60代のリアル|第61話:【実録・介護の崖っぷち】退院調整看護師さんからの打診メール。母の命とお金を天秤にかける、どう返信すればすればいいのか?
前回までのあらすじ
有給休暇のツケが回り、鍵付きの引き継ぎボックスから取り出した書類と格闘していたオフィスでの仕事中、
転院先候補である「2つ目の介護医療院」から、母の持病である子宮脱のリング交換について、片道「2時間10分」かかる元の婦人科へ家族が連れて行ってほしいという無茶な要求が飛び込んできました。
仕事だけでも手一杯の私は、車椅子での長距離移動は危険だと判断し、病院の近くで対応できる婦人科を探してほしいと切り返します。
担当者はあっさりと「探してみます」と回答してくれたものの、これが次なる問題への引き金になるとは、この時の私はまだ知る由もなかったのです──。
6月11日(木) 退院調整看護師さんからのメール
前日の不穏な予感を抱えたまま迎えた、次の展開。 それは、いつも頼りにしている急性期病院の退院調整看護師さんからの、一本のメールでした。
私が「2つ目の介護医療院」とのやり取り(子宮脱のリング交換の件など)で頭を悩ませている間にも、看護師さんは水面下で動いてくださっていたのです。メールには、新しく3件の施設へ打診した結果が、あまりにもリアルな数字とともに綴られていました。
画面に並ぶ文字を、私は一つひとつ冷静に追っていきます。
①3つ目の介護医療院:
・通常は、まず「一般病床」で受け入れて本人の様子を見てから
「介護医療院」へ移動するシステムとのこと。
・次の転院までのワンクッションとしての利用は可能だが、一般床の間の
医療費は月「32〜33万円」とかなり高額。
・介護医療院に移れば月20万円。
看護師さんからは「ご家族が希望する料金の上限がわかれば相談も可能」とありました。
②4つ目の介護医療院:
医療費は月15〜16万円。
③5つ目の介護医療院(埼玉):
・こちらは病院が併設されていない単独の施設。
・熱が出た際などの抗生剤治療は行うが、
栄養は「経口摂取(口から食べること)のみ」の対応。
つまり、食事量が少なくなっても点滴などの延命措置はしない
という方針。
・最初は個室からスタート(月20万円前後)し、本人の状態や認知状況を
見て多床室へ移る(月16万2千円)。
そして、この③の施設から、看護師さん経由である問い合わせが来ていました。
「現在、当院(今の入院先)で使っているお薬について、効用は同じですが薬価の低い薬(後発医薬品など)へ変更してもよろしいでしょうか?」
メールの最後は、看護師さんからのこんな言葉で締めくくられていました。
『①(3つ目)については、希望する料金の上限があれば教えてください。 また、具体的な返答があったのは③(5つ目)のみとなりますが、いかがでしょうか。お返事をお待ちしております』
こちらからの返信メール
メールを読み終えた私は、すぐに返信の作成に取りかかりました。
突きつけられたリアルな数字と条件に対し、冷静な目と母を守る娘としての視点で、一文字ずつ言葉を紡いでいきます。
まず、月32〜33万円という高額な提示があった①の施設については、お断りする一択でした。
当初、私は母の預貯金や年金を踏まえ、費用面は「1ヶ月16万円以内」を希望していました。現在候補に挙がっている他の介護医療院の費用も決して安くはありません。
もし月30万円以上の負担を受け入れてしまえば、この先何ヶ月、あるいは何年続くか見通しが立たない介護生活の中で、確実にこちらの資金が底を突いてしまいます。
『大変恐縮ですが今回はお断りさせていただきたく存じます。こちらから候補の調査をお願いしておきながら、このような結果となり誠に申し訳ございません』
そう率直に、かつお詫びを添えて伝えました。
そして、もう一つ。③の施設から打診された「薬価の低い薬への変更」についてです。
お薬に関しては素人ですので、即座に「はい」とは言えません。
実は以前、自宅近くの薬局でジェネリック(後発医薬品)を勧められた際も、成分が同一とはいえ、製造過程の違いによる安全性に一抹の不安を抱いた経験がありました。
そのため当時は、必ず薬局から主治医の先生に確認を入れてもらい、許可が出た場合のみ変更するようにしていたのです。
母の身体に関わることです。今回も安易に承諾するわけにはいきません。
『大変お手数をおかけしますが、母の身体にとって安全に使用できるかどうか、一度病院(医師)側にご確認をいただいた上でご判断いただけますと幸いです』
メールを送信し、私はふぅと深く息を吐き出しました。
次々に提示される条件、施設ごとの方針、そしてシビアなお金の話。転院先を探すということは、ただ「空きベッドを待つ」ことではなく、母の命とこれからの生活のすべてを、一つひとつ選択していくことなのだと改めて痛感します。
あとは、看護師さんからの次の連絡を待つばかり。 そう思っていた私に、またしても予想外の知らせが届くことになるのです──。
つづく
※ご参考まで、実際のメール本文を記載します。
【退院調整看護師さんからのメール内容】
新規3件打診した結果をお伝え致します。
①3つ目の介護医療院…通常は先に一般床で受け入れ、本人の様子を見て
から介護医療院へ移動するそうです。
次の転院までのワンクッションとして利用可能です。
医療費は一般床だと32~33万円、介護医療院は20万円。やや高めです
が、ご家族が希望する料金の上限がわかれば相談も可能。
②4つ目の介護医療院…医療費は月15~16万円
③5つ目の介護医療院(埼玉)…こちらは単独の施設で病院は併設して
いないが、熱が出た時など抗生剤治療などを行う。
栄養は経口摂取のみの対応なので、食事量が少なくても点滴はしない
そうです。
入院は個室からスタート(月20万円前後)入院状態(認知状況)を見て
多床室へ移るようです(月16万2千円)
当院で使っている薬で、効用は同じですが薬価の低い薬へ変更できるか
問い合わせがきました。
①は希望する料金の上限があれば教えてください。
③のみ返答がありましたがいかがでしょうか。
お返事をお待ちしております。
【こちらから返信メールの内容】
① 費用面と候補先について
当初は1ヶ月16万円以内を希望しており、候補に挙げていた他の介護
医療院の費用も決して安くはありませんでした。
月30万円以上の負担となりますと、この先何ヶ月続くか見通しが立た
ないため、大変恐縮ですが今回はお断りさせていただきたく存じます。
こちらから候補の調査をお願いしておきながら、このような結果となり
誠に申し訳ございません。
③ お薬について
お薬に関しては素人のため判断が難しいので、以前自宅近くの薬局で
ジェネリックを勧められた際も、成分が同一とはいえ製造過程等の違いに
よる安全性に一抹の不安があり、必ず薬局から主治医の先生に確認を入れ
ていただき、許可が出た場合のみ変更をしておりました。
そのため、大変お手数をおかけしますが、母の身体にとって安全に使用
できるかどうか、一度病院(医師)側にご確認をいただいた上でご判断
いただけますと幸いです。
第62回はこちらです。↓
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