【事業再生#3】資金繰りは破綻寸前。第二会社設立時に決めるべきこと|建設業者の再生プロジェクトvol.3
破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。
実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。
今回のクライアントは東北地方の建設業。
彼らの事業再生実録を5話に渡って綴ります。
夫婦で切り盛りして、年商3億。
再生スキームや、経理・総務体制の再構築といった実務も含め、"机上の空論ではない"企業再生の記録です。
経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。
▼こちらの事例の過去記事はこちら▼
【第3話】資金ショート寸前──再生への第一歩
再生の方向性が定まり、次は実行フェーズに移る。 第二会社方式を採用する方針が決まった今、まずやるべきは「資金繰りの安定」と「債権者対応」だった。
すでに、会社の資金繰りは完全に破綻状態にあった。
予定通りすべて支払えば、資金は足りない。 再生の第一歩は、「支払わないものを明確にする」ところから始まる。
支払うもの、支払わないものを選ぶ
最優先は、従業員の給与と業務継続に不可欠な支払い。 それ以外の支払いは、すべて一旦止める。
車両リースも引き上げられるギリギリまで支払いを遅らせる。
金融機関の返済も当然ストップ。 最初は督促がうるさいが、時間が経てば大体落ち着いていく。
「支払わないとどうなるのか?」と社長に何度も聞かれるが、 実際には家に押しかけられることもなく、返済の催促が来るだけだ。
きちんと適切に対応策を講じれば、実際、債権者に返済できないからといって、家を取り上げられたり、すべてを失ったりするケースは稀だ。
ただ、ここでひとつ大きな問題がある──。
口座の差押に要注意──社会保険料の滞納
資金繰りが厳しいとき、多くの人が税金や借入返済の停止に目が向く。
だが、一番注意すべきは社会保険料の滞納による“銀行口座の差押”だ。
最近はとくに対応が早く、督促から数週間で差押に踏み切るケースもある。
売掛金が入る口座を早期に第二会社名義の口座に移行する必要がある。
これは、再生スキームを成功させるうえでの必須事項だ。
支払停止は徹底する──「守るために払わない」
第二会社が動き出すまでは、旧会社がすべての負債と対峙する。
守るべきは「これから再建する会社」だ。
金融機関やリース会社、取引先などからの督促は避けられないが、 そのすべてに応じていては再建そのものが破綻する。
強い口調で「支払わないとどうなるかわかってますよね?」と言われ、 恐怖から勝手に支払ってしまう社長もいるが、これは再生において最悪の行動だ。
最初に決めた方針を守る。
ブレずに支払い停止を徹底することが、会社を守る唯一の道になる。
第二会社設立と事業譲渡契約の実行
並行して、第二会社の設立を進めていく。
・役員構成:詐害行為とならないよう専門家と協議しながら設計
・事業譲渡契約:金額設定も慎重に進める必要がある
第二会社が譲渡代金を用意できないケースも多いため、今回は支援スキームを活用した。
私は、過去に再生した会社数社と共同で設立した法人から、 短期的な資金支援(またはファクタリング)を行う体制を整備している。
今回はこの法人から第二会社に対し、譲渡代金分の資金を支援し、事業譲渡を実行した。
従業員と取引先の移行
今回は退職金・有給休暇の清算はなしとし、そのままの条件での移行とした。 当然、不満が出る場合もあるが、この局面では“全員を守る”は不可能だ。
・取引先には、新会社への取引移行を案内
・従業員は、旧会社で一度全員を解雇したうえで、新会社にて再採用
「訴えられたらどうするのか」「辞められたら困る」── その不安が判断を鈍らせるが、守るべきはこれから立て直す土台であって、 全員と円満に終われるなどと考えるのは幻想に近い。
経理担当者は新会社に移行させなかった理由
今回の再生では、経理担当者を新会社に移行させなかった。
理由は明快だった。 社内フローを複雑にしていた張本人であり、コストも割高だったからだ。
もちろん揉める可能性はある。
だが、会社の資金が火の車であることは本人も理解している。
今回は、「新会社の経営方針により不採用」とし、穏やかに整理できた。 すでに業務フローのヒアリングを進めていたため、引継ぎも問題なく完了。
kintoneを活用した管理体制の再構築
これまで:
・案件管理
・進捗状況の把握
・入金確認
・請求書発行
これらすべてがバラバラのExcelファイルで管理されていた。 その結果、情報の連動がなく、ダブル入力や漏れが常態化していた。
そこで、kintoneを導入し、案件管理・請求・入金確認・進捗管理を一元化。
すべてが連動する仕組みを開発し、業務負担とミスの軽減を図った。
システムを変えるだけでは再生にならない。
それを活用する「人」と「フロー」も一体で見直さなければならない。
今回は導入初期から社長自身が使用し、指示を飛ばす仕組みを定着させた。
第二会社始動。再生スキームの中でやるべきこと3つ
再生スキームの全体像として、やるべきことは次の3点だ:
①第二会社の設立と体制構築
②取引先と従業員の移行(不採算人員の整理含む)
③第一会社に残る債権者への対応
第二会社には負債を持ち込まないため、 再建初期のキャッシュフローを確保する設計になっている。
3ヶ月もすれば資金に余裕が生まれるように、 最初からその構造で“設計しておく”ことが肝要だ。
もちろん、再建はスタートにすぎない。
初動のキャッシュフローをどう管理するか、どのように成長軌道に乗せるか── 次の課題に備える設計がなければ、再び同じ轍を踏むだけだ。
経営に失敗した──それを受け入れたときが再生のスタート
最後にひとつ、忘れてはならないことがある。
「経営に失敗した」ということを、なかなか認めたがらない社長は多い。
社会情勢、外注先、社員のせい──いろいろ理由を挙げる。
だが、それも含めてすべて、経営者の責任だ。
そして、失敗してもいい。
それを受け入れ、二度と同じ轍を踏まないことが大切だ。
再生とは、やり直すことではなく、生き直すこと。
そして、失敗を乗り越えた経営者は、間違いなく強くなる。
次回・第4話では、債権者との調整・督促対応・事後処理のリアルをお伝えします。 “しぶとく、粘り強く、現実と向き合う”──再生の最終ステージです。
→ 【第4話】何を捨て、何を守るか。追い込まれた経営者の再生への覚悟
🙌終わりに
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