「Solaria 2nd Stage 第二話|ぎこちない光」

「Solaria 2nd Stage 番外編|はじまりの音」
「Solaria 2nd Stage 第一話|星降る約束」
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「第二話 | ぎこちない光」
冬の空は、どこまでも澄んでいた。
クリスマスコンサートが終わってから、数日。
星ヶ丘学園の中で、ある名前が静かに広がっていた。
「Solaria、すごかったよね」
「アンコールの曲、めっちゃ好きなんだけど」
「またやってほしいな」
廊下ですれ違うたびに聞こえてくるその名前に、
さくらは少しだけ視線を落とした。
(なんか……不思議)
嬉しいはずなのに。
胸の奥が、少しだけ落ち着かない。
■ 見られる側
ダンス室に、音楽が流れる。
「5、6、7、8——!」
ひなたの声で動き出す。
でも——
合わない。
足がずれる。
タイミングが揃わない。
視線が交わらない。
「ストップ」
あかりが短く言う。
「……ズレてる」
誰も反論できなかった。

そのとき——
ドアの向こうに、視線を感じる。
ガラス越しに、数人の生徒。
中には、チアリーディング部の姿もあった。
表情は、読めない。
(見られてる……)
さくらの動きが、ほんの少し遅れる。
「もう一回いくよ!」
ひなたの声は、いつも通り明るい。
でも、その明るさだけが
少し浮いているように感じた。
■ 未完成のままの光
音楽を止める。
「これでアンコールやったんだよね、私たち」
あかりが苦笑する。
「……よくやったよね」
ゆいが、柔らかく続ける。
「心の羅針盤」
出来たばかりの曲。
楽しい。
明るい。
でも——
未完成。

「振り、最初から作り直そう」
ひなたが言った。
迷いはなかった。
「全部?」
さくらが目を丸くする。
「うん」
ひなたは、少しだけ笑う。
「せっかくならさ、もっと楽しくしたい」
その言葉に、
ほんの少しだけ、空気が軽くなる。
■ 冬の反復
冬休みに入っても、練習は続いた。
人気のない校舎。
冷たい空気。
夕焼けに染まる窓。
「そこ遅い!」
「え、今合ってたって!」
「いや絶対ズレてる!」
ぶつかる声。
でも——
やめない。
何度も繰り返す。
ズレて、止まって、笑って、
またやり直す。
そして——
ある瞬間。
ぴたりと、音と動きが重なった。
一瞬の静寂。
「……今の!」
誰かが笑う。
その笑いが、全員に広がる。
ほんの一瞬。
でも確かに、“何か”が揃った。
■ 年の終わり
その日の帰り道。

「ねえ、今日泊まりに行っていい?」
あかりが言う。
「え、ほんとに?」
ひなたが笑う。
「初詣もあるし」
そんな軽い流れで、
二人は同じ部屋にいた。
■ 夜
風呂上がり。
髪を乾かす音が止む。
ベッドに並んで座る。
静かな時間。
「……ところで、ひなた」
その呼び方に、
ひなたが少しだけ驚いた顔をする。
(ひなた、って初めて呼ばれた?)
「なに?」
あかりは少しだけ視線を逸らして、
「好きな人、いるの?」
「え?」
あまりにも唐突で、
ひなたは一瞬固まる。
「えっと……」
少し考えてから、笑った。
「特にいないかな」
「そうなんだ」
「だってさ、うちら2年って女子だけじゃん?」
天井を見上げる。

「さくらの学年から共学って、ずるいよね」
「いいなぁって思うもん」
あかりは、少しだけ笑った。
「……私はいるけど」
「え!?」
「大切な人」
少しだけ間を置いて、
「スペインに置いてきたけどね」
「え、なにそれ!?彼氏!?」
「どうかな」
それ以上は、語らない。
ほんの一瞬、遠くを見る目をしていた。
■ 同じ方向
少しの沈黙。
「私もさ」
ひなたが、ぽつりと言う。
「好きな人できるといいけど」
少しだけ笑って——
「今は、Solariaかな」
「前に進めたい」
あかりは、何も言わなかった。
ただ、少しだけ微笑んだ。
■ 年越し
部屋の電気を消す。
暗闇の中。
「……あ、もうすぐじゃない?」
ひなたがスマホを見る。
23:59
外が、少しだけざわついている。
「3……2……1……」
——0:00

遠くで、花火の音。
二人同時に——
「あけましておめでとう」
小さな声。
でも、確かに重なった。
■ 繋がり
「送っとこ」
ひなたがスマホを開く。
「あけましておめでとう!」
送信。
すぐに、返ってくる。
しおり「早いわね。おめでとう」
ゆい「今年もよろしくね——」
さくら「おめでとうございます!今年も頑張ろうね!」
思わず、笑う。
「ちゃんと起きてるんだ」
画面の光が、少しだけ部屋を照らす。
■ 静かな誓い
外では、まだ花火の音が続いている。
「ねえ」
ひなたが言う。
「もしさ、Solariaがすごくなったらさ」
「……うん?」
「どこまで行けると思う?」
少しの間。
「……どこでも」
あかりが答える。
「行けるよ」
静かな声。
でも、揺るがない。
「……そっか」
ひなたが、小さく笑う。
「じゃあ、行こっか」
返事はない。
でも
二人の呼吸は、同じリズムになっていた。
外の音が、少しずつ遠ざかる。
新しい年が、静かに始まっていた。
第二話 ぎこちない光 (終)
▶ Solaria 2nd Stage 第三話|
― はじまりの朝 ― へ続く
