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#創作大賞【小説】オネエのいる結婚相談所、嘘からはじまる家族計画⑦


第7話 素敵なプロポーズ

「まあ、そういう子もいるわよ」
 貴之は勅使河原と二人で面談している。1on1ミーティングは月一で実施しているが、今回は急降下でテンションが下がった貴之の事を彼女が心配して緊急で組まれた面談だった。近くのコーヒースタンドからウーバーしたブレンドのホットと、気の利いた焼き菓子をつまみつつの話し合いである。面談が流れた日に春朋香の休会の話をしたところ、勅使河原は
「良くあることよ。気にしなくて大丈夫」
 と、貴之を慰めるように告げた。
「婚活していると公言した段階で、周りも結婚する気がある人なんだっていう目で見てくるからね。婚活をカミングアウトしたことも良いように働いたのかも。これが例えばアプリで寄ってきた手近な男に捕まった・・・・・・となら心配だけど、同窓生なら身元もある程度は確かだし問題も無さそうな気がする」

 まぁ・・・・・・それならば良いのだ。
 実は結婚相談所がサポートする婚活は、会員同士だけでは無い。あまり知られていないが、アプリや婚活パーティなどで知り合った相手でも相談すればサポートしてもらえる相談所は多い。(もちろんサポートしてくれない相談所もある)セカンドブルームは紹介中心の仲人型とアプリのようなシステムを使用して相手を探すデータマッチング型のちょうど中間のようなシステムを採用している。春に関してはまだ相談所の活動はほぼ何も行っていない状態で、ひとまずは本人の望む相手を画面で見てもらいつつ、担当の仲人が良さそうな相手を見繕う――はずだった。
「ま、時々ラインとかで様子を見るくらいで良いんじゃ無いかしら」
「――はい」
「せっかくタカちゃんがやる気だしたのにね」
 ひとこと余計だが、確かに貴之の――仕事に対するやる気はいつもどこかで休憩中なので、勅使河原の言うことに反論できない。上手くいけばいいのだとは思うのだが、やれと言われた以上の事をする気にはどうしてもなれないのだ。ぶっちゃけクビにさえならなければ、過剰に頑張る気は無かった。
「とにかくやれることをやりつつ、春さんのリアクションを待ちましょう」
「はい」
 勅使河原は好物のレーズンサンドを嚙み締めつつ、コーヒーで流し込む。貴之は他の担当客のデータを整理することで気を紛らわせていた。

 夜景がパノラマのように広がるホテルの最上階のラウンジで、朋香と水戸はカクテルグラスを合わせていた。二人はつい先ほどまで階下のフレンチレストランでディナーを楽しんでいたが、デザートも終わりその足で水戸に誘われるままに窓際の席で下界を見下ろしている。
 レストランとラウンジの間には中庭があり、ライトアップされた噴水がある。ラウンジでカクテルを楽しんでいる者だけが見ることの出来る趣向だった。
「綺麗」
 朋香が言うと、水戸は優しい目で彼女を見つめた。
 今日は二人が出会ってちょうど三ヶ月。週に一度は会い、毎日ラインで通話している。週末も月に二回は日帰りでドライブデートを楽しんでいた。畏まった感じでは無いが、お互いの親の顔も見ており二人とも両親には気に入られたようだった。
「うちの息子がこんな素敵な人を連れてくるなんて。この子ったら、私たちにお付き合いしてる人を会わせてくれた事なんて無いんですよ。こんないい人をどこに隠していたのやら」
 もうすぐ還暦だという彼の母親も、朋香を歓迎してくれている。水戸の実家は郊外で農業を行っている。農業と聞いて一瞬引いたのだが、
「朋香さんはご自分のお仕事を頑張られてると聞きました。うちは農業と言っても割と機械化も進んで、組織化してるのでどちらかというと会社経営に近い形で運営してるから」
 ということで、一口に農業従事者と言っても会社化しているらしい。水戸もいつかはその会社を引き継ぎたいと思っているようだが、親が引退するまでは今の仕事を続けるので同居も無いのだと説明を受けていた。
――いい人に見えるけど、結婚となるとまた話が違うのかもしれない。朋香は内心疑っていたが、それでも水戸に惹かれる気持ちは募るばかりだった。
 朋香の両親も
「なんて感じの良い青年なんだ」
 と水戸を評価していた。健全で安全な好青年、おまけに外資系の企業で年収一千万ほど稼ぐやり手のコンサルでもある。基本的には多忙だが、朋香のために頑張って時間を割いてくれていた。ありがたい話である。
「朋香さん」
 水戸が朋香の両手を取った。真剣な顔つきをしている。
「どうしたの?」
 出会って三ヶ月、将来の話などは少しずつ進めてきた。お互い子供が欲しいと思っており、周りを固めたら入籍したいと考えていると彼からも言われていた。

 水戸が合図すると、店員が深紅の薔薇の花束とベルベットの小箱を恭しく運んできた。横から開くタイプの箱だ。
「僕と結婚してもらえませんか」
 憧れの大粒のダイヤが目の前で輝いている。薔薇もダイヤも朋香の目の前で滲んでいった。彼のプロポーズにどう返したのかは覚えていないが、ただただ彼女は嬉しくて何度も頷き続けた。

つづく



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