【コピー店長の七つの知恵⑦】最後は、覚悟である
先日公開した本編
「1枚10円のコピー店長から学んだ『三方よしの経営学』」
では、街の小さなコピー店を50年以上営んできた店長から得た学びを「七つの知恵」として紹介しました。
こちらは本編の解説編として、本編でご紹介した「七つの知恵」を中小企業診断士の視点で深堀していくシリーズとなります。
今回は、その七つ目の知恵である
【七つの知恵⑦】最後は、覚悟である
について、5つのポイントをご紹介します。
本編をまだ読んでいない方は、先に読んでいただくと、より理解しやすくなると思います。
▼本編はこちら
【ポイント1】理不尽も、商売の一部である
長く商売をしていると、良いことばかりではありません。
店長も、苦い経験をしていました。
あるとき、チラシ作成の仕事を引き受けたそうです。
手間をかけて作った。
相手の要望に応えた。
でも、代金は支払われなかった。
普通なら、怒りや悔しさが残る話です。
店長は、その経験を振り返って、こう語っていました。
「長く商売をしていると、いろんな人間を見ることになるのです」
商売は、きれいごとだけでは続きません。
信頼できる人もいる。
そうでない人もいる。
報われる仕事もある。
報われない仕事もある。
それでも、商売を続けていく。
理不尽も含めて受け止める強さが、長く続く商売には必要なのだと思います。
【ポイント2】やり方は教えられても、覚悟は教えきれない
店長は、従業員の独立を支援したこともありました。
仕事のやり方を教える。
店舗を使わせる。
コピー機も使わせる。
顧客も引き継ぐ。
できる限りの支援をしました。
それでも、全員がうまくいったわけではありませんでした。
店長は、こう語っていました。
「やり方は教えられます。でも、最後まで商売を回し切る覚悟は、教えきれないところがあるのです」
ノウハウは教えられる。
手順も教えられる。
仕組みも渡せる。
でも、それを毎日続けるかどうかは、本人の覚悟にかかっています。
商売は、知っているだけでは回りません。
やり切る人だけが、続けられるのだと思います。
【ポイント3】成功させてあげられなかった悔しさ
従業員の独立支援について話すとき、店長の表情は少し曇っていました。
自分のやり方が間違っていた。
そういう悔しさではなかったように思います。
むしろ、支援した相手を成功に導けなかったことへの悔しさでした。
やり方は教えた。
場所も用意した。
機械も使わせた。
顧客も引き継いだ。
それでも、商売を続けることは簡単ではありませんでした。
そこには、人を育てることの難しさがありました。
教える側がどれだけ本気でも、受け取る側が最後まで回し切れなければ、商売は続きません。
店長は、商売の厳しさだけでなく、人を育てる難しさも知っていました。
だからこそ、その言葉には重みがありました。
【ポイント4】マニュアルの外側に、経営の最後の差がある
店長の経営には、学べることがたくさんあります。
顧客の困りごとを見る。
不便を仕組みで解決する。
混雑を流れで解決する。
低価格を構造で守る。
利益を未来へ投資する。
どれも、経営学の言葉で説明できます。
でも、最後は理論だけでは足りません。
1枚10円を守る。
資料を整理し続ける。
コピー機を直す。
学生を待たせない。
困っている顧客に向き合う。
そうした一つひとつを、現場でやり切る必要があります。
マニュアルに書けることには限界があります。
経営の最後の差は、知っているかどうかではなく、やり続けられるかどうかに出るのだと思います。
店長の強さは、そこにありました。
【ポイント5】あなたの仕事にも「1枚10円・三方よしの経営学」はある
1枚10円のコピー店には、七つの知恵がありました。
顧客の困りごとに真摯に向き合う。
不便を仕組みで解決する。
混雑を流れで解消する。
低価格を構造で守る。
三方よしの流れをつくる。
利益を未来へ投資する。
最後は、覚悟である。
どれも、大企業だけの話ではありません。
街の小さな店でも実践できる。
個人の仕事にも活かせる。
日々の現場にも置き換えられる。
目の前の顧客は、何に困っているのか。
同じ不便が繰り返されていないか。
自分の仕事は、誰の役に立っているのか。
最後までやり切る覚悟はあるか。
コピー店長の七つの知恵「1枚10円・三方よしの経営学」は、特別な場所にあるのではありません。
私たち一人ひとりの日常の仕事の中に隠れているのです。
そして、顧客の不便を見ようとする、私たち一人ひとりの視線の中にあるのです。
まとめ
【七つの知恵⑦】最後は、覚悟である
この知恵から学べることは、以下の通りです。
理不尽も含めて、商売を続けていく。
やり方を知ることと、やり切ることは違う。
人を育てることには、教える側の悔しさも伴う。
マニュアルの外側に、現場でやり続ける力がある。
コピー店長の「1枚10円・三方よしの経営学」は、私たち一人ひとりの仕事にも活かせる。
店長の商売には、温かさと強さがありました。
学生の困りごとに向き合う。
過去問資料を預かる。
1枚10円を守る。
試験前の学生を支える。
卒業後の医師たちから感謝される。
しかし、その裏側には、きれいごとだけでは済まない現実もありました。
報われない仕事もある。
理不尽な出来事も起きる。
人を育てようとしても、思うようにいかないこともある。
それでも、店長は商売を続けてきました。
やり方だけでは、商売は続かない。
知識だけでも、仕組みだけでも、商売は回り切らない。
最後は、覚悟である。
店長の言葉と生き様から、そのことを強く感じました。
小さなコピー店の中に、商売を続ける人の覚悟がありました。
そして、その覚悟こそが、50年以上続く商売を支えていたのだと思います。
さいごに
今回で、「コピー店長の七つの知恵」シリーズは最後になります。
あらためて、七つの知恵を振り返ると、以下の通りです。
【七つの知恵①】顧客の困りごとに真摯に向き合う
【七つの知恵②】不便を仕組みで解決する
【七つの知恵③】混雑を流れで解消する
【七つの知恵④】低価格を構造で守る
【七つの知恵⑤】三方よしの流れをつくる
【七つの知恵⑥】利益を未来へ投資する
【七つの知恵⑦】最後は、覚悟である
最初は、父の思い出をたどって訪れた小さなコピー店でした。
しかし、店長の話を聞くうちに、そこには単なる懐かしい商売の話ではなく、時代が移り変わっても決して色あせることのない「経営の本質」があることに気づきました。
この店長が長い年月をかけて積み上げてきた経営の知恵は、自分の店で、自分の手で、自分の人生を賭けて検証してきた、生身の経営そのものでした。
それは、日々の商売と数多くの試練の中で磨き上げられてきた「街場の経営学」だったのです。
私は、店長から学んだこの七つの知恵を「1枚10円・三方よしの経営学」と名付けました。
店長は80歳になった今も、日曜・祝日以外は毎日、店に立ち続けています。
家賃収入があるのなら、もう店に立たなくても暮らしていけるのではないか。
そう思い、なぜ今も仕事を続けているのかと尋ねると、店長は微笑みながら、こう答えてくれました。
「自分が辞めると、困る人がいるんですよ」
健康と体力が続く限り、少なくとも数年間は店に立ち続けるつもりだと、店長は話してくれました。
店長の視線は、50年前にコピー店に業態変更した当時と変わらず、今もまっすぐに顧客の方を向いているのです。
店長の仕事観には尊さを感じました。
誠心誠意、顧客に寄り添いながら、自分の商売、自分の人生を全うしていく。
そのどこまでもひたむきな生き様に、私は深く胸を打たれ、圧倒されました。
自分の仕事は、一体、誰の役に立っているのだろう。
誰の困りごとを解決しているのだろう。
どんな価値を生み出しているのだろう。
そう考えると、今の仕事の中にも、まだ見落としている誰かの困りごとがあるのではないか。
まだ解決できていない不便があるのではないか。
まだ変えられる仕事の流れがあるのではないか。
そして何よりも、どれくらいの覚悟を持って、日々の仕事に向き合っているのだろうか。
コピー店長の「1枚10円・三方よしの経営学」は、私たち一人ひとりに、これらの質問を静かに問いかけているように感じました。
(完)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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本編では、コピー店長から学んだ「1枚10円・三方よしの経営学」を物語として紹介しています。是非、あわせて、お読みください。
▼本編はこちら
コピー店長の七つの知恵シリーズ(①~⑦)を、①から読み返したい方は、以下にお進みください。
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