偽憎代稿(十二)
前話↓
「……まさか、ソッチから来てくれるなんてな」
正直、助かったという思いの方が強い。あの小説投稿サイトの情報だけじゃ、手詰まりだったから。
ツイッターを開いて、「ヒロシ」のプロフィール画面に飛ぶ。アイコンは未設定の人型マーク。フォロー数もフォロワー数もゼロ。よくあるただの「捨てアカ」のように見える。
しかし、ただの捨てアカなんかじゃない――プロフィール欄には、ただ一言。
酷い目に遭わせてほしい
ブレないね。
口角が上がるのが分かる。
俺はそのまま、「ヒロシ」の投稿に目を向ける。自発的に何かを発信する、ということはなく、全てWEB小説家への返信だった。田中彼方、宵谷、鳥河烏……とさっき読んだ小説の作者の名前も何度か見かける。
そして「ヒロシ」は彼ら彼女らのいずれもフォローすることなく、ただひたすらに、「ありがとうございました」と言い続けている。
ここも全く変わらないな、と思いながら、どんどんスクロールして遡っていく。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月……こんなに感謝をし続けながら小説を蒐集するなんて、やっぱり異様な執念だよな。まあ、ネトストもどきをしている俺も、大体似たようなもんか――
そう思った時だった。
田中彼方への「ヒロシ」の返信を見た瞬間、手が止まった。
「ありがとうございます」とだけ書かれたリプライに、「@elme_gourmet」という誰かのユーザー名も返信先として指定されていた。
いわゆる、巻き込みリプというヤツだ。
つまりこれは、「ヒロシを傷つける小説が届いたこと」を、「ヒロシ」がわざと誰かに共有していることに他ならない。
しかし、当のユーザーはアカウントが削除されている。既に消されてから30日以上が経っていて、復元すら難しいだろう。従って、元が誰なのかはこのままじゃ分からない。
それでも、俺は直感した。
このユーザー――もしかして、「ゆる」なんじゃないか?
つづく
