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DX失敗の真因は「現場の抵抗」ではない|製造業で見た4つの落とし穴|DX導入の落とし穴 第1回

DX・基幹システム導入が空回りする真因は「現場の抵抗」ではなく、体制とリソースの不足です。

製造業の現場に12年、その前はプログラマーとして6年いた立場から、私が見てきた4つの落とし穴と、その根っこのつながりを整理します。DX推進担当・情報システム部門・業務改善担当の方に向けた記事です。



なぜ「現場が抵抗するから失敗する」で片付けてはいけないのか

導入したのに使われない。期待した効果が出ない。現場から「前のやり方のほうが早い」という声が上がる。情報システム部門も業務改善担当も頭を抱える——そんな話を、私は何度も見聞きしてきました。

多くの場合「現場が抵抗しているから」で片付けられます。でも、本当の原因はもっと手前にあります。

私は製造管理担当として基幹システムの導入・見直しに関わり、当事者というより「見てきた」立場が長かった。だからこそ、少し引いた目線で「なぜここで詰まるのか」が見えてきました。以下の4つは、批判ではなく、同じ現場でもがく方への共有です。


落とし穴①:いつの間にか「システムを入れること」が目的になっている

本来、システム導入は業務効率化のための手段のはずです。ところがプロジェクトが進むにつれ、目的と手段が静かに入れ替わります。

議題が「業務をどう良くするか」から「システムをどう使いこなすか」に変わる。ベンダーとの会議で、業務の話より機能の話が増える。「導入スケジュール」が最重要指標になり、「導入が完了した」ことを成果として報告している。

どれも単体では悪くありません。でも、気がつくと「業務を良くする」という本来の目的が、議論から消えているのです。

「で、結局この業務、楽になったんでしたっけ?」——プロジェクトが進むほど、この問いは発しにくくなります。だからこそ節目ごとに、誰かが立ち止まって「今、目的と手段が入れ替わっていないか」を確認する必要があります。


落とし穴②:業務分担が曖昧なまま、システムを入れようとしている

①の根を辿ると、これに行き着きます。「この業務、本来どの部署がやるべきか」が議論されず、なんとなく誰かがやっている。この状態でシステムを入れると、必ず詰まります。

システムは、誰の業務をどう変えるかを前提に設計されるからです。担当が曖昧だと、画面設計が決まらない、入力・承認の担当が毎回揉める、「これ、うちの仕事じゃない」が導入後に噴出する。

本来はシステム導入の手前で、どの部署が担うべきか・今の担当は適切か・役割分担は業務の流れに沿っているかを、関係部署を巻き込んで決める必要があります。

地味でしんどい作業です。でも、ここを飛ばすと、システムは「曖昧さを固定化する装置」になってしまうのです。


落とし穴③:業務フローの「あるべき姿」が描けていない

②のさらに奥にあるのが、業務フローそのものが「あるべき姿」として描かれていないという問題です。長年の業務フローは「そのときどきの判断」の積み重ねでできています。一つひとつに理由はあっても、全体として最適かと問われると、答えに詰まる。

この状態でシステムを入れると、いびつなフローがいびつなまま自動化されるだけです。速くはなっても、それは部分最適の高速化であって、全体最適ではありません。

正直に書きます。私自身、過去の業務でこれをやり切れませんでした。日々の業務を回しながら、ここまで整理する時間を割くのは簡単ではありません。

だからこそ、システム導入というタイミングこそ、この整理をやる絶好の機会なのです。逆に、このタイミングを逃すと、次のチャンスはなかなか巡ってきません。


落とし穴④:体制とリソースが、最初から確保されていない【真の原因】

ここが、いちばん大事な話です。①〜③がなぜ多くの現場で起きるのか。それは、これらをちゃんと議論する体制と時間が、そもそも確保されていないからです。

現場の景色は、こうではないでしょうか。担当者は通常業務を抱えたまま片手間で兼務し、関係部署も本業で手一杯。議論が深まらず、期限だけが迫り、「とりあえずベンダーに任せる」で進めてしまう。そして①〜③に、次々ハマっていきます。

つまり①〜③は、結果として現れる症状であって、真の原因は④のリソース不足です。目的を見失うのも、分担が決まらないのも、担当者の能力の問題ではありません。やり切る時間と体制が、最初から与えられていなかったのです。

だから、最初に手をつけるべきことはひとつです。プロジェクトに必要なリソースを、導入前に明確に確保すること。

担当者を通常業務から外す(または大幅に軽減する)、関係部署から議論に集中できる人を出してもらう、「片手間では成り立たない」と経営層に正面から伝える、確保できないならスコープを縮める。順序として、いちばん最初に手をつけるべきは、この④です。

4つは、別々の問題ではない

①目的と手段の逆転、②業務分担の曖昧さ、③あるべき姿の不在、そして④体制とリソース不足。この4つは、根っこでつながっています。

いちばん深いところに④があり、その表れとして①〜③が起きている。私たちが「DX失敗」と呼ぶものの多くは、表面の①を見て嘆いている状態です。

本当に手を打つべきは、④まで降りていくこと。体制とリソースを確保し、あるべき姿を描く時間を作り、業務分担を決め直し、目的を見失わずに進める。この順序を踏めるかどうかが、成功と空回りを分けます。


最後に

情シス・業務改善・経営企画の方は、日々「現場が動かない」「ベンダー調整が大変」「経営のプレッシャーが厳しい」という板挟みの中にいると思います。この記事は、その状況を上から評論するために書いたものではありません。

もしプロジェクトが思うように進まないとき、現場の抵抗を責める前に、4つの落とし穴のどこに自分たちが立っているかを、一度確認してみてください。1つでも「ここが曖昧かもしれない」と思えたら、それが立て直しの起点になります。

参考になったら、スキ・フォローをお願いします。DX推進の現場目線で、これからも書いていきます。

このシリーズの続きは、こちらです。

▶ 第2回:そのDXプロジェクト、専任は何人いますか?(理想9人・最低4人の話)


▶ 第3回:半年かけても現状把握ができなかった。AIなら数日でできた


同じ現場で「システム導入が思うように進まない」という悩みがあれば、コメントで教えてください。

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