが台頭する。
 第二次世界大戦ではソ連という巨人を自分達で育て上げ、冷戦という新たな混乱を招く。

 アメリカが介入した戦争はロクなことにならんw
 そして、現代。アメリカはイランと睨み合い、世界大戦を引き起こしかねない危険な賭けに出てる。

 フラーはソ連の伸長を許した米英を批判してたけど、それこそアメリカを勝者にしたせいで人類にとってもう一つの禍根を生み出したのかも。
 本来はそれを日本が太平洋戦争でアメリカの増長を止めるべきだったんじゃないか。

 まぁ、日本も日本でアメリカへの敵意で世論が沸騰し、軍隊も統制を失い。
 真珠湾のような米英が望んだ愚行を犯してしまう辺り、世界の安定を担うに値しなかったんやろが。

 ドイツもヒトラーを止められなかったし。
 第一次大戦時には革命家レーニンの危険性を知りながらロシアへ解き放ち、共産主義の萌芽を手助けしてしまう。

 勝者も敗者もどうしようもない奴しかいなかったんだなw
 制限戦争はただの理想論でしかないのか。人類が先の大戦で何を学んだのか。これから試される。

 総括

 フラーがもし現代を見たら、どう思うんだろう?
 本書の終幕には第二次世界大戦以後、世界がどうなるかの予測が書かれてます。

 まぁ、フラーの予測って大ハズレなんだけどねw

 原子爆弾により、物理的戦争が形骸化し、これからは貿易・経済戦争が主流になるとか。
 資本主義は貧富の差を克服し、世界から貧困を失くすとか。

 核があっても戦争は続いてるし、格差は広がってるちゅーのにな。
 フラーが本書を著した1950年代は戦後繁栄・復興期で、明るい兆しもあったんやろうね。

 幸いソ連は崩壊して第二次大戦の禍根は杞憂に終わったが。これを結果オーライと言って良いのか。
 ロシア・中国という共産主義の残滓がウクライナ・台湾で騒乱を起こし、ここに来て禍根の深刻さが顕になってるような。

 それはアメリカもそう。主流メディアもイラン攻撃を報道し始めてるし、もう避けられんのかね。
 ウィルソンやルーズベルトに嘆息してたフラーがトランプを見たら卒倒するやろなw

 結局、人類は同じ過ちを繰り返すように出来ているのか。
 制限戦争は完璧な理論だと思う。ただ人類がいつまでも不完全なだけで。

 恐らくまた次の大戦がこれから始まるでしょう。
 それを食い止める力は残念ながら国民にないし、そもそも出来ない。

 それが民主主義、資本主義の行き着いた運命。

 ただ、戦争が行き着く先、人間1人1人が自分自身で時代の行く末をしっかり見届ける。
 本書は人類の宿業たる戦争を、理性という羅針盤で見据える為の、一つの答えなんだと思う。

 では、また。


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