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第2話 採用試験と救世主①(メイド✶アリサ―Wishmoreな学園日記)

前回のお話📕


 うわあ……久々に来たけど、やっぱり都会だなあ。さすが、首都アーティラス。

 木綿のワンピース姿のあたしは、今現在、これでもかってほど立ち並ぶ大きな建物を見上げながら、地図を片手に歩いている。完全なおのぼりさん状態だ。

 芸術の国を代表する都市だけあって、窓枠の飾りやら屋根の形状やら、趣向を凝らしたものばっかり。てか、すんごくカラフルだよね。
 水色に黄色にピンク……外壁が一軒一軒違う色してるし、屋根とか扉だってそう。

 上空から見たらねえ、きっと巨大な花畑だよ。これ。まあ実際街のあちこちに綺麗な花壇があって、いい香りがしてるんだけどね。

 って、なんか焼きたてのパンの匂いもする……お腹空いたあ……。もうとっくにお昼も過ぎてるけど、朝お屋敷を出てから何も食べてないもんね。

 お仕えしているお屋敷——シャロン家のある西部の田舎町から、中心部のここまで汽車で約三時間弱。汽笛の音に混じって、あたしの正直なお腹はぐーぐー鳴ってた。

 よし、腹が減っては戦はできぬ。とりあえず何かお腹に入れようっと!

 近くにあったパン屋でミートパイを買ったあたしは、大きな噴水のそばにあるベンチに腰かけた。

 ……うん、美味しい!
 サックサクだし肉汁もじゅわ~って感じ!

 新聞紙に包まれた生地にはむっと食いつきながら、学園メイドにまつわる話をふと思い出す。

 フローラ芸術学園が専属メイド制になったのは、王家に長年仕えたベテランメイドの発案らしい。

 なんでも「近頃のメイドはなっていません! この私が優秀な人材を育てましょう!」って感じで始めた事業なんだって。

 学園で数年勤めてメイド長(発案者である
ベテランメイドね)に認められれば、王城のメイドに登用されるっていう噂だ。

 お城で働くことができるってことは、王家とかそーゆー高貴な身分の方々とお近づきになれるってわけだから、当然その登竜門である学園メイドになりたいって子は多い。

 しかも、欠員が出ない限り新規採用はないっていう狭き門なの……だ・け・ど!
 今年は運良くその門が開かれたってわけ。

 ちなみに情報の仕入れ元は、商会のおっちゃんだ。陽気な笑顔が蘇る。

『お嬢様についていくって言うんじゃねぇかと思ってよ!募集人数は非公開らしいが、一応伝えとくぜぃ!』

 たとえ募集枠が1だったとしても、必ず勝ち取ってみせる…!!

 あたしはポシェットからハンカチを取り出すと口元を拭い、ベンチから立ち上がった。


* *


「ごめんね。新人メイドの採用は終わっちゃったんだよ」

「え? ……ええええっ!?」

 あたしの大声が、事務局内に響き渡った。
 室内にいた人たちが何事かとこっちに顔を向けたのがわかったけど、そんなこと構っていられない!

「受付は今日までって聞いたんですけど!」

 あたしは衝撃的な事実をお見舞いしてくれた事務員のお兄さんへと、カウンター越しに背伸びをして詰め寄った。

「そうなんだけどね、実はついさっき合格者が出ちゃって。あ、受付してすぐに、この建物内でメイド長が面接をするっていうのが試験の流れなんだけど……」

「お願いします! どうしても学園で働きたいんです! 試験だけでも受けさせてください!」

「うーん……お嬢ちゃんの気持ちはよくわかったんだけど、今回の採用は一人って決まってるしね。諦めてもらうしかないよ」

「そこをなんとか!」

「いやあ、そうは言われても……。あ、そもそも十二歳以上、かな?」

「当たり前です!」

「あ、当たり前……?」

 最低最悪な展開っ! なんとかしないと!
 だけど、ここでこれ以上騒いで追い出されでもしたら一巻の終わりだし……。

 うわああ、一体どうしたら……!

 焦るあまり、困ったように眉を寄せたお兄さんの顔がぐるぐる回り始めた。

 ああもう、本当にどうし――。


「ねえ、君。ちょっといいかな?」


 後ろからやわらかな声が降ってきた。男性の声だ。

 ええと……キミって、あたしのことだよね? 誰? あ、ここにいると邪魔とか?

 あたしは首だけで背後を振り返り――固まった。だって、だって……!

 超・絶イケメン!

 微笑みをたたえてあたしを見下ろしているのは、びっくりするくらいの美男子だった。
 深みのある紫色の瞳なんて、宝石みたいにきらっきら……!

 色白で垂れ目だから、優しそうな印象を受ける。年は十七か十八、おそらくあたしと同じくらいだろう。

 ……それにしても、育ちの良さが感じられる上品な微笑みだ。麻のシャツにジーンズっていうラフな格好なのに気品があるし、どこぞの王子様って言われても信じるね、うん。

「ん? 僕の顔に何かついてるかい?」

 彼が小さく首をかしげると、淡いピンクの髪がふわりと揺れた。空気を含ませたようにやわらかで、珍しい色……じゃなくて!

「邪魔ですよね、すみません」

 だけど、もう少しだけ時間をください! って続けようとしたら……。

「いや、そういうわけではないんだ」

「?」

「いきなりだけれど、もしよければ、僕の専属メイドになってくれないかな?」

「……へ?」



(このイケメン、一体何者!? 次回へ続く✴︎)


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《投稿スケジュール》 毎週月・金 15時頃🍪☕
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