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大手のDXは、中小製造業では真似できない。では「何から」始めるのが正解か

はじめに



中小製造業のDXは、「一番面倒な一つの手作業を、一つだけ小さく片づける」ところから始まります。大きな計画からではありません。

製造業の現場に事務職として12年、その前はプログラマーとして6年いた立場から書きます。予算も専任の担当者もいない——そんな中小の現場で「何から手をつければいいか」で止まっている、推進担当・情シス兼務・経営の方に向けた記事です。

大手のDX事例は、正直、そのまま真似できません。専任チームも、まとまった予算も、外部ベンダーも、中小には無いことが多い。だからこそ、始め方が変わります。ここでは、私が遠回りして気づいた「何から」を、あなたの現場に当てはめられる形で書きます。

まず、私が「他社の成功例を、そのまま渡して」失敗した話

私は最初、他社の成功例や一般的なDXのやり方を、現状の作業をよく見ないまま現場に渡して、しくじりました。

先に言っておくと、あるべき姿を描くこと自体は必要です。目指す先がなければ、改善は進みません。問題は順番でした。現場で今どんな手順で作業が回っているのか——その現状把握をきちんとしないまま、理想の業務フローだけを描いて渡してしまった。

結果は、絵に描いた餅です。現場に渡すと回らない。入力の項目が抜け、まとめて後で打つ人が出て、数字が実態からずれていく。立派なあるべき姿ほど、現状という土台の上に乗っていないと、ただの紙になるんです。この「形骸化」の話は別記事に詳しく書きました。

そもそも、他社でうまくいったやり方が、そのままうちで動くわけでもありませんでした。大手のように基幹システムへまとめて投資し、専任チームで一気に入れ替える——その成功例をなぞろうとしても、規模も前提も違う。現状を見ないまま借り物のあるべき姿を渡していた、というのが正直なところです。

遠回りの末に切り替えた「一番面倒な一作業」から

そこで切り替えたのが、全体ではなく「一番面倒な一つの作業」を、自分で小さく潰す、というやり方でした。

複数のExcelを一つにまとめる。膨大なファイルを横断で検索できるようにする。手書きの請求書をデータにする。決まった入力をRPAに任せる。私がこれまで作ってきた道具は、どれも「これさえ無くなれば楽になる」という目の前の一作業から始まっています。大きな構想があったわけではありません。一番面倒な手作業を、一つずつ、手元の道具で潰してきただけです。

面白いのは、一つ片づくと、現場から「次はこれも」と声が挙がり始めたことでした。大きな絵を見せても動かなかった人たちが、目の前の手間が一つ消えると、自分から次を持ってくる。順番が、逆だったんです。

ここから先は、では道具も予算も専任もいないあなたの現場で、何から始めればいいか——という具体の話です。

最初の一歩①:あるべき姿の前に、現場の「一番面倒な一作業」を一つ見る

ここからは、私の体験から言える提案です。あるべき姿は描いていい。ただ最初の一手は、理想を描くことではなく、現場で一番面倒な作業を一つ、実際に見ることです。これが、いちばん小さな現状把握になります。

選ぶ基準は3つだけで足ります。毎日ある/繰り返し/手で打っている。この3つが重なる作業は、自動化の効果がいちばん出て、しかも小さく始められます。

大きな課題(属人化、技能継承、全社の可視化)は、一旦わきに置いていい。それらは「一作業」が積み重なった先で、自然と射程に入ってきます。

最初の一歩②:新しく大きく買わず、「今ある道具」で小さく作る

二歩目は、大型のシステムを検討することではありません。今ある道具で、その一作業だけを小さく形にすることです。

Excelのマクロ、無料のツール、ChatGPTやClaudeのようなAI。中小がまず手を伸ばすべきは、稟議も相見積もりもいらない、この辺りです。完璧なものは要りません。一作業が数分から数秒に変われば、それで十分に価値が出ます。

ここで一つだけ、正直に。AIに丸投げすれば全部片づく、ということはありません。何を任せて、どこは人が判断するか——その線引きは、作りながら人が決める必要があります。道具は魔法ではなく、面倒を肩代わりしてくれる相棒くらいに思っておくのが、ちょうどいい。

最初の一歩③:「一人で回る」まで小さく保つ

三歩目は、広げることではありません。その仕組みが、専任のいない現場でも一人で回るまで、小さく保つことです。

中小には、DXだけを見る専任者がまずいません。だから、誰か一人が抜けたら止まる仕組みは、結局続きません。手順を一枚にする、担当を二人にしておく——回り続ける最小の形にしてから、次の一作業へ進む。派手さはないけれど、これが専任のいない現場で積み上がっていく唯一のやり方だと思っています。

そして、この「一作業・一人から小さく」の現場での踏み出し方は、別記事にもう少し具体的に書きました。


中小だからこそ、小さく始めるのに向いている

規模が小さいことは、DXでは不利ばかりではありません。意思決定が速い。経営と現場の距離が近い。試したことの結果が、すぐ見える。大手が何ヶ月もかけて合意形成する話を、中小は「やってみよう」で明日から試せます。

小さく始めることは、中小の弱みを補う手段であると同時に、中小の強みを活かす手段でもあります。

それでも、すぐ全部は変わらない

正直に書いておきます。一作業ずつ潰していくやり方は、遅い。全体最適の立派な絵に比べれば、地味で、回り道に見えます。一つ片づけても、隣にはまだ面倒な作業が並んでいる。

それでも——動かない大きな絵より、動く小さな一つの方が、結局は速い。私はそう考えて、今も一作業ずつ潰しています。

おわりに

中小製造業のDXは、大手の真似では始まりません。専任も予算もない前提で、一番面倒な一作業を、今ある道具で、一人でも回る大きさで、一つだけ。そこからしか始まらないし、そこからなら始められます。

完全な変革は、一度にはできません。それでも、目の前の面倒を一つ、今日片づける。その一つが、次を連れてきます。

同じように「何から」で止まっている現場の一助になればうれしいです。参考になったら、スキ・フォローで教えてください。あなたの現場で「一番面倒な一作業」は何か、もしよければコメントでも。

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