【コピー店長の七つの知恵④】低価格をコスト構造で守る
先日公開した本編
「1枚10円のコピー店長から学んだ『三方よしの経営学』」
では、街の小さなコピー店を50年以上営んできた店長から得た学びを「七つの知恵」として紹介しました。
こちらは本編の解説編として、本編でご紹介した「七つの知恵」を中小企業診断士の視点で深堀していくシリーズとなります。
今回は、その四つ目の知恵である
【七つの知恵④】低価格をコスト構造で守る
について、5つのポイントをご紹介します。
本編をまだ読んでいない方は、先に読んでいただくと、より理解しやすくなると思います。
▼本編はこちら
【ポイント1】1枚10円にこだわり続ける
店長のコピー店は、1枚10円という低価格を続けていました。
学生にとって、これは大きな意味がありました。
過去問資料は量が多い。
試験前には、何枚もコピーする。
必要な科目が増えれば、枚数も増える。
たった数円の違いでも、積み重なれば大きな負担になります。
必要な資料を、必要なときに、できる限り少ない負担で手に入れられる。
その安心感が、学生たちを支えていました。
誰を支えるための価格なのか。
そこに、店長の商売の姿勢が表れていました。
【ポイント2】安さの裏側にあるコストを把握する
1枚10円は、学生にとってありがたい価格でした。
でも、店にとっては簡単な価格ではありません。
紙代がかかる。
トナー代がかかる。
コピー機の維持費がかかる。
故障すれば、修理代もかかる。
安く売るほど、利益の余地は小さくなります。
だから、低価格は善意だけでは続きません。
「学生のために安くしたい」
その気持ちは大切です。
でも、気持ちだけで価格を下げると、店の経営が苦しくなります。
低価格を続けるには、どこでコストが発生しているのかを見なければなりません。
店長は、安さの裏側にある現実から目をそらしませんでした。
安くするなら、安く続けるための土台が必要なのです。
【ポイント3】修理業者の作業を見て、修理を覚える
コピー機は、使えば使うほど故障します。
特に試験前は、大量のコピーが集中します。
機械への負担も大きくなります。
普通なら、故障すれば修理業者を呼びます。
でも、それでは修理代がかかる。
直るまで時間もかかる。
店長は、修理業者が来るたびに、その作業を横で見ていました。
どこを確認するのか。
どの部品を交換するのか。
どんな不具合が起きやすいのか。
少しずつ覚えていったのです。
やがて店長は、自分で対応できる修理を増やしていきました。
これは、単なる器用さの話ではありません。
コストが発生する現場に、自ら踏み込んだということです。
安さは、机の上の計算だけで守られていたのではありません。
現場で守られていたのです。
【ポイント4】コピー機を止めないことも顧客価値である
コピー機が止まると、困るのは店だけではありません。
試験前の学生も困ります。
必要な資料がコピーできない。
受け取りが遅れる。
勉強の予定が崩れる。
コピー機の停止時間は、そのまま顧客の不便になります。
店長が修理を覚えた意味は、修理代を減らすことだけではありませんでした。
すぐ直せる。
すぐ再開できる。
学生を待たせる時間を減らせる。
ここにも大きな価値がありました。
安いけれど、すぐ止まる。
安いけれど、いつ受け取れるか分からない。
それでは、安心して利用できません。
店長は、1枚10円という価格だけでなく、必要なときに使える状態も守っていました。
低価格と安定運営。
その両方があったから、学生たちは店を頼り続けたのです。
【ポイント5】競合店が去った後も、1枚10円を維持する
周辺には、競合店も現れました。
過去問資料を扱う店。
コピーサービスを提供する店。
別の形で学生を取り込もうとする店。
それでも、学生たちは店長の店を選び続けました。
理由は、価格だけではありません。
資料がそろっている。
探しやすい。
注文しやすい。
早い。
安い。
相談できる。
信頼できる。
これらが組み合わさっていたからです。
やがて競合店は撤退していきました。
競合店不在の状態で、店長は値上げをしようと思えばできましたが、その後も、1枚10円を維持しました。
そして、店長のコピー店は繁盛を続けました。
まとめ
【七つの知恵④】低価格を構造で守る
この知恵から学べることは、以下の通りです。
低価格は、単なる安売りではない。
顧客の負担を軽くする価格には、商売として続けるための土台が必要である。
安さの裏側にあるコストから目をそらさない。
コストが発生する現場に踏み込み、自ら改善する。
低価格だけでなく、安定して提供できる状態まで顧客価値として考える。
競合店が去った後も低価格を構造で守り続ける。
店長は、1枚10円という低価格を守り続けました。
しかし、それは単なる善意による安売りではありませんでした。
紙代、トナー代、コピー機の維持費、修理代、機械の停止時間。
低価格の裏側には、さまざまなコストがありました。
店長は、その現実から目をそらしませんでした。
修理業者の作業を見て、自分で直せる範囲を広げる。
コピー機の停止時間を短くする。
学生を待たせる時間を減らす。
低価格でも利益が残るように、現場からコスト構造を変えていく。
だからこそ、1枚10円は続いたのです。
店長は、顧客のための低価格を、経営として成り立つ構造で支えていました。
小さなコピー店の中に、低価格をコスト構造で守る経営の知恵がありました。
さいごに
次回は、「七つの知恵」の五つ目。
【七つの知恵⑤】三方よしの流れをつくる
について紹介します。
1枚10円で学生たちを支える。
学生たちは試験を乗り越え、やがて医師になる。
その医師たちが、今度は地域の医療を支えていく。
店長の商売は、「売り手よし」「買い手よし」だけで終わりませんでした。
長い年月をかけて、地域や社会を支える「世間よし」へとつながっていったのです。
次回は、店長の商売がどのように「三方よし」の流れをつくっていったのかを紹介します。
▼【コピー店長の七つの知恵⑤】はこちら
(完)
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本編では、コピー店長から学んだ「1枚10円・三方よしの経営学」を物語として紹介しています。是非、あわせて、お読みください。
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