私がこの国の代表です ~高校生総理~第二話【#創作大賞2024 、#漫画原作部門】

【第二話】

 前回のあらすじ
 大人がダメになってしまった日本で 高校生三嶋伸吾は、日本の代表に名乗りを上げた。
 しかし、18歳になって選挙権は手にしても、議員に立候補する権利、被選挙権が25歳以上からとは知らなかった

 三嶋家 父親の葬儀がようやく終わり家に帰ってきた伸吾 リビングの新聞には、「被選挙権も知らない高校生暴走」「米大統領も大恥」「ノーコメントと一蹴」など

伸吾 (やっちまった……選挙に行けるんだから立候補も出来ると思ってたけど、そうじゃないのかよ……)
  (一ヶ月以内に臨時政府を立てて、治安維持に努めなきゃならないのに、こんなんで本当にできるのか?)

 そこに、自宅へ上がってくる葵

葵 「伸吾君、いる?」
伸吾 「葵?」
葵 「ちょっと歩かない?」

 二人で外へ散歩に出る

葵 「葬儀お疲れ様」
伸吾 「ありがと。こんな状況だからな大変だった……」
葵 「おばさまは?」
伸吾 「休んでる。色んなことがありすぎてな……葵のご両親も来ていただいて、助かったよ」
葵 「うちは自営業だったから、運良く……って言っていいのかもわからないけど」
伸吾 「…………」
葵 「…………」

 無言の二人、突然立ち止まる葵。

葵 「ねえ、伸吾君。ホントにやるつもりなの?」
伸吾 「……………………」
葵 「高校生が国の代表なんて……」
伸吾 「やる」
  「あのテロで、今までの日本は壊れた。あのままじゃ分割統治され、俺達も離れ離れになってた。そんなの嫌だ」
葵 「…………」
伸悟「ゲームして、くだらないことで笑い合う、あの何気ない日常を取り戻すんだ。これからも葵と一緒にいたいから」
葵 「……分かった。私も協力する」
伸吾 「いいのか?」
葵 「だって、選挙権と被選挙権の違いも分からない人には任せっきりには出来ないよ」
伸吾 「うっ……」
葵 「それに私だって……伸吾君と、一緒にいたいし……」
伸吾 「あ、葵……」

  見つめ合う二人。ドキドキといい雰囲気

恭介 「乳繰り合ってる暇があるとはね」
二人 「ギャーッ!」

 例のフードの男が二人の間に立っていた

伸吾 「おっおっ、お前、国会にいた!?」
恭介 「この国の代表と名乗りを上げた人間が、よもや路上で不純異性交遊か。さすがは被選挙権も知らなかった代表様だ、やる事が違う」
伸吾 「んぎ……」
恭介 「まったくダメだな、まるでダメ」
  「勢い余って国会突撃、各国首脳の前でこの国の代表面。さらには中学生でも知っている国民の権利すら知らない大恥をカメラに晒す」
伸吾 「………………」
恭介 「ついでに路上で彼女とイチャイチャとは……」
葵 「アナタもしかして、北条恭介君!?」
恭介 「北条……?」
葵 「高校生ながら政治討論会で議員の人達をコテンパンにした北条君よね? 見覚えがあると思ったら……」

 苦笑を浮かべる恭介

恭介 「なあ、お前がわざわざ代表をする必要があるのか?」
伸吾 「!?」
恭介 「誰かに任せればよかっただろう? それこそこの国の人間じゃなくてもいい、アメリカだっているんだから」
伸吾 「それは……」
恭介 「…………」

 見つめる恭介、悩む伸吾。 だが、意を決して伸吾は顔を上げる

伸吾 「いや、それはダメだ……アメリカだって結局は余所の人間だ。そんな連中に俺達の国は任せられない」
恭介 (へー……)
伸吾 「そりゃ誰かに任せれば楽だけど、責任まで投げ出すわけにはいなかい。だから、この国は俺達がなんとかしないと――」
恭介 「アホだな、ほんっとアホ」
伸吾 「お前、いい加減に――」
恭介 「だが、国会でこの国の代表と言ったことは評価できる」
伸吾 「は……?」
恭介 「あの場で『自分は総理大臣です』なんて言わず、『代表』という曖昧な存在でぼやかしたのは上手かった」

 疑問に思う伸吾の横で、葵がハッとなる

葵 「そっか。任命もされていない『総理』って名じゃ相手にされなかったかもしれないけど、『代表』って名目なら……」
恭介 「そう、緊急時故にそのあやふやな名目にペテンが効いた。あれで、各国首脳は耳を貸さざるを得なかった。そこは本当に上手かったよ」

 驚く伸吾

恭介 「その様子じゃ、そこまで考えてたわけではないみたいだな」
伸吾 「…………」
恭介 「ま、結果的に良かった。なにせあのままじゃ領土は分割されて日本という国は消滅してたんだから」
  「……もっとも、それもまだマシな方だがな」
伸吾 「え?」
恭介 「あのままいっていたら、最悪――第三次世界大戦に突入してた」

 驚く葵と伸吾

葵  「なっ!? 第三次世界大戦!?」
伸悟「そんな、極端な」
恭介 「極端だって? 笑わせる。日本は戦争のない平和な国だとでも?」
伸吾 「?」
恭介 「国内の治安は世界最高峰。インフラも充実し経済も安定。だがその裏側はまさに火薬庫と変わらない」
恭介 「日本は世界の軍事力トップスリーに、核保有国の4/9に囲まれた国だ。欧米から見た太平洋を守る防波堤、中国から見た太平洋進出への橋頭堡。そんな国が瓦解してみろ、各国で領土を争い、まず間違いなく世界大戦まっしぐらだ!」
伸吾 「………………」

 唖然とする伸吾の後ろで、疑問そうな顔の葵

葵 「疑問だったんだけど……あの時、どうして他の国は簡単に引き下がったの?」
伸吾 「?」
葵 「貴方の言うとおり各国が日本の領土を欲しがってたなら、伸吾君のことなんて、無視することも出来たはずなのに……」
伸吾 「言われてみれば…………」
恭介 「各国にも思惑があるんだよ。例えばアメリカは日本には自国の防波堤になってもらいたい、だから機能不全になられると困る。逆に中国は太平洋進出の絶好の機会だが、アメリカとの戦争を望んでいるわけじゃない」
「だがお前が代表と名乗りを上げたことで状況が変わった。アメリカは時間稼ぎが出来るし、中国にしてみても、成功しても失敗しても、組み安しと考えたんだろう」
伸吾 「……ッ」
恭介 「他の国々も同様。それぞれの思惑が複雑に絡み合いその結果が締結の先延ばし。日本が属国にならずにすんだのはまさに紙一重だったのさ」
伸吾 「………………」
恭介 「とはいえ、一時的にでも日本の分割統治を先延ばしにして戦争を回避することが出来たのはすごい功績だ」
伸吾 「お前、一体なんなんだ……?」
恭介 「俺は、お前を総理にする男だ!」
伸吾 「はぁ!?」

 驚く伸悟

恭介 「俺は元々、腐った大人達をぶっ潰すつもりだった。国会で生き残ったマスコミと大人達をお前も見ただろ」
伸吾 「マスコミ……」
恭介 「お前が代表と名乗りを上げた瞬間、こぞって集まってきて、持て囃し……かと思えば俺が被選挙権のことを切り出したらどうだ? 一斉に手の平返しだ」

 あの後のやりとりを思い出す。 持ち上げていた態度を一変し、追求するばかり。記事には馬鹿にする内容も

恭介 「きっと連中も被選挙権のことなんて知らずに集まったぞ。まさにダメな大人の代表だ。そんな連中を俺はぶっ潰す、そのつもりだったんだがな……」
  「テロで全部台無しだ……日本もそれどころじゃなくなって……そこにお前が現れた」
伸吾 「…………」
恭介 「負けたと思ったよ。俺は足踏みするだけで文句を垂れ流す大人達と変わらなかった。でもお前は、考え無しとは言え動き出した」
伸吾 「北条……」
恭介 「だが今のままじゃダメだ。勢いだけで政治は務まらない。だから俺が手を貸してやる」
伸吾 「なんで……どうしてお前はそこまで力を貸してくれる?」
恭介 「俺はお前の次の世代の総理になる。お前が作る臨時の政府を傍で支えて、その実績で次の総理の椅子を手に入れる。それくらいの強かさがないとこの国は変えられない」

  壮大な恭介の戦略に呆然とする伸吾。
 しかしすぐにハッとなる

伸吾 「で、でも立候補出来ないってお前が言ったことだろ」
葵 「それなんだけど……私も考えてみたの」
伸吾 「葵……?」
葵 「立候補は25歳以上っていう法は、あくまで平時の話でしょ。緊急時の今なら、それこそアレが使えるんじゃないかなって」
伸吾 「あれ……?」
葵 「超法規的措置――法律に規定された範囲を超えて行う、限定措置。この情勢なら十分適応内だと思うけど……」
伸吾 「そ、そんなのがあるのか! それなら」

 葵が首を振る

葵 「でもダメよ。これは本来国が定めるもの、まして一個人の主張するものじゃない。伸吾君が言い出したところで、誰も納得しないと思う……」
伸吾 「そ、そっか……」
恭介 「なるほど、キミはそっちのアホよりは賢いね」
伸吾 「アホって……!」
恭介 「狙いは間違っていない。大事なのはやり方なんだよ。俺ならそのやり方を知っている」
伸吾 「!?」

 恭介、手を伸ばす

恭介 「さぁ、どうする? 俺に任せて総理になるか、それとも……」

 迷う伸悟
 二話 END

第一話

第三話

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