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AIを使うとしても志望理由書は自分が「発信元」であると自覚して作成しなければならない【大学受験】

更新日:2026/08/18

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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)


「文章作成に絶対にAIを使うな」と言いたいわけではないが……

「志望理由書は自分の頭で考えて自分の手で書け!」

 こんな当たり前のことを言うことになるなんて、大学受験生の志望理由書や小論文の作成を指導することになった約30年前には考えもしませんでした。AIの一般的な使用が日常的なものとなり、最近文章作成(だけではないですが)にAIを使うことが自然になりました。その段階で、志望理由書の作成にもAIが使われるようになる未来はすぐ近くに来ていることは自覚していました。しかし、「志望理由書は自分で考えて自分で書け!」なんて、こんな当たり前のことを言わなければならない現実に対して、やはりオジサンは少し戸惑いを隠せません。

 先日、こういう記事を見ました。

 (「就活に生成AI利用」ほぼ全員に急増 エントリーシート作成…面接で内容追及され困惑も:産経新聞)

 2027年春に卒業予定の大学生らを対象に行ったアンケートで、就職活動で生成人工知能(AI)を「利用していない」とした割合は3%にとどまり、ほぼ全ての学生が就活で何らかの形で生成AIを活用している実態が、人事分野の調査研究機関HR総研(東京都千代田区)などの調査で分かった。

『「就活に生成AI利用」ほぼ全員に急増 エントリーシート作成…面接で内容追及され困惑も』産経新聞

 つまり、97%、ほぼ全ての2027年卒業予定の大学生が、就職活動で使うエントリーシートの作成に何らかのかたちでAIを使っているというわけです。この記事を見たとき、もちろんこれは就活でのお話ですが、今後、大学受験のエントリーシートや志望理由書作成に何らかのかたちでAIが使われることも多くなるのだろうなと思ったわけです。これだけAIの使用が普及しているのであれば。それは当然のことでしょう。

 これに対して、私は「文章作成に絶対にAIを使うな」と言いたいのではありません。それは、「表作成に『パソコン』を使うな」、「計算に『電子計算機』を使うな」、「料理に『電子レンジ』を使うな」と言っていることに等しいです。一般的に普及した「文明の利器」があるのならそれを使わない手はありません。「文明の利器を使うのは怠惰だ。だから使うな」というのであれば、それは「人類の進歩」でも何でもありません。それはただの懐古主義でしかありません。第170回芥川賞を受賞した九段理江さんは自身の作品の約5%にAIの文章が使用されていると発言しています。そんなプロの文章家がAIを使う時代ですから、文章作成にAIを使うこと自体を否定するものではありません。文章作成で大いに使ってよいのです。

 しかし、上掲の記事でも言っている通り、その使用によって「支障」が出ているのであれば、それを看過することはできません。

 ただ、面接官から深く追及された際、どこまで対応できたかをたずねた質問では、「半分程度」が18%に上った。質問に対し「ほとんど」「すべて」回答できなかったとする回答も数%あり、計2割が回答に窮していた。

『「就活に生成AI利用」ほぼ全員に急増 エントリーシート作成…面接で内容追及され困惑も』産経新聞

 私が問題としたいのはここです。これは以前から申し上げていることですが、エントリーシートや志望理由書は「作って終わり」ではないのではないのです。提出したエントリーシートや志望理由書は提出先(就職希望先の企業や志望先の大学・学校)において面接の資料として用いられます。その提出されたエントリーシートや志望理由書をもとにして面接官から質問がなされます。しかし、そのときエントリーシートや志望理由書の作成にAIを使用したことによって、その質問に適切に対応できなかったとしたら、そのAIの使用は適切ではなかったと結論付けせざるをえません。そもそも就職希望先や志望先に受かるために行っているAIの利用がそれに支障をきたすようでは、何のためにAIを使ったのかという話にもなります。ですから、これも以前から申し上げていることですが、後々の面接試験のことも考えながら、志望理由書は自分の頭と手で考えて書くのが理想だと言えます。

(志望理由書作成はAIに丸投げしてはいけない)

(面接試験対策の一環として志望理由書を作成する)

現実的にエントリーシートや志望理由書の作成にAIを使うには?

 ここまでは今まで拙記事で言ってきたことなのですが、この昨今のAI使用の普及を見るとただ「面接試験のことも考えて志望理由書作成にAIを使うな」と言い続けるのはやや「理想論」が過ぎると言えなくもないと、今回上掲の記事を見て考えました。もう、そういうことだけ言うにとどめる次元はとうに過ぎている、と言えます。これだけAIの日常使いが定着化している中で「志望理由書の作成だけにはAIは絶対に使うな」と言うのはそうした現実から乖離していると言えます。ちなみにこの前に挙げた私の拙記事は2024・2025年に書いたものですが、AIを取り巻く状況はもうそのときの状況から変わっていると言えます。そこで、ここでは「AIを使う」ことを前提にエントリーシートや志望理由書の作成について考え直してみます。

 文科省は2024年に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」をまとめています。

 ここではその概要についてだけアップしますが、ここで「2.基本的な考え方」として以下の内容が示されています。

生成AIを有用な道具になり得るものと捉え、出力を参考の一つとして、リスクや懸念を踏まえた上で、最後は人間が判断し、責任を持つことが重要

『初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)【概要】』

 ここでのポイントは「最後は人間が判断し、責任を持つことが重要」にあると思います。AIで出力されたものを参考として使うにしても最後は人間自身が判断するという点です。たとえば、AIにいったん志望理由書にひな形を作らせることで志望理由書の全体像やあるべき内容をざっくりとらえるというのはいいのかもしれません。また、自分が書いた志望理由書をAIに添削させるのもいいかもしれません。しかし、その出力されたものをノールックで自分の志望理由書として採用してしまうのは、前述の面接試験との兼ね合いもあってまずいわけです。その出力されたものの内容を下地にして、では自分ならどのような内容を志望理由書としてまとめるのかを考えることはよいかと思います。

 また、その志望理由書の内容の根拠として用いられている志望先の大学・学校の情報についてもそれが本当に正しいものであるかどうか、自身で責任を持って「リスクや懸念を踏まえて」しっかり調べて判断することも大切でしょう。これも以前拙記事でお話ししたことですが、試しにAIに志望理由書を書かせたところ、そこで用いられている大学情報がその志望先の大学ではなく別の大学のものだったということがありました(これはAIによくあるハルシネーション―誤情報生成です)。AIは「わかりません」とは決して言いません。膨大なデータベースの中から「それらしい情報」を引き出して「それらしい内容」として仕立ててきます。ですから、それを鵜呑みにするのではなく、本当にその情報が正しいのかどうかをしっかり裏付けをとらないと、「うその情報」をもとにして書いている可能性もあります。したがって、それに関しては、作成者・発信者である自分が責任を持って判断するようにしてください。

 結局、大切なことは志望理由書の作成について主導権を人間側がしっかり握るということです。AIに作らせて終わりとするのではなく、こちらがイニシアティブをとってAIを使役しているということを忘れずにAIを活用していくとよいでしょう。そのエントリーシートや志望理由書で就活や受験するのは当の人間(自分)の方です。AIにそれらを作らせたとしても、AIはそれについて何の責任もとってくれません。当たり前のことですが、自分のことである以上自分が責任を持ってエントリーシートや志望理由書を作成してください。それが基本姿勢としてあれば、AIを使うのも就活や受験の有用な戦術の一つとして働くでしょう。

今後の「大学受験とAIの関係」

 ……とこのように考えてみたわけですが、今後の「大学受験とAIの関係」については私は少し楽観視しています。というのは、前述した通り、文科省でも次世代のAIに対する教育について着々と取り組みを始めています。今、このように問題となっているかもしれませんが、いずれ教育現場でもAIの利活用についての方針が定まっていくでしょう。そうすれば、今問題となっているように「エントリーシートをAIに作らせたために就活面接で答えられなかった」という事例は徐々になくなっていくはずです(文科省の施策通りに教育現場が実際に変わっていけばの話ですが)。今の就活生や大学受験生は学校で系統だったAI教育を受けていない子たちですが、いずれ「生まれた頃からAIがあった」というAIネイティブの子たちが小学校に進学してきます。その頃には、「AIを使って学ぶ」のが学校でも当たり前の日常になっていることでしょう。そのときには、ここで私が話していることなんかはもう学校で当たり前のこととして学ぶようになっているはずです。いつの時代も新しいテクノロジーが日常化する段階では社会の中で摩擦が起きるものです。今はそうした段階だと私は思っています。

 また、これはさんぽうのミチカルさんの記事で最初に知ったことですが、AI使用を受験で認める大学もいくつか出てきています。

(近畿大学情報学部が総合型選抜での生成AI利用方針を明示 自己PRやプレゼンテーション準備に生成AIの活用を認める)

(ミチカルさんの当該記事。こちらでは上記の近畿大学情報学部以外の大学についてもふれています)

 もちろん、大学によってAIの利用については「おおむね認めているところ」、「条件付きで認めているところ」、「認めていないところ」がありますので、それは各大学の入試要項でしっかり確認する必要がありますが、こうした大学も出て来ていますから「大学受験におけるAI活用のあり方」もまた徐々に変化していくことが考えられます。「AIの活用を前提とした選抜方法」も増えてくるかもしれません。

 ですが、いずれの時代においても、エントリーシートや志望理由書は「自分が『発信元』であるという自覚がなければならない」と思います。就活でも受験でも、それは自分の将来についてのことのはずです。自分が責任をもって自身で判断しましょう。AIを活用するにしても、その延長線上にエントリーシートや志望理由書の作成はあるはずです。

(引用には以下のサイトにお世話になりました)

産経ニュース(産経新聞)

文部科学省

@Press


(AIが前提の教室で教育も受験も変わっていきます。もちろんその中で変わらないことも……)


「志望理由書作成のことについての記事を、効率よく探して読みたい」という方には、こちらのサイトマップがおすすめです。


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