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人間関係の「三つの原則」を学ぶ - 人間関係が苦手でもなんとかやっていくための本 試し読み版 5

シロイブックスより2026年1月に刊行した書籍「人間関係が苦手でもなんとかやっていくための本」の試し読み版です。

「試し読み版 5」の当ページでは、第三章「三つの原則を学ぶ前に」の序盤に当たる部分を掲載しています。


まずはちょっとだけ論理学の時間だ

三つの原則を学ぶための前準備

第一章でも予告したとおり、本書ではこの世の人間関係に「三つの原則」が存在するという視点を立てて、そこから前向きな行動指針を引き出していきたいと思っています。その原則とは、次のようなものです。

  1. わからないの原則

  2. 距離感の原則

  3. 返報性の原則

読者のみなさんもそろそろ「この本は前置きが長い」ということにお気づきでしょう。残念ながらそのとおりである点はお詫びしなければなりませんが、以上の三点についても、この章で直ちに解答を提示するわけにはいきません。

私たちが終わることのない課題を抱えているのは、解答集の不在というよりは課題そのものの理解に失敗していることに原因があるので、「何が問題なのかを正しく理解する」というステップは非常に大切なものです。言い換えると、読者が自らの手でこの誤りを訂正できたとき、その理解はそのまま答えのようなものになり、本書の役割はそこで終わります。「問題を正確に理解している」ということは「解ける」ということとほとんど同義です。反対に、これから点検しようとしている誤解の訂正なしには、どれほど素晴らしい人間関係のノウハウも十分に機能しなくなることでしょう。

今から考えようとしている「三つの原則」は、いずれも常識的に理解できる理屈から成り立っている(と筆者は考えている)ものですが、その真意は一般にはあまり理解されておらず、とても「常識」とは呼べないようなレベルにあります。そこで、本題の「三つの原則」の詳しい解説に入る前に、私たちが「何を理解し損なっているのか」について確認しておく必要が出てきます。それぞれの原則の詳細は、このあと第四章から第六章までの三つの章で順番に見ていく形となりますが、今から第三章でしていきたいのは、そのための重要な前準備に当たります。

相手が普通の大人であるとき、お店に並んだ商品を前に「これを入手するためには相応のお金を支払う必要があります」などとわざわざ説明したりはしませんね。しかし、ネットでときどき見かける「初心者でもスマホ一つで月収○○万円!」のような怪しげな副業話を観察してみると、どうやら「苦労をせずにお金が稼げるという話は嘘である」という点については、相手が大人であってもかなりきちんと説明しなければならない場合があるようです。
話の構造としては、これは私たちがお店のレジに行くときに考えていることを反対側から見ただけです。誰もいらないものにお金を払いたいとは思いません。よって、ビジネスをやる側の人間は(少なくとも詐欺のような犯罪に手を染めるつもりがないなら)、常に「お金を儲けたい以上、人がお金を払ってくれるような価値のある商品やサービスを提供しなければならない」と考える必要があります。儲かるということは、お客さんが喜んでお金を払ってくれているか、あるいは渋々でもそれだけ支払う価値があると考えてくれているかのどちらかで、いずれも「他で簡単に代用できない」ということが必須の要件になります。そういう価値のある仕事が「スマホを使った一日五分のラクラク作業でOK」ということはあり得ません。革新的な秘密の営業ノウハウがどうとかいう話を聞く必要は一切なく、なすべき指摘はこれだけです。

「立場をひっくり返しただけで、あまりにも常識的なはずのことが理解できなくなる」というのは、私たちの日々の人間関係の場面でもたびたび発生しています。みなさんもご存知の錯視の図形、あの本来は同じ長さの二つ線や同じ大きさの二つの丸が異なって見える図形のように、人との関わりの場面にも「特定のパターンが与えられると、なぜだかあっさり間違えてしまう」状況設定が存在しているようです。

「三つの原則」を学ぶ目的の一つは、こうした誤解の構造を認識し、そこから発生する不利益を自分の力で回避していくという点にあります。

三つの原則とは何で、それは難しい話なのだろうか

さきほど箇条書きにした「三つの原則」を改めて端的な文章で表現すると、それは次のようになります。

  1. わからないの原則:人はお互いの心をわかろうとする必要があるが、人の心はそもそもわからなくて当然である

  2. 距離感の原則:関係を必ず実らせる魔法はないが、距離感を誤ればその関係は必ず壊れる

  3. 返報性の原則:好意や親切や献身は報われるとは限らないが、それでも与える必要があり、与えた以上のものが受け取れると期待してはならない

さて、この詳細は第四章~第六章でしっかりと見ていくつもりですが、今注目しているのは「誤解の構造」という話でした。ここに箇条書きにした「三つの原則」の内容には、実はいずれも以下のような共通した論理構造が含まれています。

  • 「Bを実現するためにはAが必要だが、Aをしたからといって必ずBが実現できるとは限らない」

落ち着いて読んでみれば、特に難しい話というわけではないですね。この世の中では「頑張ったからといって報われるとは限らない」といった状況は普通に存在するし、むしろそのほうが普通なので、私たちは毎日当たり前にそのような構造の課題(学業、仕事、恋愛、あるいは人生のすべて)に直面しているはずです。

しかし、これこそが私たちを苦しめている「誤解の構造」の頻出パターンであり、毎日の職場での不満や苛立ち、ときどきは恋人とのすれ違い、衝突、お決まりの破局、ひいては「生きる」という大変な仕事そのものへの絶望や諦めへと繋がる原因にもなっているものなのです。これは論理の問題であると同時に感情の問題でもあり、このあと詳しく見ていく「主観」という第三の問題とも関わりがあります。「人間関係に苦しみ続けているのはいったい何が原因なのか」という質問を立てたとき、その答えになりうるような視点は一つではなく、筆者とは別の見解を持つ人もいくらでもいるはずですが、少なくとも本書としては「根本的な治療はここから行う必要がある」というスタンスを取ります。私たちが現実にうまく対処できないとき、多くの場合、そこには「とは限らない」に対する論理と感情の混乱、主観と客観の混同を見て取ることができます。

さきほど例に出した錯視の図形のように、錯覚というのは直感に従えば必ず間違えます。私たちは「この二つの線は全然違った長さに見えるが、定規を当てれば同じ長さだとわかる」ということを知っていて、それを見せられればすぐに「有名な錯視の図形だね」と理解できるのですが、それでも「片方が長く見える」という現象は明らかに存在したままです。これに対する対策は、錯覚が起こるたびにその事実を認識し、冷静な頭で訂正していくということのみです。

人間関係の困難の特徴は「振り回される」というところにあります。本当の課題は目の前のパズルそのものの難易度にあるのではなく、私たちがそこに「冷静な頭で取り組むことができない」という点にあるわけです。そこで、まず先に片付けておきたいのは論理の面、つまり「落ち着いて考えてみれば、実はパズル本体が特別に複雑怪奇なわけではないのだ」という事実の確認になります。それは同時に「本当に解決すべき問題は何なのか」を確認することでもあります。

 
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