【XG THE CORE 考察 #8】4 SEASONS | シンプルなのになぜ心に響くのか?歌詞に仕込まれた「ナラティブの余白」
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2025年12月24日、クリスマス・イブに先行シングルとして世界に届けられた、シンガー3人によるアコースティックバラード"4 SEASONS"。
派手なギミックを削ぎ落とし、2本のギターだけで歌われるこの王道フォーマットの曲が、なぜこれほどまでに聴く者の心を締め付けるのでしょうか?
正直に言えば、フェミニンなトーンのバラードが苦手な僕は、最初あまりピンと来ていませんでした。
しかし、時間をかけて歌詞と歌声を丁寧に追ううちに、この曲の深さと良さ、「リスナーのための余白(ナラティブ)」に気づかされたのです。
単なるセンチメンタルな曲ではない、噛めば噛むほどに人生の記憶が蘇る「スルメ曲」の真の良さを、音楽オタク視点で解説します。
この曲はシンガー3人によるアコースティックバラードです。
2025年12月24日に先行シングルとしてリリースされました。
歌詞の和訳と解説
この曲では、3人の正直な想いに乗せて、リスナーそれぞれの大切な人や思い出を想起させる様な内容になっています。
誰に対して、何に対して歌っているのかは、他の曲にもまして曖昧になっており、そこにはリスナーそれぞれが想いを当てはめられる構造です。
そしてなにより、この曲でもXGによるリスナーに対する想いが込められています。
Chisaはこの曲の歌詞について、下記の様に語っています。
長年心の中に秘めていた感情や、言えなかったこと、つまり、ずっと抱えていた静かな悲しみを、私たちは表面化させて、解き放ったんです。
でも、自分たちのことだけを歌にしたくはありませんでした。
誰かにとっては家族、誰かにとっては友人、恋人、ペット、あるいは何か大切なもの。
聴くことで、思い出や時間が蘇るような曲にしたかったんです。
だから、プロデューサーの助けもあって、私たちの心をこの曲に注ぎ込むことができました。
このコメントから、作詞クレジットにはないものの、XGのメンバーが楽曲の制作過程から深くかかわっていることが想像できます。
歌詞と和訳
[Chisa]
Scratching the surface
表面だけをなぞっていた
Latching these words inside
心の奥に、本音を閉じ込めたまま
It's more than just a purpose
それはただの目的以上のもの
I know you deserve it, yeah, I know
あなたにはそれを受ける資格があるって知ってる、そう、知ってる
Can't find the reason
理由がみつからない
Why all this blue inside
なぜこんなにも心がブルーなのか
Remembered like the movies
映画のように思い出す
Space between the memories, so wide, yeah
記憶の間の空間はとても広い、そう
[Hinata]
I know you been calling me lately, I've just been busy
最近電話してるのはわかってる、ただ忙しかっただけ
Knowing you'll always be by, mm
あなたがいつもそばにいてくれるってわかってる、うん
Wish I knew we were running out of time
私達には時間がないって気づけばよかった
[Juria]
Started in January, gone in a minute
1月に始まって、あっという間に終わった
Thought it was summer, Maybe, why is the wind blowing?
夏だと思ってたら、どうして、こんなにも風が冷たいの?
Not a day that goes by without you on my mind all the time
あなたのことを考えない日は一日たりともない
(All the time, all the time)
(ずっと、ずっと)
[Chisa]
Then came October, left in a hurry
そして10月が来て、急いで去った
The year is almost over, snow came down early
年ももうすぐ終わり、雪も早く降り始めた
Missing you ever more as I'm passing these four seasons by
四季が過ぎていくにつれて、君が恋しくなる
(Season by, season by)
(季節ごとに、季節ごとに)
[Juria]
Stuck in this moment
この瞬間に囚われている
I just need a minute, I'm fine
私にはほんの少しの時間が必要、大丈夫
If only for a second
たとえ一瞬でも
Hearing you will be perfect for the night
君の声を聞けば、今夜は完璧だろう
Caught in the middle
身動きが取れなくなって
Unravel this riddle, I'll try
絡まった気持ちを解こうとする
Still reading all your messages
今でも、君からのメッセージを全て読み返す
I'll never desert 'em, not I, no
捨てるなんて出来ない
[Hinata]
You must think I'm careless and jaded, life's just been crazy
私のこと冷たい人間だと思ってたよね、でも実は余裕が無かっただけ
Quick hi, hellos and goodbyes, mm
挨拶を交わすだけの関係、うん
Wish I knew we were running out of time
私達には時間がないって気づけばよかった
[Chisa]
Started in January, gone in a minute
1月に始まって、あっという間に終わった
Thought it was summer, Maybe, why is the wind blowing?
夏だと思ってたら、どうして、こんなにも風が冷たいの?
Not a day that goes by without you on my mind all the time
あなたのことを考えない日は一日たりともない
(All the time, all the time)
(ずっと、ずっと)
[Hinata]
Then came October, left in a hurry
そして10月が来て、急いで去った
The year is almost over, snow came down early
年ももうすぐ終わり、雪も早く降り始めた
Missing you ever more as I'm passing these four seasons by
四季が過ぎていくにつれて、君が恋しくなる
(Season by, season by)
(季節ごとに、季節ごとに)
[Chisa]
Can I speak honestly?
正直に話してもいい?
I don't know why I could never sleep
どうして眠れなかったのか自分でも分からない
I tried, But I couldn't figure it out
試したけど、わからなかった
I don't wanna lose you in a loop inside
同じことの繰り返しであなたを失いたくない
Call me a fool 'cause who am I to blame?
馬鹿だと言われてもいい、誰のせいでもないから
So please just stay
だからそのままでいて
[Juria]
Raindrops fall down all seasons somehow
ずっと雨が降り続いてる、季節を越えて
Can't help but think of you in the sound
音を聞くたびに、あなたのことを考えてしまう
Waiting for days to come around
その日が巡ってくるのを、ずっと待ってる
歌詞解説
歌詞全体としては、リリースが12月24日ということもあり、一年の季節の巡りに触れながら、過去の切なく愛おしい思い出に想いを馳せています。
ちょっとアース・ウィンド&ファイアーの"September"(1978)みたいです。
この曲の歌詞は、聴くたびに僕の中でイメージが変わるので、Verseごとの僕の解釈を書くのはやめました。
家族、友人、恋人に対して歌っているようでもあり、失った大切な人や思い出を歌っているようでもあります。
そして、3人からのリスナーに対する想いであるとも感じます。
歌詞全体の印象としては、メランコリックで愛おしい、とても美しい歌詞だと感じました。
この手の歌詞は難しいんです。
抽象化の粒度とベクトルを間違うとリスナーには伝わりません。
なんかそれっぽいことだけを言っている様な、雰囲気だけの薄っぺらいものになってしまいます。
この曲の歌詞は、パーソナルと拡がりが同居して、ちゃんとリスナーに開かれたナラティブになっていると思います。
抽象的だけど表面的な印象だけに終わらない奥深さがあり、制作者とプレイヤーのスピリットが伝わります。
参考
この曲もShotGunDandyさんが和訳解説をしてくれています。
彼の視点は素晴らしく、この歌詞を楽しむためのポイントを丁寧に説明してくれています。
みなさん、是非ご覧ください。
サウンドとプロダクション
プロデュースはJAKOPS、Chancellor。
作詞はJAKOPS、Chancellor、 Paulina Cerrilla、Paige Garabito 、SEUNGHOO。
作曲はJAKOPS、Chancellor、Paulina Cerrilla、Paige Garabito、Xansei、SEUNGHOOです。
曲調と質感
2本のアコースティックギターのみで歌われる、穏やかなトーンのバラードです。
愛おしさと切なさが柔らかく表現されています。
このアルバムでは新しい音楽スタイルが提示されてきましたが、この曲はノーギミックなアコースティックバラードです。
音数が少ない分音場が近く、親密な雰囲気に包まれています。
プロダクションはシンガー3人の歌の良さに焦点が当てられています。
上手さよりも良さ、といったイメージです。
エモくもディーバにもなれる3人ですし、もっとハーモニーを聴かせる事も出来たでしょうが、そうした作りにはなっていません。
穏やかに愛おしくやりすぎず、質感にこだわって繊細に歌われています。
激シブです。
Chisaはこの楽曲について、下記の様に語っています。
これはXGのボーカルパートによる初のオリジナル曲です。
これまで大切にしてきた想いを、アコースティックトラックに乗せて繊細に歌い上げています。
一緒にいても言葉にできなかった感情、離れて過ごした時間、そして徐々に深まっていった想いが、優しいギターと広がりを感じさせるサウンドの下から静かに浮かび上がってきます。
音符と音符の間の空間には、時を経ても色褪せることのない想いの痕跡が感じられます。
聴く人それぞれの思い出や瞬間を、そっと呼び起こしてくれるような楽曲です。
「音符と音符の間の空間には、時を経ても色褪せることのない想いの痕跡が感じられます。」というコメントを読んで、「あぁ確かに」と感じました。
この曲は行間が実に豊かです。
さらっと聴けるようで実に味わい深い良曲です。
個人的な感想
僕ははじめ、なんだかありきたりな曲のように聞こえ、あまりピンと来ませんでした。
「はいはい、フォーキーなバラードね」って感じです。
僕は、こういうフェミニンなトーンのバラードがあまり得意ではありません。
ところが、歌声やリリックに耳を傾けて何度も聴いているうちに、凄く心の中に染み入り、自分の中でとても大事な曲になっていきました。
歌詞は、個人的な想いが散りばめられていながら、リスナーに対し親密に開かれています。
リスナーが自身のナラティブを投影する余白があり、行間が豊かです。
歌声も同様です。
自分の想いだけをエモーショナルに表現するのではなく、リスナーの目線に合わせて寄り添ったトーンで歌われています。
いつの間か、「これは僕の歌だ」と思えるようになったのです。
XGの大きな特徴のひとつは、ステレオタイプなテンプレートを凄く高いレベルで提示できる点です。
これはX-POPの定義のひとつだと思います。
おまけ
"4 SEASONS"とは関係ありませんが、この曲のテーマがなんとはなしにRosalíaの"Memória"(2025)とイメージが被ります。
最近この美しいバラードの解説をしたので、頭にこびりついているのでしょう。
またロザリアは、XGの"TAPE #2"でJurinが"SAOKO"をビートジャックしていました。
それもあって連想してしまったのかもしれません。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
大変お疲れさまでした。
この『THE CORE』考察シリーズでは、アルバムを1曲ずつ深掘りしています。
続きはこちらです。
シリーズ全体はこちらから読めます。
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