自動化する業務はどう選ぶ?向いている仕事・向かない仕事を見分ける5つの質問
はじめに
いちばん面倒な仕事から自動化すれば、いちばん効果がある。私も、そう思っていました。
ところが、その考えで選んだ仕事は、頓挫しました。時間も、AI利用料(トークン)も、ただ増えていくだけ。「面倒かどうか」と「自動化に向いているかどうか」は、別の話だったのです。
この記事では、自動化に向いている業務を見分ける「5つの質問」を紹介します。先に、その5つを置きます。
なぜ、この5つにたどり着いたのか。うまくいった自動化と、頓挫した自動化の、両方からご紹介いたします。
製造業の現場に事務職で12年、その前にプログラマーとして6年いた立場から書きます。予算も専任もいない現場で、AIやツールで業務自動化を始めたいDX推進・情シス・業務改善・生産管理の担当の方に向けた内容です。
前回は「大手のやり方は真似できない。では中小は何から始めるか」を書きました。あの回は、現場の困りごと="面倒な作業"から候補を挙げる話。今回はその候補が、自動化で回るか=型にはまるかを見る、選び方の話です。候補の見つけ方(前回)と、選び方(今回)は、別の軸だと考えてください。
1. 最初に自動化したのは、在庫Excelだった
私がいちばん最初に手をつけたのは、在庫のExcel集計でした。月をまたいで積み上がるデータが多く、手作業でまとめるのに、毎回それなりの時間がかかっていた。いわゆる定型業務です。
数ある面倒な作業の中で、なぜこれを一番手に選んだのか。当時は、言葉にしていませんでした。でも、あとから振り返ると、はっきりした理由がありました。
2. 選んだ理由は「面倒だから」ではない
面倒な作業なら、ほかにもありました。それでも在庫のExcel集計を選んだのは、次の三つがそろっていたからです。
データ量が多かった
一回あたりの重さより、繰り返しの回数と量が効いていました。積み上がるほど、自動化で浮く時間も積み上がる。量の多い定型作業ほど、最初の一つに向いています。
手順が決まっていた
どのファイルの、どの列を、どうまとめるか。毎回、同じでした。人によって判断が変わる作業ではない。業務フローがはっきりしているほど、機械に渡しやすくなります。
人より機械が得意だった
単純な突き合わせや集計は、集中力が切れれば人はミスをします。ここは、機械のほうが速いし、正確でした。それだけでした。
この三つ——繰り返す・手順が決まっている・機械のほうが正確——は、あとで分かる「向いている業務」の条件そのものでした。私はたまたま、向いている業務を最初に選べていたのです。
3. 手書きの伝票では、つまずいた
うまくいった話だけでは、判断軸は見えません。最初に選び方を外してつまずいた作業もあります。
手書きの伝票を、画像から読み取って自動でデータ化しようとしたときです。これも面倒でしたし、量もありました。だから在庫Excelと同じ感覚で、「これも自動化できるはず」と手を出したのです。
ところが、進みませんでした。手書きの文字を安定して読み取るのが、当時のAIにはかなり手強かった。書き方も一枚ごとにバラバラで、読めたり、読めなかったりする。精度を上げようと試すほど、AI利用料(トークン)だけが増えていきました。最後は、型にはまらないまま、手を止めた。非定型業務の壁でした。
面倒さも量も、在庫Excelと変わりません。それでも、片方は回り、片方は頓挫した。違いは、どこにあったのか。
4. 同じ手書きでも、結果が違った理由

ここで一つ、補足させてください。私は以前、手書きの請求書をAIでデータ化した話を書きました。最初は丸投げして費用を溶かし、少しずつAIを教育して、最終的に仕組みにできた話です。
分かれ目は、入力の形がそろっていたかでした。
請求書は手書きでも、書く欄や項目の並びが、おおよそ決まっていました。だから「ここに日付、ここに金額」と型を作れた。型ができれば、AIに教え込む足場ができます。
伝票のほうは、書式そのものが一枚ごとに違いました。型が作れないので、AIに渡す前提がそろわない。型にはまらないものを、力ずくで読ませようとしていた。これがつまずいたの正体です。
つまり、明暗を分けていたのは「面倒さ」でも「手書きかどうか」でもありません。入力と出力が、毎回同じ形に落とせるか(=型化できるか)。ここだけでした。
5. 【提案】自動化に向く業務を見分ける、5つの質問

ここからは、私の成功と失敗から整理した提案です。実体験そのものではなく、「こう選べば外しにくいはず」という判断軸として読んでください。
冒頭で先に置いた5つを、あらためて一つずつ。候補の作業に問いかけて、「はい」が多いほど、自動化に向いています。AIでも、RPAでも、Excel自動化でも、道具は変わっても、この選び方は同じです。
繰り返す作業か。 毎日・毎週・毎月と、何度も発生する。回数が多いほど、浮く時間が積み上がる。
手順・ルールが、決まっているか。 人によって判断が変わらない。迷いどころが少ない定型業務ほど向く。
入力の形は、毎回同じか。 決まった様式・決まったファイル。バラバラだと、型が作れない。
出力の形は、毎回同じか。 ゴールの形が一定。集計表、一覧、決まった帳票など。
失敗しても、困らないか。 最初の一つは、間違えても取り返しがつく作業から。お金や在庫に直結するものは、後回しでいい。
当てはめ方は簡単です。「はい」が4つ以上なら、最初の一つに向いています。2つ以下なら、いったん後回し。 在庫のExcel集計は、五つがほぼ「はい」でした。手書きの伝票は、③と④が「いいえ」だった。この5問に通すだけで、あのときの明暗は、やる前に見えていたはずです。
6. 向かない業務のサインを、先に知っておく
裏返すと、次のようなサインが出ている作業は、最初の一つには向きません。
手書きで、様式がバラバラ(型化できない。③④が崩れる非定型業務)
毎回、人の判断が要る(例外が多く、ルール化しづらい。②が崩れる)
失敗の被害が大きい(お金・在庫・出荷に直結。⑤が崩れる)
数ヶ月に一度しか発生しない(作る手間に、回収が追いつかない。①が弱い)
向かないサインが出ている作業は、「やらない」ではなく「最初にはやらない」。慣れて、型を作る力がついてから戻ってくれば十分です。非定型な作業ほど、後回しが正解でした。
7. 一気に作らない
もう一つ、選び方とセットで大事なことがあります。向いている業務を選べても、最初から完成品を作ろうとしないこと。自動化の進め方の話です。
私が伝票で費用を溶かしたのは、選び方を外していたうえに、最初から「全部読み取る完成品」を目指したからでもありました。小さく、一部分だけで試していれば、「これは型にはまらない」と早く気づけた。まず小さく試して、向いていると確かめてから広げる。 それだけで、溶かす時間と費用は、ずいぶん減ります。
8. やってみないと分からないこともある
正直に書くと、5つの質問は「外しにくくする」ためのもので、当たりを保証するものではありません。やってみて初めて、「思ったより例外が多かった」と分かることもある。実は、そういうものです。
それでも、選ぶ前に一度この5つを通すだけで、"面倒さ"だけで飛びついて頓挫する、いちばんもったいない失敗は避けられます。最初の一つで小さく成功できれば、次を選ぶ目も、養われていきます。
9. おわりに
最初に、どの業務を自動化するか。ここを外すと、せっかくのやる気とAI利用料が、型にはまらない作業に溶けていきます。逆に、繰り返す・型がそろう・失敗しても困らない——この条件で一つ選べれば、最初の一歩は、ぐっと外しにくくなります。
次に「これ、自動化できるかな」と思う業務が出てきたら、この5つの質問を使ってみてください。保存しておけば、業務を選ぶたびに、判断基準として何度でも使えます。 「はい」がいくつ付くかで、着手か、後回しかが見えてきます。
「自動化したいけれど、どの業務から手をつければいいか分からない」「面倒な作業に手を出して、かえって時間を溶かしてしまった」——そんなお悩みがあれば、作業の中身をコメントで教えてください。一緒に、5問で診てみます。
参考になったら、スキ・フォローをお願いします。次の一歩の踏み出し方を、これからも一つずつ書いていきます。
あわせて読みたい:大手のDXは、中小製造業では真似できない。では「何から」始めるのが正解か / AIに渡していい情報、渡してはいけない情報(線引きガイド)
