60代のリアル|第19話:退院後の選択肢はあるのに、どれも選べない──母の多すぎる病気と医療的ケア、認知症の進行の中で私はどうすればいいのか?
4月24日 16時20分。
相談室に入ると、退院調整看護師の方が穏やかな声で話し始めました。
「退院後はどこで過ごされるおつもりですか?」
そのあと、少し間を置いてこう続けました。
「家に帰る場合は、施設を探さなくていいので、これで終了となりますが……いかがお考えですか?」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられました。
“家に帰る”──その選択肢が、今の私には現実的ではないことを、私は誰よりも分かっていました。
👉退院後の選択肢
看護師さんは、本を見ながら説明してくれました。
① 家に帰る
ただ、その言葉を聞いた瞬間、私は心の中で 「今の私には無理だ」 と思いました。
母の状態を見て、 そして自分一人での介護の限界を考えると、 現実的ではありませんでした。
② 施設に入る
施設にはいくつか種類があり、 それぞれ特徴も費用も大きく違うと説明されました。
有料の介護付き老人ホーム
費用は高め。手厚いが、予算との相談が必要。介護老人保健施設(老健)
期間の定めがあり、 「在宅復帰」 を目指すリハビリ中心の施設。特別養護老人ホーム(特養)
長期入所が前提の“生活の場”。
ただし人気が高く、 「早めの申し込みが必要です」と念を押されました。
看護師さんは、施設の種類について丁寧に説明してくれました。
でも、正直なところ、 説明の途中からほとんど頭に入ってきませんでした。
母の状態、 これからの生活、 自分にできること── それらが一気に押し寄せてきて、 言葉が耳をすり抜けていきました。
👉バルンカテーテルだけが問題ではない
看護師さんはこう言いました。
「バルンカテーテルが入っていると、施設によっては受け入れが難しい場合があります。」
でも、私には分かっていました。 問題はそれだけではないということを。
母は 尿路感染症 で入院しましたが、 それ以外にも、抱えている病気は山ほどあります。
高血圧
逆流性食道炎
変形性膝関節症
腰部脊柱管狭窄症
肩の痛み
骨粗鬆症
大腸憩室症
甲状腺異常
せん妄のような症状
レビー小体型認知症
子宮脱(リング交換が必要)
白内障・緑内障
そして今回の 尿路感染症(バルンカテーテル挿入)
バルンカテーテルのずれや外れを理由に受け入れを断られるなら、 3〜6ヶ月に一度の子宮脱のリング交換は、 もっと厄介な問題になるはずです。
正直、 「これではどこも無理なのでは……」 そんな思いが胸をよぎりました。
👉「家に帰る」は、やはり選べなかった
看護師さんは 「ご家族で相談して決めてくださいね」 と言いました。
でも、 実際に動けるのは私だけです。
母の病気の多さ、 医療的ケアの必要性、 認知症の進行、 そして私自身の生活。
どれを考えても、 「家に帰る」という選択肢は、今の私には選べませんでした。
ただ、 そのことを口に出すと涙がこぼれそうで、 私は静かにうなずくことしかできませんでした。
つづく
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