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半年かけても現状把握ができなかった。AIなら数日でできた|製造業DXの業務フロー可視化|DX導入の落とし穴 第3回

半年かけても終わらなかった「現状把握」が、AIを使えば数日レベルまで省力化できます。

かつて私が現状把握だけで半年を溶かした失敗と、その工程を「今のAIで試した結果」を、できることとできないことを正直に書きます。現状把握の工程に苦しむ情シス・業務改善・DX推進担当の方に向けた記事です。

※本記事は「DX導入の落とし穴」シリーズ第3回です。第1回(4つの落とし穴)/第2回(必要な体制)はこちら。


現状把握という、想像以上に重い工程

システム導入の前段階で、必ずやる作業があります。職務一覧(誰が何を担当するか)、業務フロー(どう流れるか)、画面一覧(現行のどの画面を使うか)、DFD(データフロー図)。新しい仕組みを考える前に、まず今がどうなっているかを正確に掴むためのものです。

ところが、ここがほぼ確実に詰まります。私が関わったプロジェクトでも、まさにここで時間が消えました。

Excelで職務一覧を作り、図形機能で業務フローを描き、5W1Hで整理し、DFDも書く。現状把握のためだけに、半年もの工数が飛んでいきました。


私が現場でぶつかった、現状把握の壁

正直に書きます。私の経験では、現状把握は期待した品質では完成しませんでした。理由はいくつもありました。

業務担当者が、フロー図を描くこと自体に慣れていない。Excelの使い方も人によってバラバラで、後から読めない図ができる。普段の作業を「どこから情報が来て、何をして、次にどこへ渡すのか」と整理するのが、想像以上に難しい。

特に深刻だったのが、inとoutを書けないことでした。「依頼してくるのは誰? 何を受け取る? 処理した後、誰に何を渡す?」——この問いに明確に答えられる人が、驚くほど少ない。普段、無意識にやっているからです。

結果、精緻な現状把握ができないまま、次のステップ(あるべき姿の設計)に進む。土台が曖昧なまま家を建てるようなもので、後の工程で必ず破綻します。

AIなら、現状把握はこう変わる

当時の私たちにはAIという選択肢がほぼありませんでした。でも今は違います。AIを使えば、現状把握は2つのステージに分けて、大幅に省力化できます。

ステージ1:素材を集める(担当者ごと)——ヒアリングを録音してAIで文字起こし。AIに in/out を質問させながら、業務を引き出す。

ステージ2:素材を統合して可視化する(全体として)——複数担当者の記述をAIに突合させ、矛盾・グレーゾーン・抜けを検出。整理された記述をフロー図に変換し、同じ素材からDFDも生成する。

担当者は「話すだけ」。文字起こし、質問、整理、突合、図化までをAIが担います。

ただし「丸投げすれば全部終わる」ではありません。どこまでがAIで、どこからが人の仕事かを、実際に検証して確かめました。


検証してみた:架空のチームで試した結果

架空の中小製造業を想定し、4人(購買・生産管理・受注売上・品質保証)の業務を「話してもらった」想定でAIに渡しました。

ステージ1:AIが担当者に追加質問——購買担当の業務記述を渡すと、「営業からのメールは定型フォーマットか自由文か」「部品リストは図面を見るのか発注履歴を見るのか」「在庫確認はシステムか物理在庫か記憶か」「検品担当に“渡す”とは物理か登録か」といった質問が返ってきました。

本人が無意識にやっている部分に切り込む質問です。人間のコンサルなら気づける問いを、AIが先に出してくれる。私の感触では、8〜9割の精度でこうした質問を生成できます。

ステージ2:4人分の業務記述を突合——ここが今回いちばん伝えたい部分です。「矛盾点・グレーゾーン・抜けを検出して」と依頼すると、こう返ってきました。

⚠️ 受注情報の流れが3人でバラバラ(メール/受注一覧/システム登録が並行運用の疑い)

⚠️ 検品NG時の情報伝達が不明(誰がNGを生産管理に伝えるか未定義)

⚠️ 検査結果が関係部署に共有されていない(受注売上が見ていない)

⚠️ 納期遅延時の責任が曖昧(「営業がやっていると思います」という伝聞)

人間が4人分の文章を読み比べても、ここまで体系的には拾えません。特に「〜と思います」「〜らしい」という伝聞・推測の表現を拾って「責任の曖昧さ」として可視化するのは強力です。突合の精度は9割以上。現状のAIが最も得意とする作業の一つです。

フロー図とDFDの生成——整理された記述から、AIにフロー図(Mermaid記法)とDFDを生成させました。「業務をフロー図にして」で構造が返り、そのまま描画されます。

DFDも同じ素材から、視点を「データの流れ」に変えて数分で出ます。構造の抽出は9割以上。ただし「分岐の条件」「例外パターン」「レイアウトの好み」は人が補強する必要があります。


AIにできること、人がやるべきこと

「じゃあ全部AIに任せればいい」と思われるかもしれません。でも、それは違います。AIは下書きを作る道具であり、最終的な仕上げは、必ず人がやる必要があります。

AIが得意なのは、文字起こし・追加質問・突合・図の下書きといった、時間のかかる素材づくりです。人がやるべきは、分岐条件や例外の補強、そして何より、担当者間の合意形成と最終判断です。

つまりAIは時間を圧縮する道具であり、判断と合意形成は人の仕事です。この線引きを意識しないと、「AIに任せたら全部解決する」と期待して、また失敗します。

ひとつ正直に。フロー図やDFDの生成では、日本語の文字化けやレイアウト崩れが起きることもあります。「AIが8〜9割の下書きを作り、人が1〜2割を仕上げる」——これがリアルな運用イメージです。「手でやった方が早かった」にはなりませんが、「完全自動」でもないことは、伝えておきたいです。


最後に

第1回で「業務フローのあるべき姿が描けていない」と書きました。あれは、当時の私たちにAIという選択肢がなかったことも、大きな理由でした。でも今は違います。

担当者は話すだけで業務記述ができ、AIが矛盾やグレーゾーンを先に見つけ、フロー図やDFDの下書きが数分で出る。これだけで、現状把握の時間は劇的に短くなります。

そして、短くなった分を、本当に大事な「あるべき姿の設計」と「担当者間の合意形成」に回せる。これが、AIを使う本当の意味だと思います。

参考になったら、スキ・フォローをお願いします。DX推進の現場目線で、これからも書いていきます。

このシリーズの前の記事は、こちらです。

▶ 第1回:DX失敗の真因は「現場の抵抗」ではない(4つの落とし穴)


▶ 第2回:そのDXプロジェクト、専任は何人いますか?(理想9人・最低4人)


「業務フローの整理が進まない」「今回のAIでのフロー図の書き方が知りたい」という悩みがあれば、コメントで教えてください。

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