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60代のリアル|第32話:【実録・医療のリアル】病室でのヒミツのつまみ食いと、逆流性食道炎を気遣ってくれた看護師さんの神対応


前回までのあらすじ

他区まで視野を広げて探した4つの介護医療院。しかし、連休明けに届いた看護師さんからのメールは、どこも満床で「3ヶ月待ち」という事実上の行き止まりを告げるものでした。

病院の期限が迫る中、送った弾がすべて跳ね返されたような強い無力感と焦燥のなかに突き落とされた私。

それでも、看護師さんが見つけてくれた「系列の施設」という首の皮一枚の希望に祈りを託し、私は次なる展開を待つことになります。

そんな張り詰めた心のまま、翌5月9日、母の面会のためにいつもの病院へと向かった私を待っていたのは、予想もしなかった「病室の引っ越し」という現実でした。



5月9日(土)

前日、介護医療院の「3ヶ月待ち」という非情な現実に打ちのめされ、胸がキリキリするような焦燥感のなかにいた私。張り詰めた心のまま、母の面会のためにいつもの病院へと向かいました。

エレベーターでいつもの6階に上がり、母の病室へと足を運びます。

ところが、部屋の前に母の名前が見当たりません。

「えっ」と心臓が冷たくなるのを感じながらナースステーションへ向かいましたが、タイミング悪く誰もいません。

しばらく待つうちに数人の看護師さんが戻ってきたのが見え、すがるような思いで母の名前を告げると、「あ、8階に移りましたよ」と告げられました。



戸惑いながらも8階へと上がり、改めてナースステーションで病室を教えてもらって母の元へと向かいました。

ベッドの上の母は静かに眠っていました。看護師さんが声をかけてくれたものの、なかなか起きてくれません。

けれど、母の姿をじっと見て、私はある大きな変化に気づきました。

6階にいたときは2つも繋がれていた点滴の管が、どこにも見当たらないのです。

「少しは良くなってきたんだ」

管の消えた母の身体を見て、張り詰めていた心の枷が、少しだけ軽くなるのが分かりました。



やがて看護師さんがナースステーションに戻り、病室に私と母の二人きりになりました。チャンスだ、と思い、私は持参した小さく切ったスイカをそっと取り出しました。

まだ眠たげな母の口元へひと口、運びます。

「いらん!」

最初こそそう言って顔をしかめた母でしたが、再び口元へ持っていくと、もぐもぐと美味しそうに食べ始めます。

結局、「いらん」の言葉とは裏腹に、持ってきたスイカをすべて平らげてしまいました。

食べ終わった絶妙なタイミングで、看護師さんが「体温を測りますね」と入ってこられました。

そして私の手元を見て、「何か食べましたか?」と尋ねます。
(怒られるかな……)と一瞬身構えながらも、
正直に「スイカを食べました」と伝えると、看護師さんは怒るどころか、優しく微笑みました。

「お母様、逆流性食道炎がありますからね。食べたらベッドを少し起こしておきますね」

母の身体を気遣い、手際よくベッドを調節してくれる看護師さんの優しさが、どこか張り詰めていた病室の空気を、ふんわりと温かく包み込んでいくようでした。



どこにも繋がらないかもしれないという焦りと、看護師さんの心強いサポートへの感謝が入り混じる中で、私は祈るような思いで次の展開を待つことになります。

つづく


第33回はこちらです。↓


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