60代のリアル|第30話:【実録・介護の未来と心の整理】在宅介護の日常に、静かに終止符を打つ日
前回までのあらすじ
地元の特養はバルンカテーテルのため受け入れ不可。ケアマネジャーさんから告げられた非情な現実に加え、私の住む地区には「介護医療院」が1件もないという地域格差の壁が立ちはだかりました。
しかし諦めきれない私は、東京都福祉局の公式ページから通える範囲の他区にある4つの病院併設型施設を執念でピックアップ。
連休中の5月4日、AI(Geminiさん)を壁打ち相手にじっくり推敲した提案メールを退院調整看護師さんへと送信したのです。
母の安全な居場所を確保するための、長くて休まらない連休の闘いが、これでようやく一区切りを迎えたのでした。
現実的な片付け。デイサービスの備品返却とショートステイのキャンセル。
5月6日(水)、連休最終日
看護師さんへの提案メールを送り終えた私が次に向き合ったのは、母が「これまでの日常」でお世話になっていた場所への、現実的な手続きと片付けでした。
病院での厳しい見通しを聞いた以上、母がもう一度この家に戻り、以前のようにデイサービスに通うことは極めて難しい。
そして、退院後の生活の支えとして予定していた5月25日からのショートステイも、今の状態では利用することが叶わない──。その冷徹な現実を、自分の手で一つずつ形にしていく作業です。
まずは、デイサービスとショートステイのそれぞれに電話を入れました。
張り詰めていた緊張や、心のどこかにある寂しさのせいでしょうか。自分がどんな言葉で切り出したのか、細かいやり取りは今となってははっきりと覚えていません。
それでも、デイサービスには「お借りしていたズボンをお返しに伺います」と伝え、ショートステイの窓口には「5月25日からの利用をキャンセルさせてください」と、事実を淡々と伝えたことだけは記憶に残っています。
相手の方の声がいつも通り優しかったことが、救いでもあり、余計に胸に染みました。
電話を切った後、近くのスーパーへと向かいました。
これまで母を温かく支えてくださったデイサービスのスタッフの皆さんへ、どうしても感謝の気持ちを伝えたかったからです。ささやかな贈答用のお菓子を選び、購入しました。
きれいにラッピングされた品物を手に、お借りしていたズボンを持って、母が通っていたデイサービスへと向かいました。
母がいつも笑顔で迎えられ、楽しく健やかに過ごさせてもらっていた大切な場所。そこへ「返却」と「お礼の挨拶」のために足を運ぶのは、胸の奥がツンと痛むような、静かな寂しさがありました。
こうして、これまでの在宅介護の日常に、自らの手で静かに終止符を打ったゴールデンウィークの最終日。
あとは、看護師さんに託した「他区の4つの施設」からの朗報を待つばかり──そう信じていた私に、連休明け、さらなる怒涛の展開が待ち受けているとは、この時はまだ知る由もありませんでした。
つづく
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