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脚で押すより、心で動かす〜動かなかった馬と、諦めなかった娘の話


最初に乗ったとき、まったく動きませんでした。
娘が、うちの自馬に初めて乗った日のことです。

脚を使っても。蹴っても。一歩も動かない。

結局その日、馬は最後まで動かず、娘は泣きました。

私は馬場の外から見ていました。

正直に言うと、心の中でこう思っていました。

「あーあ、どうしよう。」

せっかく買った自馬なのに、パートナーとして大丈夫かな、と。

でも同時に、こうも思っていました。

自馬と初めからぴったりなんて、ほとんどない。まずは見守ろう。

ただ一つだけ心配だったのは、
娘が途中で嫌になって諦めてしまうことでした。

そうなったら、まあ、私が乗ろう。
そう決めて、黙って見ていました。

次の壁は、爆走でした。

動かなかった馬が、今度は止まらない。

ヨーロッパ系の力のある馬です。
娘の手綱では抑えきれず、馬場を爆走していました。

私も同じ馬に乗っていたので、
そのパワーはわかっていました。

だから余計に怖かった。

「危ない」と「頑張れ」が、
同時に胸の中にありました。

止めたくても、止められない。
ただ見ているしかない。

それでも娘は続けました。

動かなかったり、爆走したり、跳ねたり、暴れたり
そんな自馬とずっと向き合い続けました。

そして1年後。

120cmの障害コースを、一緒に走っていました。

ジュニア選手権の資格を取得して、
試合にも出場しました。

変わったのは何だったのか。

技術が上がったのは間違いありません。
でもそれだけじゃなかったと、
今は思っています。

娘が馬を信頼し始めた。
馬が娘を信頼し始めた。

その積み重ねが、
動かなかった馬を、
一緒に120cmを回れる馬に変えていきました。

いや、正確には馬が変わったのではないかもしれません。

関係性が、変わったのだと思います。

脚の強さで動かそうとしていた頃、
馬は動きませんでした。

関係を積み上げていくうちに、
馬は自分から前に出るようになりました。

推進って、脚で押すことじゃないんだな。

40年向き合ってきて、
娘と馬に改めて教えてもらった気がしています。

うまくいかない時期は、
答えを急がなくていいのかもしれません。

見守ること、続けること、信頼を少しずつ重ねること。

それが、馬との関係を動かしていくのだと、
私は信じています。

馬との関係で気づいたことは、
人との関係にも静かに重なります。

馬との関係で気づいたことは、人との関係にも静かに重なります。

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