私がこの国の代表です ~高校生総理~第三話【#創作大賞2024 、#漫画原作部門】

第三話

恭介 「さぁ、どうする? 俺に任せて総理になるか、それとも……」

 迷いを見せる伸吾、しかしすぐにその手を取る

恭介 「……いいのか? 誰かに任せるのはだめじゃなかったのか?」
伸吾 「これは任せるんじゃない、力を借りるんだ。俺は政治に詳しくない。だから周りの人に力を借りなきゃきっとなにもできない」
恭介 「………………」
伸吾 「だから北条、お前の力を貸してほしい」
恭介 (なるほど……)

  恭介笑い出す

伸吾 「な、なんだよ急に……」
恭介 「方便を使い出すとは、いっぱしの政治家気取りだな」
伸吾 「なっ」
恭介 「いいだろう、手を貸してやる。おれがお前を臨時の総理にしてやろう!」

伸吾 「…………っ」
恭介 「そう決まったのなら、さっさと動き出そう」
伸吾 「?」
恭介 「政治家の最初のお仕事さ」

 恭介はニヤリと笑い、その手には、カメラ
 三嶋家、 カメラを前にガチガチに緊張する伸吾 合図と共に語り出す

伸吾 「えー……初めまして。三嶋伸吾です。本日は、先の国会での宣言について詳しくお話ししたいと思います」

  回想

伸吾 「生配信!?」
恭介 「国民に説明するんだ。今の状況、今後のこと。文章は用意してやるから」
伸吾 「そんなことでみんな納得してくれるのか?」
恭介 「するわけないだろ。よく覚えておけ、満場一致なんてのは夢物語、政治は特にだ」
伸吾 「…………」
恭介 「だから説明する。国民に納得してもらえるよう、言葉を尽くす。それが政治家の最初の仕事。そうすれば支持してくれる人もでてくるかもな?」
伸吾 「………………」
恭介 (支持者が増えたところで、どうにかなるわけでもないがな……本当の狙いは――)

 伸悟、疑惑の目

伸吾 「なあ、それだけが狙いなのか?」
恭介 「!?」
伸吾 「他にもなにか目的があるんじゃないのか」
恭介 (やっぱり、コイツ勘がいいな。頭は悪いが直感的になにかを感じ取ってる)
恭介 「さて、どうだろうな」
伸吾 (なーんか怪しい……)

 生配信中 恭介の用意した文章を辿々しく読んでいく

伸吾 「以上のように、今回のテロは日本だけでなく、世界の平穏を覆しかねない危機的状況にありました。それを回避するため、私は名乗りを上げたのです」

 配信のコメント、辛辣なものばかり

伸吾 (本当にこんなので大丈夫なのか……?)
  「えーそれでは、一部質問にお答えしようと思います」

 罵詈雑言に混じって、質問のコメント

伸吾 「ええと、『高校生が政治家なんてどうやっていくつもりなんですか?』それは、その……が、がんばって……」

 質問『総理になったら、どんな国にするつもりですか』」

 
伸吾 「ど、どんな国に? う、うーん……えと、今よりよりよい、国に?」

 コメント『曖昧すぎる』『安心できねぇ』『まず原状回復だろ!』
 呆れる恭介

恭介 (せめて具体的に答えろよ……)

 手ごたえを感じず焦りだす伸悟

伸吾 (こんなんじゃあ、みんな納得してくれないぞ……どうする……)

 質問『どうして自分で立ち上がろうと? アメリカとか他国に任せればよかったのでは?』

伸吾 「それは…………」

  一瞬、葵と目が合う

伸吾 「ええっと、自分の向かいの家に幼なじみの子がいます」
葵 「!?」
恭介 (これは……台本にない……)
伸吾 「彼女はいつも笑顔が絶えず、追試になってもなんやかんや言いながら勉強も手伝ってくれて、誕生日には毎年ケーキを焼いてくれるんです」

 「羨ましい」「自慢か?」等のコメント

伸悟 「あぁ、きっと、こんな日常がずっと続くんだろうなと思ってました。でもそれは打ち砕かれた」
恭介 「……………………」
伸吾 「テロで大騒ぎになって、分割統治の話が上がった時、俺の家と彼女の家がその境目になりました。もしあのまま話が進んでいたら、俺達は離れ離れになって――最悪、殺し合う国同士になっていたかもしれない」
コメント 『それは、いやだな……』
伸吾 「自分も思いました。きっと誰かがやってくれる。大人がなんとかしてくれるって。でも縋るべき大人はもういない。あの日常はもうないんです」
  「俺は彼女と何気ない日常を過ごしたい。ただそれだけなんです。それだけのために、この国の代表になろうと、決意しました」
コメント 『その子と付き合ってるの?』
伸吾 「つ、付き合って!? いや、そういうわけじゃ……」
コメント 『結婚は?』
伸吾 「け、結婚!? まだ俺達高校生だし、それに、その……」
コメント 『???』

 顔を真っ赤にする伸悟

伸吾 「そ、そういうのは……勢いで、言いたく、ない……」

 コメント欄が「推せる」の嵐
 赤面する葵

葵 (伸吾君ってばもー……でも……)
恭介 (流れが一気に好印象に……!?)

 機を見逃さず恭介が指示を飛ばす

伸吾 「っ! えーご存じの通り、私の年齢では通常議員への立候補はできません。ですが現在の日本は緊急時にあると考えられます。そこで私は――」

 伸吾、意を決して力強く発言する

伸吾 「超法規的措置の施行を宣言します」

 コメント、予想通りの反応とざわつき

伸吾 「無論、一個人が言い出すものではないとは重々承知しております。しかし国の中枢が機能していない現在、座して待つわけにはいきません」
  「納得できない方も大勢いらっしゃるでしょう。そこで一週間後、臨時の総理として任命していただくため、天皇陛下へ面会を申し込みます」

  ネット大荒れ

伸吾 「もし、私よりも総理に相応しいと思う方がいるのなら、一週間後直接東京駅八重洲広場にお越しください。そこで誰が相応しいかハッキリさせましょう」

 ざわつくコメント。支持するコメント以外に 『こんな奴に任せられない』『俺がやる』等
 恭介が終了の合図を出そうとする。しかしそれを遮る伸吾

伸吾 「ここまでお話を聞いていただいて、ありがとうございます……最期に、自分と同じ世代の方々へ」
恭介 「?」
伸吾 「私が総理になるかどうかは置いておいて、忘れてはならないことがあります。それは、これからの日本は私達若者にかかっているということ」
恭介 (…………)
伸吾 「頼れる大人はもういない。できるなら私も、成熟した子供のままでいたかった。でも、未熟な大人にならなければなりません」
  「今までの日常を取り戻せるか、それとも秩序の崩壊した国になるか。または――分割された日本で隣り合う友人達と銃を突きつけ合うか。それは――私達の若者の手にかかっています」

 ネットを眺める人々。
 それぞれ思い思いの目で、伸悟の配信を眺めている

伸吾 「誰かに自分の国を任せてはいけません。この難局は共に乗り切りましょう」

 放送終了

伸悟 「ふーっ……」
葵 「お疲れ様」
伸吾 「ありがとう」
恭介 「…………」
  (政治家に頭の良さはさして重要じゃない。大事なのは人を惹きつける、カリスマ性。あの国会でのやりとりから、皆コイツの行動に目を惹かれ続けている。これは思った以上に……)

伸吾 「これで、みんな納得してくれたのかな……?」
恭介 「言っただろ無理だって。むしろ、お前に対抗してくる奴が出てくるはずだ」
伸吾 「そんな!?」
恭介 「だが――それこそ待ち望んだ展開だ」
伸吾 「?」
恭介 「この国は民主主義だ。対抗してきた相手と選挙し勝てば、誰も文句は言えない」
伸吾 「そりゃそうだけど……でも勝てる保証なんて」
恭介 「なにを言ってるんだ? 今の日本にお前に勝てる奴なんていない」

 伸悟、若が分からない

恭介 「まず今の日本じゃ大人は立場が弱い。立ち上がっても、支持すらされないだろう」
伸吾 「………………」
恭介 「では、同世代の子は? 自分で立ち上がる奴もいれば、大人が裏で支援する人も出てくるだろう。だが……そいつらじゃお前の相手にはならん」
伸吾 「な、なんで?」
恭介 「日本の選挙で大事なことは何だと思う?」
伸吾 「だ、だいじなこと……?」
葵 「えっと、『知名度』……?」

 恭介、その通りと頷く

伸吾 「知名度って……そんなのただの人気投票じゃ……」
恭介 「そうだな。だが日本の国民のほとんどは、政治に不満がなく、関心もなく、誰がやっても同じだとすら思ってる」
伸吾 「…………」
恭介 「それが今回は俺達には優位に働く。なにせ今の日本でお前以上に知名度のある奴なんていない」
伸吾 「!?」
恭介 「この国の代表と称して各国首脳に食って掛かり、あげく中学生でも知っている権利を知らない大恥を晒す。良くも悪くも、お前の知名度は抜群」
伸吾 「……っ」
恭介 「極めつけはさっきの配信。分割統治を先延ばしにして世界大戦を回避したという実績までアピールできた」
伸吾 「まさか……それで、配信を!?」
恭介 「馬鹿言うな」
伸吾 「!?」
恭介 「記者達の前でお前を馬鹿にした時からだ。あの時からこうなるよう、対立候補を煽ってたんだ」
伸吾 「なっ、そこまで考えて……」
恭介 「もっとも……思っていた以上に支持されてるようだがな」
伸吾 「?」
恭介 「最期のは俺も悪くないと思ったよ」

 葵の持つタブレットから、伸吾を支持するコメントが多数

恭介 「安心しろ。ほぼ間違いなく、お前で決まる」

 嬉しそうな伸吾と葵、しかし恭介の顔は暗い

恭介 (もっとも……コイツ以上に知名度も実績のある人間が出てくれば、話は別だがな……)

 次の日、ネット配信に一人の大人が立候補に名乗りを上げていた。

伸悟 「この人……!?」
葵 「元国会議員で、時期総理候補とまで言われた懐刀……持病で倒れられたと聞いてたけど」
伸悟 「元、総理の孫が立候補……!?」

  三話END

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