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【コピー店長の七つの知恵⑥】利益を未来へ投資する

先日公開した本編
「1枚10円のコピー店長から学んだ『三方よしの経営学』」
では、街の小さなコピー店を50年以上営んできた店長から得た学びを「七つの知恵」として紹介しました。

こちらは本編の解説編として、本編でご紹介した「七つの知恵」を中小企業診断士の視点で深堀していくシリーズとなります。

今回は、その六つ目の知恵である
【七つの知恵⑥】利益を未来へ投資する
について、5つのポイントをご紹介します。

本編をまだ読んでいない方は、先に読んでいただくと、より理解しやすくなると思います。
▼本編はこちら


【ポイント1】店舗を自ら保有する

店長の商売は、父から譲り受けた自宅兼店舗から始まりました。
電気工事店から家電販売を扱う店へと発展させ、その後、コピー店へと変わっていきました。
そして、店長のコピー店は、学生たちに必要な場所になっていきました。
試験前には多くの学生が訪れる。
過去問資料のコピー依頼が入る。
店は繁盛する。
その結果、店は非常に混雑し、近所からは迷惑駐車の苦情が出るようになりました。
店長は、この問題を解決するために、現在の店舗を低学年用とし、新たに店舗を1つ増やして、高学年用としました。
このとき、店長は、新店舗を借りるだけではなく、購入するという選択をしました。
商売の場所を、自ら保有する。
これは、単なる不動産購入の話ではありません。
店長にとって、店舗を持つことは、商売を続ける土台を持つことでもありました。
賃貸であれば、賃料が上がり、商売に大きく影響が出る可能性があります。
しかし、自ら保有すれば、ある程度自分でコントロールできるのです。
目の前の商売で得た利益を、次の商売の土台に変えていく。
そこに、店長の「利益を未来へ投資する」という考え方が表れていたのだと思います。

【ポイント2】繁盛している時こそ、先を見る

店長のコピー店は、繁盛を続けました。
過去問資料の仕組みが学生たちに広がっていく。
試験前には注文が集まる。
店は、医科大学の学生たちにとって欠かせない場所になっていく。
普通なら、そこで安心してしまうかもしれません。
商売がうまくいっている。
学生たちに必要とされている。
売上も利益も出ている。
それは、とてもありがたいことです。
でも店長は、目の前の繁盛だけを見ていたわけではありませんでした。
繁盛しているからといって、今の状態に甘えない。
必要とされているからこそ、次の土台を考える。
店長は、繁盛している時から、先のことを考えていました。
得た利益を、どのような形で未来に残すか。
うまくいっている時こそ、次を考える。
そこに、長く商売を続けてきた店長の冷静さがあったのだと思います。

【ポイント3】商売を続ける責任を考える

自分で商売を続けるということは、自由である一方で、大きな責任もあります。
顧客のために商売を続けること。
家族の暮らしを守ること。
店を支えてくれる取引先のことを考えること。
年齢を重ねた後の生活も見据えること。
店長は、その責任から目をそらしていませんでした。
店を続けるには、修理や設備の維持も必要です。
新しい店舗を出すには、まとまった資金も必要です。
家族の暮らしを守るには、将来への備えも必要です。
明日も店を開ける。
来年も必要とされる。
年齢を重ねても、自分と家族の暮らしを守る。
必要なときに、次の一手を打てるようにしておく。
だから店長は、コピー店で得た利益を、使い切ることはしませんでした。
将来の安心のために、蓄えていったのです。
利益を残すことは、単なる貯金ではありません。
顧客に応え続けるための備えであり、家族を守るための備えであり、次の商売の土台を作るための準備でもありました。
店長は、利益を未来へ投資する前に、まず未来へ投資できるだけの余力を積み上げていきました。
そこに、商売を長く続ける人の責任感がありました。

【ポイント4】従業員を雇用して多店舗化を図る

店長は、その後、他の鉄道沿線の主要駅の近くに数店舗のコピー店を開業しました。
店舗の土地や建物は自ら購入し、従業員を雇い、店を任せました。
店舗は、借りるのではなく、購入したのです。
そのとき、従業員には、このように伝え、独立を支援しました。
「5年以内の独立を目指そう。それまでに店舗運営のノウハウはきっちりと教える。その期間に獲得した顧客を、独立後も、君の顧客として引き継ぎやすいように、この店舗をそのまま利用すればいい。そして、賃料だけ支払ってくれればいい」
 店長は従業員とこうした条件で合意したうえで、自分の知っている技術や商売のやり方を教え、店舗を使わせ、コピー機はそのまま無料で貸し出し、背中を押したのです。
店長は、利益を店舗や設備だけでなく、人の成長にも投資したのです。
多店舗化とは、単に店を増やすことではなく、人に任せ、将来、商売を引き継げる形を作ろうとする挑戦でもあったのです。

【ポイント5】小さな商売を、未来につなげる

店長は、コピー店で得た利益を使い切ることはしませんでした。
商売で得た利益を、次の商売の土台に変えていく。
店舗を自ら保有する。
従業員を雇い、自ら保有する店舗を増やす。
その積み重ねによって、店長は長い年月を経て、複数の駅近店舗のオーナーになりました。
ただし、すべてが思い通りに進んだわけではありません。
従業員に店舗を任せ、独立を支援しようとしました。
しかし、従業員に任せたコピー店はうまくいかず、その従業員は店を離れていきました。
でも、店長が自ら保有していた店舗は残りました。
そして、店長は、そこに別のテナントを誘致することができました。
これは、派手な成功物語ではありません。
目の前の商売で得た利益を、未来に残る土台へと変えていたからこそ、想定通りにいかなかった後でも、次の選択肢が残ったのです。
商売は、今日だけ成り立てばよいわけではありません。
明日も続ける。
来年も続ける。
年齢を重ねても、暮らしを守る。
家族の安心も考える。
そのためには、今の利益を未来につながる形に変えていく必要があります。
小さな商売で積み上げた利益を、未来へ投資する。
店長は、1枚10円のコピー店で、それを静かに実践していたのです。

まとめ

【七つの知恵⑥】利益を未来へ投資する
この知恵から学べることは、以下の通りです。
繁盛している時こそ、先を見る。
商売を続ける責任を考える。
利益を使い切らず、余力として蓄える。
小さな商売で積み上げた利益を、未来へ投資する。
店長は、コピー店が繁盛しても、目の前の売上や利益だけを見ていたわけではありません。
学生たちに必要とされる店を作りながら、その商売を長く続けるために、将来のことも考えていました。
利益は、使えばその場で消えていきます。
しかし、使い方を考えれば、未来の選択肢になります。
店長は、コピー店で得た利益を蓄えて、不動産という形に変え、商売と暮らしを支える土台を作っていきました。
商売を続ける。
家族の暮らしを守る。
年齢を重ねた後にも備える。
将来の変化に対応できる余力を持つ。
そのための、現実的で誠実な経営だったのだと思います。
小さなコピー店の中に、利益を未来へ投資する経営の知恵がありました。

さいごに

次回は、「七つの知恵」の七つ目。
【七つの知恵⑦】最後は、覚悟である
店長の商売には、苦労もありました。
長く商売をしていれば、理不尽な出来事もあります。
人を育てようとしても、思うようにいかないこともあります。
やり方を教えることはできても、最後まで商売を回し切る覚悟までは教えきれないこともあります。
それでも、店長は商売を続けてきました。
顧客に向き合う。
不便を仕組みに変える。
低価格を守る。
将来に備える。
その一つひとつを、最後までやり切る力。
次回は、店長の言葉から見えてきた、商売を続けるうえでの「覚悟」について紹介します。
▼【コピー店長の七つの知恵⑦】はこちら

(完)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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本編では、コピー店長から学んだ「1枚10円・三方よしの経営学」を物語として紹介しています。是非、あわせて、お読みください。
▼本編はこちら

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