【事業再生#11】美容室売上の減少を美容商材販売で補填?|多店舗展開美容室の再生プロジェクト失敗事例vol.1
破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。
実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。
今回のクライアントは中国地方の美容室多店舗経営法人。
今回は再生の失敗事例になります。
その事業再生失敗事例を3話に渡って綴ります。"机上の空論ではない"事業再生の記録です。
経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。
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【第1話】「もう後がない」──多店舗美容室のSOSと見え隠れする“異変”
美容室の再生支援は、これまでにも何件も携わってきた。
同業他社で再生に成功した企業からの紹介で、新たな案件に繋がることも少なくない。
今回の相談も、数年前に再生支援で関わった中部地方の美容室経営者からの一本の電話がきっかけだった。
「中国地方で美容室を多店舗展開している知人がいる。経営が厳しいようで、相談に乗ってやってくれないか?」
この案件は、弁護士経由ではなかったため、まずは現地に直接足を運ぶことにした。
電話口の声の雰囲気からも、時間的な猶予があまりないことは感じ取れた。
📍 初訪問で見えた「表向きは堅実」な経営体制
現地を訪れると、まず驚いたのは施設の立派さだった。
3階建ての自社ビルの1階が店舗、2階が事務所、3階が自宅になっているという。
ここ以外に4店舗を運営し、従業員数は30名。
近年、美容業界では「面貸し」(=美容師が個人事業主として施設使用料と売上の一部を支払う形態)が主流になりつつあるが、この会社はすべて正社員雇用だった。
正確には「正社員にこだわってきた」というより、かつては美容業界全体が正社員雇用を前提としていたという背景がある。
現在の従業員も「正社員であることが当然」という意識が強く、業務委託やフリーランス形式への移行には強い抵抗感があるようだった。
聞けば、コロナ禍で売上が激減した際も、人件費などの固定費削減を行わず、融資で資金を繋いで乗り切ってきたという。
そして今、その返済負担が資金繰りを圧迫している。
税金や社会保険料の滞納はほとんどないという説明に、私は一瞬「これはなんとかなるかもしれない」と感じた。
だが、それはあくまで“表面上”の話にすぎなかった。
📉 売上半減でも店舗数は維持──赤字を融資で埋める日々
決算書を見せてもらうと、直近の売上はなんとコロナ前の約半分に落ち込んでいた。
店舗数は維持したままだったが、従業員数は減少の一途をたどっていた。
ピーク時には60名以上の美容師が在籍していたというが、現在は30名程度にまで減少している。
赤字分は融資で埋めており、まさに綱渡りの経営だった。
さらに聞けば、美容師の人材流出が止まらず、それとともに顧客も減少。
特定の美容師に依存した顧客構造であるため、一人辞めればその影響は大きい。
売上減少に歯止めがかからない理由はここにあった。
🕵️♂️ 社保支払いの“からくり”と浮かぶ違和感
さらに気になる点があった。全員が正社員だと聞いていたが、決算書には社会保険料の支払いの形跡がほとんどなかったのだ。
違和感を覚え、社長に尋ねると──
「社保用に別会社があって、そっちで最低限だけ働いてもらってるんです」
その説明は、制度を逸脱したいわゆる“社会保険料削減スキーム”だった。
具体的には、従業員を本体の会社と社保加入用の別会社の両方で雇用し、加入要件ギリギリで社保に加入。
実際の勤務は本体でフルタイムなのに、社保は最低報酬で加入している、というものだ。
この時点で、所見の「なんとかなるかもしれない」という印象は大きく揺らいだ。
🧴 息子の“小売補填”に潜む危うさ
さらに追い打ちをかけるように、社長はこう語った。
「最近は美容品の小売で、息子が売上減少分を補填してくれてるんですよ」
売上補填を家族で工夫するのは一見微笑ましい。
しかしその実態は、美容室で仕入れた商材を息子が運営する別会社で販売するというもの。
しかもその仕入れ額は月に数百万円規模。
売上減少に苦しむ中、商品を仕入れて外部で販売するという行為は、キャッシュフローの悪化を招くリスクが高い。
しかも、それが帳簿上どう処理されているのかが不透明だった。
👩💼 経理担当者との出会いと“本当の問題”の兆し
長年経理を担当しているという年配の女性と挨拶を交わす。
この方がのちに、再生支援の鍵を握る存在になる。
年齢は60歳近く、勤務歴は20年以上に及ぶという。
彼女は社長のことを非常に尊敬しており、「ずっとついてきた」「この人のために頑張りたいと思ってきた」と語っていた。
その誠実さと会社への思い入れが伝わってくる人物だった。
帳簿を確認していくと、売上の一部がどの仕入れに紐づくものなのか不明瞭で、経理の方に確認する。
「商品は本体で仕入れていますが、販売は息子さんの会社からの入金になります。しかも仕入れ額とほぼ同額、もしくは少し少ない金額で──」
それはつまり「利益が出ていない」ことを意味し、横流しの可能性が高い。
実際、経理担当者は社長に問いただしたが、「息子がそんなことをするはずがない」と一蹴されたという。
このとき私は、これは単なる資金繰りの問題ではなく、もっと深い構造的な問題──すなわち“ビジネスモデルそのものの崩壊”が起きていると感じ始めていた。
次回は、さらに深堀りした現場検証と、再生案の提示、そして“社内での見えない対立”に切り込んでいきます。
🙌終わりに
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経理が属人化していて、現金の流れが不透明
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