【公務員向け】公務員AI転換記②——デスクでそのまま使える型と、AI3体の使い分け【プロンプト全公開】
▶ 本記事は3部作の②です。①「IT資格持ちでも挫折した私が、本気で向き合わざるを得なかった理由」はこちらです。
はじめに:「型」を知れば、AIは急に賢くなる
前回(①)では、私のAI活用が始まった「起点」——セキュリティ試験の学習と、職場の「残業禁止・30分以内」命令——を正直に書きました。
今回は、実際に私が使っているプロンプト(AIへの指示文)を3つ、まるごと公開します。
「難しそう」と思われた方、安心してください。コードのような記号は一切使いません。自然な日本語で、部下に仕事を頼む感覚で書くだけです。それだけで、AIの出力精度は劇的に変わります。
さらに後半では、今や主流となっているGemini・ChatGPT・Claudeの「性格の違い」と、30分で上司に通る資料を作る「5ステップのワークフロー」、そしてAIを使う上で絶対に押さえるべき「セキュリティの一手間」まで、一気に解説します。
3.【STAGE 1】明日から使える3つの実務プロンプト
3-1.「魔法のプロンプト」を探さなくていい
インターネットで「最強のプロンプト集」を探し回っている方をよく見かけます。しかし、それらは状況が少し変わっただけで機能しなくなるテンプレートに過ぎません。
再現性を担保するために覚えるべきは、文字面ではなく「指示を出すマインドセット」です。
AIにテキストを入力するとき、常にこう想像してください。
「目の前に、優秀だけどうちの職場の事情を知らない新人部下が座っている」
「これ、適当にまとめといて」とだけ言って資料を渡された部下は、困惑してフリーズするか、見当違いの成果物を持ってきます。それは部下の能力が低いのではなく、指示が悪いのです。AIもまったく同じです。
優秀な部下が迷わず動けるよう、以下の4要素を意識して日本語で語りかけてください。
背景(Context):どんな立場で、どんな状況の仕事を頼みたいか
入力(Input):処理の対象として使ってほしいテキストやメモ
命令(Instruction):具体的に何をしてほしいか(要約・執筆・作成など)
出力指示(Output Indicator):トーン、文字数、形式(箇条書き・表など)
これだけです。機械的な記号は不要です。自然な日本語で書くだけで、AIの出力精度は劇的に変わります。
これはAIを使う能力というよりも、マネジメントの世界の話でもあると思います。欲しいアウトプットのためにどれだけ情報を与えて、どういう指示を出すか——業務の能力がそのままAI活用に活きるのです。(生意気)
3-2.そのままコピペして使える3大プロンプト
では、明日のデスクでそのまま使えるプロンプトを3つ公開します。
① メール作成の代筆
「お礼メールの文章を考えていたら30分経っていた」という経験はありませんか。このフローを使えば、箇条書きのメモを貼るだけで完成します。
私は市役所○○課の職員です。
以下の【事実メモ】をもとに、○○の相手方に送信するための、
礼儀正しく洗練されたビジネスメールの文面を作成してください。
#制約条件:
・トーン:丁寧で誠実なビジネス調
・構成:件名、宛名、挨拶、本文、結びの言葉
・文字数:300〜400文字程度
#事実メモ:
・(例:昨日の懇親会への参加に感謝)
・(例:インボイス制度の運用に関する話が参考になった)
・(例:来月、担当税理士を交えた打ち合わせをしたい)
#出力文:このプロンプトをGeminiやChatGPTに貼るだけで、そのまま送れるメール文面が出力されます。最後に必ず人間が確認してから送信してください。
意外な利点として、クレーム対応が厳しい相手へのメールも、感情的なメモを貼り付けるだけで、ビジネス的に洗練された文面に変換してくれます。(これだけで相当な精神的コストを削減できました)
② Excel管理表の項目設計
新しい管理表を一から設計しようとして後から項目の手戻りが出た、という経験はないでしょうか。AIに「データ設計士」を担わせましょう。
私は市役所○○課の職員です。
新しくExcelで【作成したい目的】のための管理表を作成します。
後から手戻りがないよう、設計すべき項目を10個提案し、
それぞれの項目を持たせる理由を添えて、表形式で出力してください。
#作成したい目的:
(例:介護サービス事業所向けの営業進捗とコンタクト予定を管理するリスト)
#出力形式:
| No | 項目名 | 収集する目的・実務上のメリット |関数がわからないときも「A列に〜があり、B列に〜があります。〇〇という処理をしたい」と日本語で書くだけで、エラーのない数式と貼り付け手順が返ってきます。
③ 会議メモから議事録への整形
打ち合わせ中に書き殴ったメモを、報告できる形に整えるのは地味に時間がかかる作業です。これを丸投げします。
私は○○市○○課の職員です。
以下の【雑多な会議メモ】を読み込み、
上司や関係者へ提出・報告できる「構造化」された
「正式な議事録」に整形してください。
#出力構成:
・会議の主要テーマ(一言で記述)
・決定事項(箇条書き)
・次回までの宿題・タスク(「誰が」「何を」「いつまでに」)
・主要な議論・発言の要約
#雑多な会議メモ:
(ここに書き殴ったメモをそのまま貼る)手作業なら1時間かかる「文章の再構成」が、数十秒で終わります。
4.【STAGE 2】3大AIの「性格」を見極めて使い分ける
4-1.AIにも性格がある
プロンプトの出し方を覚えたら、次のステップは「ツールの使い分け」です。
現在広く使われている3大生成AI(Gemini、ChatGPT、Claude)は、裏側の仕組みが異なるため、出力のトーンやアプローチに「人間の性格」のような明確な違いがあります。
Gemini
応援してくれるコーチ
アイデア出し
企画の壁打ち
最新情報の検索
ChatGPT
冷静な優等生
事務処理
要約
VBAコードの正確な生成|
Claude
緻密で誠実な職人
長文執筆
法令・規程の厳密なチェック
精緻な翻訳
私自身は、日々の業務や研修企画を練る際、Geminiの前向きな反応とスピーディーなアイデアが感性にフィットするため、メインの相棒として常駐させています。
4-2.同じ質問を3つのAIに投げたら、こうなった
同じプロンプト——「地域を盛り上げるための斬新なイベント企画のアイデアを出して」——を3つに投げた場合の違いを紹介します。
Gemini:「街ごとタイムスリップ!リアルRPGフェスティバル」「空飛ぶディナー:熱気球ダイニング」など、最新トレンドを意識したクリエイティブな企画を熱量高く提案。
ChatGPT:「夜間商店街のスタンプラリー」「24時間限定ポップアップ物産展」など、予算規模や法規制の範囲内で実行可能な堅実な企画リストを構造化して出力。
Claude:「廃材を再生するエコアート&ファッションショー」「歴史的建造物での光の庭園フェスティバル」など、地域固有の文化的背景に配慮した、情緒的で洗練された企画案を美しい日本語で提示。
「今は斬新なアイデアが欲しいからGeminiで壁打ちしよう」「契約書のチェックは一文字も狂えないからClaudeに通そう」——この選択ができるだけで、成果物の質は大きく変わります。
5.【STAGE 3】「仮想上司AI」との壁打ちで資料を一発通過させる
5-1.点から線へ——プロセス全体を変える
AI初心者の方がまず活用できるポイントは、「メールを1通作らせる」「関数を1つ調べる」という単発の活用だと思います。
中級者になると、複数の作業をつなぎ合わせた「プロセス(線)」の中にAIを組み込みます。いわゆる「プロセス自動化」の発想です。
人間が長時間費やしていた「資料作成」というプロセスを、AIとのやりとりによって数分で完結させるワークフローを構築するのです。
5-2.30分で上司に通る資料を作る「5ステップ」
具体的な場面で解説します。上司から突然「インボイス制度の重要ポイントを、30分で説明資料の骨子にまとめてくれ」と言われた場面です。
STEP 1:一次資料をAIに読み込ませる
国税庁のウェブサイトなどからダウンロードしたインボイス制度の解説リーフレット(テキスト)を手元に用意します。
ここでただ「要約して」と入力するだけでは、一般的な回答しか返ってきません。そこで1つ小技を入れていきます。
プロンプトの背景設定に、「実在の上司の特徴」をそのまま埋め込むのです。対象が明確になり、AIが目的にあった成果物を推測しやすくなります。
あなたは、私の職場の上司である〇〇課長になりきってください。
〇〇課長の特徴:
・結論ファーストを好む
・具体的な数字や実務上のリスク(根拠)に対して厳しい
・言葉の定義が曖昧だとすぐに質問を挟む
・実は国税関係の知識に苦手意識を持っている
今から、インボイス制度についての国税庁の資料テキストを入力します。
〇〇課長の不安を解消するために、以下のポイントを教えてください。
・制度全般
・令和8年度の経過措置の切り替え
・納税額への影響
・講師派遣業特有の影響
・その他、経理担当者が抑えるべき内容
専門用語を避けてまとめるように意識してください。
また、資料以外のことを補記する場合は、ソースを明確にしてください。
【資料テキスト】:
(国税庁の資料などを貼り付ける)このプロンプトを実行すると、画面上に目的に近い要約資料が作成されます。
STEP 2:壁打ちして理解を深める
作成された要約をもとに、実際の資料を作るにあたり、AIと壁打ちしてみます。内容が難しい場合は以下のようなプロンプトが使えます。
・難しいので高校生(中学生)にも分かるように説明してください。
・【「消費税の1円未満の端数処理は「1つのインボイスにつき、税率ごとに1回」】
とはどういう意味ですか。
・以下の点が分かりにくいので、分かりやすく説明してください。
インボイスがないと、どうして納税額が増えますか
免税事業者の講師とはどういう意味ですか
講師の方に登録を依頼するとはどういうことですか、また、講師の影響は。
・この要約を課長にみせた時に、どんな反応をされると思いますか。STEP 3:スライド構成案に変換する
方向性が固まったら、同じチャット画面で続けて指示します。
「これまでの対話内容をベースに、説明資料用パワポのスライド構成案(6〜7枚程度)に変換してください。各スライドのタイトルと箇条書きのテキストを示し、従来の制度との比較はマトリックス(表形式)を活用してください」
資料の骨格(テキストデータ)が瞬時に生成されます。GeminiのCanvas機能を使うと、Googleスライドとして直接出力してくれます。
STEP 4:AIに自分の出力を「採点させる」
ここが中級者ステージの最も重要なポイントです。出てきた構成案を人間が唸りながら修正してはいけません。修正の思考すらも、AI自身にやらせます。
出力したスライドの内容を評価してください。
具体的な基準として、正確性、網羅性、明確性、簡潔性、
関連性、倫理性、効率性、有効性の観点で各10点満点で評価してください。
また、改善案を示してください。AIは「正確性は9点ですが、簡潔性が7点です。3枚目の文字数が多すぎます」などと自ら批評し、そのまま「すべてが10点満点になった完璧な構成案」を吐き出します。
STEP 5:VBAでスライドを1秒で自動生成する
先ほどの構成案を実際のPowerPointに落とし込みます。ここで登場するのが「VBAコード自動生成」です。プログラミングの知識は一切不要です。
「先ほどのスライド構成案の内容をもとに、PowerPointでスライドを自動新規作成するVBA(マクロ)のコードを作成してください」
AIが即座にコードを出力します。あとは:
AIが出力したコードをコピー(10秒)
空のPowerPointを新規で開く(5秒)
`Alt+F11`でVBA入力画面を開く(2秒)
「挿入」→「標準モジュール」を選び、コードを`Ctrl+V`で貼り付け(5秒)
緑色の実行ボタンをクリック(1秒)
これだけです。ボタンを押したその瞬間、10枚・20枚のスライドの「タイトル」「箇条書き」「枠組み」が、まるで魔法のように自動で構築されます。PowerPointが入っていてVBAが実行できれば、どの組織のパソコンでも再現できます。
6.【STAGE 4】「守りのIT」を徹底する——AI監査役とハルシネーション対策
6-1.実行ボタンを押す前に、必ずこのプロンプトを通す
自動化のスピードを手に入れた後に絶対に通らなければならない関門が「セキュリティ」です。
AIが生成したコードを中身を検証せずに実行する人間は、組織にとって「いつか重大なインシデントを起こすリスク」になります。
私はあらかじめ「AI監査役プロンプト」を使っています。
あなたは、コードの安全性と挙動を瞬時に見抜く、ベテランのシステム監査人です。
プログラミング未経験者のために、以下の区切り線「---」の間に貼り付けられた
VBAコードを分析し、必ず3行で要約して報告してください。
専門用語は避け、平易な言葉を使ってください。
特に、以下の要素が含まれていないか厳重にチェックしてください。
・破壊的操作: Kill, Delete(ファイルの削除)
・外部通信: http, ftp, telnet, Socket(データの外部送信)
・OS操作: Shell, Run(Windowsの深部へのアクセス)
【報告のルール(厳守)】
1行目:【安全性判定】 危険な操作が含まれているか「安全です」「危険な可能性あり」で判定
2行目:【動作の要約】 実行すると具体的に何が起こるかを簡潔に説明
3行目:【監査人からのアドバイス】 初心者がこのまま実行しても大丈夫かアドバイス
---
(ここに、チェックしたいVBAコードを貼り付けてください)
---AIにコードを書かせたら、まずこの「監査役チャット」に通す。「安全です」の出力が出てから、初めて実行ボタンをクリックする。この一手間が、技術的な知識に自信がなくても「組織のセキュリティを守れるDXリーダー」になるための最短経路です。
6-2.AIは「もっともらしい嘘」をつく
生成AIを使う上で忘れてはならない冷徹な事実があります。
AIは、すべてをGoogle検索して表示しているわけではありません。膨大な言語データをもとに「確率的に最もそれらしい次の言葉」を繋いで文章を作る、いわば「確率ロボット」です。
どれほど自信満々なトーンで出力されても、そこには「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」が混入します。
数字・法令・固有名詞のアウトプットは、一次資料で確認することが「必須」です。
AIが「〇〇法の規定では上限は20万円です」と出力しても、その数字をそのまま起案書に書いてはいけません。重要な数字・根拠・法令は、必ず公式の一次資料で自分の手でファクトチェックしてください。
この「最後に人間が確認する責任感」こそが、AIに仕事を奪われない人間の真の価値です。
6-3.個人情報にも注意が必要
AIへの入力情報はAIにデータを渡してしまいますし、環境によっては学習に使われてしまうということにも注意が必要です。
個人情報のマスキングは「必須」です。
AIにデータを読み込ませる際、住民や顧客の本名・住所・識別番号は絶対に入力しません。貼り付け前に「A氏」「●●市」「***番地」に置き換えるマスキングをルーティンにしてください。
まとめ:「型」と「道具」と「守り」の3点セット
第②話では、実務に直結する3つのテーマを一気に解説しました。
型(プロンプトのマインドセット):部下に仕事を頼む感覚で4要素を伝える
道具の使い分け:Gemini・ChatGPT・Claudeの性格を把握して最適に選ぶ
守りの一手間:監査役プロンプトとハルシネーション対策を習慣にする
「使いこなせそうな気がしてきた」と感じていただけたら、次の記事へどうぞ。③では、私が実際に歩んだ資格取得と仲間づくりの道のり、そして「100時間の余力」の使い道まで書きます。
▶ ③「資格トリプル合格・ゼミ立ち上げ、そして年間100時間の余力へ」は、こちらです。
この記事は、著者の実務経験と個人的なリスキリングの記録をもとに執筆しています。プロンプトや手法は各組織のセキュリティポリシーに従った上でご活用ください。
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