【コピー店長の七つの知恵⑤】三方よしの流れをつくる
先日公開した本編
「1枚10円のコピー店長から学んだ『三方よしの経営学』」
では、街の小さなコピー店を50年以上営んできた店長から得た学びを「七つの知恵」として紹介しました。
こちらは本編の解説編として、本編でご紹介した「七つの知恵」を中小企業診断士の視点で深堀していくシリーズとなります。
今回は、その五つ目の知恵である
【七つの知恵⑤】三方よしの流れをつくる
について、5つのポイントをご紹介します。
本編をまだ読んでいない方は、先に読んでいただくと、より理解しやすくなると思います。
▼本編はこちら
【ポイント1】利益の一部を顧客へ還元する
店長は、学生たちに過去問資料を1枚10円で提供していました。
ある卒業試験のとき、店長は大量の資料を無料で渡してくれたそうです。
「今までずいぶん利用してくれたから」
そう言って、学生を助けたのです。
商売で得た利益を、必要な場面で顧客に還元する。
これは、単なる値引きではありません。
長い関係の中で生まれた信頼です。
売ったら終わり。
支払ったら終わり。
そういう関係ではなく、学生のこれまでの利用に対して感謝する。
そして、利益の一部を還元する。
店長の商売には、そんな温かさがありました。
利益は、自分だけのものではない。
利益の一部を顧客へ還元することも店長の商売の一部でした。
【ポイント2】学生の試験準備を支える
医科大学の学生にとって、試験は大きな壁でした。
覚える量が多い。
科目も多い。
過去問資料も膨大になる。
試験前には、必要な資料をそろえるだけでも大変です。
店長のコピー店は、そんな学生たちを支えていました。
過去問資料を預かる。
探せるように整理する。
必要な資料をコピーする。
試験前に間に合うように用意する。
店は、単にコピーを売っていたのではありません。
学生が試験を乗り越えるための準備を支えていたのです。
学生にとって、その店は便利な場所である以上に、困ったときに頼れる場所でした。
買い手よしとは、安く買えることだけではありません。
顧客の困りごとをしっかりと支えることが大切なのだと思います。
【ポイント3】卒業生が感謝を伝えに戻ってくる
店長の店には、卒業した学生が訪ねてくることがありました。
医師になった卒業生が、店長に会いに来る。
「おかげで助かりました」
そう伝えるために、店を訪れる。
商売として見れば、学生が卒業した時点で取引は終わっているかもしれません。
でも、関係は終わっていなかったのです。
試験前に助けてもらったこと。
必要な資料を提供してくれたこと。
困ったときに支えてもらったこと。
そうした記憶は、卒業後も顧客の中に残ります。
卒業生が店を訪ねてくる。
それは、店長の商売が、学生たちの人生の一部にしっかりと残っていた証だと思います。
【ポイント4】学生が医師になり、地域医療に貢献する
店長が支えていたのは、目の前の学生だけではありませんでした。
医科大学の学生たちは、やがて医師になります。
試験を乗り越え、卒業し、医療の現場に出ていく。
そして、多くの患者さんを診る。
地域医療を支える。
誰かの命と健康に向き合う。
店長のコピー店は、直接医療をしていたわけではありません。
でも、医師を目指す学生たちの学びを支えていました。
その医師たちが、今度は地域の医療を支えていく。
つまり、目の前の顧客を支えることが、時間をかけて社会の役に立つ。
ここに、店長の商売の大きな意味がありました。
小さなコピー店の仕事が、時間をかけて地域医療の充実につながっていく。
これが、店長の商売にあった「世間よし」だったのだと思います。
【ポイント5】近江商人の三方よしを、現場で実践する
近江商人の心得に、「三方よし」という考え方があります。
売り手よし。
買い手よし。
世間よし。
商売は、売り手だけが儲かればよいのではない。
買い手にも喜ばれ、世間の役にも立ってこそ、長く続く。
そういう考え方です。
店長のコピー店には、この三方よしがありました。
店長の商売は、学生の困りごとに真摯に対応することで続いていく。
学生は、必要な過去問資料を安く、早く、確実に手に入れられる。
そして、その学生たちは医師になり、地域医療を支えていく。
売り手よし。
買い手よし。
世間よし。
それは、言葉だけで実現するものではありませんでした。
1枚10円のコピー、過去問資料の整理、試験前の支援。
その一つひとつの積み重ねが、三方よしにつながっていたのです。
近江商人の知恵は、街の小さなコピー店の現場にも息づいていました。
まとめ
【七つの知恵⑤】三方よしの流れをつくる
この知恵から学べることは、以下の通りです。
利益を、自分だけのものと考えない。
利益の一部を顧客へ還元する。
顧客が本当に困っている場面を支える。
目の前の顧客を支えることが、社会への貢献につながる。
店長は、三方よしという言葉を前面に掲げていたわけではありません。
しかし、学生に必要とされ、学生を支え、その学生たちが医師として社会に出ていく。
その流れが、自然と三方よしにつながっていました。
売り手だけが得をするのではない。
買い手だけが得をするのでもない。
目の前の商売が、時間をかけて社会の役に立っていく。
小さなコピー店の中に、近江商人にも通じる経営の知恵がありました。
さいごに
次回は、「七つの知恵」の六つ目。
【七つの知恵⑥】利益を未来へ投資する
について紹介します。
店長は、コピー店が繁盛しても、浮かれることはありませんでした。
商売で得た利益を使い切るのではなく、将来のために備えていきました。
自営業者にとって、未来の不安は小さくありません。
商売の環境が変わるかもしれない。
いつまでも同じように働けるとは限らない。
だからこそ店長は、目の前の利益を、将来の安心につながる形に変えていきました。
次回は、繁盛した商売から得た利益を、どのように未来へと投資していったのかを紹介します。
▼【コピー店長の七つの知恵⑥】はこちら
(完)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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本編では、コピー店長から学んだ「1枚10円・三方よしの経営学」を物語として紹介しています。是非、あわせて、お読みください。
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