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60代のリアル|第60話:【実録・介護の崖っぷち】有休明けの大量の仕事を格闘中、介護医療院から飛び込んできた「無理難題」をどう切り抜ければいいのか?


前回までのあらすじ

一般面会が始まる前に、病室でフライング気味に始まっていた要介護認定の面談。 私は困惑しながらも面会コーナーへと急ぎ、区役所の調査員さんに対面しました。

そこで事前に印刷しておいた母の壮絶な既往歴のデータを差し出した私。

「個人情報だから持ち帰れない」
というお役所の硬いルールに阻まれそうになりながらも、

「報告書への記載が終わったらシュレッダーで処分して構いません」
と機転を利かせて資料を託し、

母の厳しい現実をしっかりと区役所の書類に刻み込ませることに成功したのです──。



6月10日(水)

前日に要介護認定の面談のために有給休暇をいただいたツケは、きっちりと翌日の仕事に回ってきていました。

出社後、「引き継ぎボックス」を開けました。私が休んでいる間に入った書類がそこに保管されているため、それを引っ張り出して、一つずつ作業を進めていかなければなりません。

目の前にある「今日中にしなければならない業務」を最優先で片付けるだけで、もう精一杯。

実は翌日の木曜日には社用での外出が控えており、その準備も進めなければならなかったのですが、そちらには全く手が回らないほどの慌ただしさでした。

鍵付きボックスから出した書類と格闘しながら、キーボードを叩く。そんな限界ギリギリの状況のなかに、1本の電話が飛び込んできます。

それは、転院先の候補としてお話しを進めていた「2つ目の介護医療院」からの連絡でした。

用件は、母の持病である「子宮脱(しきゅうだつ)のリング交換」についてでした。

その介護医療院には婦人科が併設されていないため、病院の担当者さんはこう言ったのです。

「リングの交換時期が来たら、今まで通院していた婦人科へ、ご家族の方が付き添って連れて行っていただけませんか?」

その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に大きな警戒アラームが鳴り響きました。

この2つ目の介護医療院から今まで通っていた婦人科へは、健康な人が行っても、片道「2時間10分」はかかる場所にあります。

ただでさえ体力が落ち、尿路感染症からの回復途中にある車椅子の母を連れて、そんな長距離を移動するなんて……。一体どれほどの時間と労力がかかるのか、想像すらつきませんし、何より母の身体にとってあまりに危険です。

(仕事だけでも手一杯なのに、そんな無茶な移動まで私一人で背負いきれない……!)

私は一呼吸置き、押し潰されそうなプレッシャーを撥ね退けるように、担当者さんへこうお願いをしました。

「申し訳ありませんが、車椅子でのその距離の移動は、母の体調を考えてもかなり危険だと思われます。そちらの医療院の近くで、リング交換をしてくれそうな婦人科を、病院側で探していただくことはできないでしょうか?」

「分かりました。では、こちら(医療院)の近くでリング交換を引き受けてくれそうな婦人科があるか、探してみますね」

私の提案に対し、電話の向こうの担当者さんは、意外にもあっさりとそう回答してくれました。

「よろしくお願いいたします」
と伝えて電話を切ったあと、私は引き継ぎボックスから出した書類の山へ、再び視線を戻しました。

翌日の外出準備が全くできていない焦りはありましたが、ひとまずは無理難題を一つ押し戻せたことに、小さく安堵のため息を漏らします。

仕事の手を止めるわけにはいかない平日のオフィス。
次から次へと予期せぬ方向から飛んでくる、母の医療や介護の課題。

それでも、こうして一つひとつ機転を利かせながら、仕事と両立していくしかないのだと自分に言い聞かせていました。

病院側が近くの婦人科を探してくれる。 その言葉を信じ、この件は一旦解決したかのように思えました。

しかし──。 この「あっさりとした回答」の裏で、このあとさらなる問題が発生することになるのを、このときの私はまだ知る由もありませんでした。

つづく


第61回はこちらです。↓


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