【公務員向け】公務員AI転換記③——資格トリプル合格・ゼミ立ち上げ、そして年間100時間の余力へ
▶ 本記事は3部作の③(最終話)です。
①「IT資格持ちでも挫折した私が、本気で向き合わざるを得なかった理由」
②「デスクでそのまま使える型と、AI3体の使い分け【プロンプト全公開】」
はじめに:スキルは「使う」だけでは定着しない
前回(②)では、明日のデスクで使えるプロンプトとワークフローを、具体的に公開しました。
しかし、道具を手に入れても、使いこなせるようになるには「知識の定着」が必要です。
私がAI活用を本当の意味で自分のものにできたのは、プロンプトを試し続けただけではありませんでした。「体系的に学ぶこと」「仲間とアウトプットすること」——この2つが揃って、初めてスキルが血肉になったのです。
最終話の今回は、私が歩んだ資格取得と仲間づくりの道のりを正直に書きます。そして最後に、「制限だらけの現場にいる人こそ、AIスキルが武器になる」という逆説についても、具体例とともに解説します。
7.資格のトリプル合格——駆け抜けた道のり
7-1.リアルなタイムライン
日々の実務応用を続ける中で、「自分の知識が独学の偏ったものになっていないか」「AIを活用する根拠を持ちたい」という課題意識が強くなりました。
そこで短期間での体系的な知識習得のために、資格取得を自分に課しました。
2024年10月 :情報処理安全確保支援士試験を受験
↓ セキュリティ学習でAIリスクへの関心が高まる
2024年10月〜:AIリスキリング開始、体系的なインプット学習に着手
↓(約2ヶ月の勉強)
2024年12月 :情報処理安全確保支援士 合格発表
「Generative AI Test」受験 → 合格
↓(理論と数理・倫理のインプットをさらに深化)
2025年2月 :「生成AIパスポート」および「G検定」を同月に連続受験
↓
2025年3月 :両試験の合格発表 → AI資格トリプル合格を達成この約5ヶ月間が、私のAIリテラシーのOSを最新のものへと更新した決定的な期間でした。
7-2.G検定の知識が、他の資格をドミノ倒しにした
驚かれるかもしれませんが、2024年12月の「Generative AI Test」を受験した際、私は専用のテキストを一切買いませんでした。
G検定の問題集を徹底的に解き進める中で、AIの歴史・ディープラーニングの基礎概念・ニューラルネットワークの仕組みといった「AIの普遍的な基礎知識」が、すでに頭の中に確固たる土台として完成していたからです。
G検定の知識を学ぶことが、他の試験をドミノ倒しのように合格させる足場になったのです。
AI関連資格を取得することで、AIを扱う上での「共通言語(基本的な考え方)」が身につきます。その共通言語があると、AIの動きを想定した上で使えるようになる——これが、資格取得を「型を先に入れる」戦略として位置づけた最大の理由です。
「資格なんて意味ない」という意見も世の中には多いですが(笑)、少なくとも私の場合は、実務との相乗効果が明確にありました。
8.仲間と学ぶ——コミュニティの立ち上げとアウトプットの場
8-1.「教える場」を先に作った
「インプットとアウトプットの比率は3対7」「他者に教えることで定着率は90%になる」——①でお伝えしたこの理論を、個人で終わらせませんでした。
2024年11月、私は公務員のオンラインコミュニティの枠組みを活用し、自ら「生成AIパスポートのゼミ」を立ち上げました。
目的は単なる資格の暗記ではなく、「体系的な学習で得たAIリテラシーを、日々の公務の現場へ落とし込む経験をメンバー全員で積むこと」。そして「組織や自治体の壁を越えた、志の高い公務員同士のネットワークを作ること」でした。
月1回程度、全国のメンバーをZoomでつなぎ、勉強会を開催しました。
8-2.発信することを自分に課した
ゼミの主宰者として、私は自分自身に発信するルールを課しました。
月1回テーマに基づいて勉強会を企画し、説明することです。他者にわかりやすく伝え、質問に答え、議論をリードする。このプロセスそのものが、自分のスキルを最も深い領域へ定着させる手段になりました。
このゼミ主宰で得た最大のリターンは、スキルアップだけではありません。「アウトプットの場を先に作る」という戦略を、自分自身で体現できたことにあります。
「教える側に回る」ことへの心理的ハードルは高いと思います。私もそうでした。でも、「自分が完璧に理解してから教える」を待っていたら、永遠に始まりません。「一歩先を行く者が、一歩遅れている人に伝える」——それだけで十分なのです。
こういった取り組みが、これからの地方自治体職員のスキル向上における新しい形になると思っています。
9.「厳しい現場」にいる人ほど、実は瞬発的AIスキルが必要
9-1.福祉系部署という「最もAIと縁遠い」現場
私は現在、介護保険業務の現場に身を置いています。高齢者の機微な個人情報・要介護度・医療データを日常的に扱うため、外部の生成AIシステムへ業務データを流し込むことは、法制度的にもセキュリティ的にも100%不可能です。「AIとは最も相性が悪い部署」ではないかと思います。
そのため、普段AIを自由に使えない環境にいる人ほど、「触れる一瞬の環境」で瞬発的にAIを使う能力が求められます。
制限されたわずかな隙間でAIを使いこなすには、自由に使える環境の人より高度な「言語化能力」と「状況判断能力」が必要です。だからこそ、そのスキルを持つ人の希少価値が高いのです。
9-2.30分で起案書を出す「思考分離フロー」
具体例で解説します。介護保険の職員が、上司から「地域介護予防施策の骨子案を、残業なしで30分以内に作ってくれ」と命じられたとします。
【事前準備】
庁内の安全なPCで、過去の計画書や国からの通知文(個人情報を一切含まない、純粋な制度のテキスト・公開情報)だけをメモ帳にコピーする。
【AIへ入力】
メモ帳のテキストを庁内のAIに投入し、以下のプロンプトを叩き込む。
あなたは高齢者福祉に精通した有能な企画官です。
以下の【制度テキスト】をもとに、
地域住民が自発的に参加したくなる斬新で持続可能な
介護予防イベントの切り口を3つ、
30分で上司に報告できる箇条書きの構成案で出力してください。【評価とブラッシュアップ】
出てきた構成案に採点プロンプトを通し、10点満点にブラッシュアップさせることで、構成案を完成させる。
【手元での肉付け・ファクトチェックと提出】
10点満点の構成案に、「実際の地域の予算規模」「固有の地域名」など人間しか知らない情報をはめ込み、ファクトチェックをしてから、30分で上司へ提出。
個人情報は1ミリも外部に漏れていません。
【庁内PC】
個人情報を含まない「純粋な施策テキスト」のみを抽出
↓
【生成AI】
AIに投入 → 「思考の骨組み(型)」を10点満点で生成
↓
【人間】
「地域のリアルな数字」を肉付けして30分で起案完了福祉系部署にいる方はAIを使用できるシーンは少ないですが、公開情報から作れる骨子案、個人情報を含まない報告書作成など、隙間で短縮できる部分があります。ローカルLLMのような、個人情報を扱えるAIが組織に導入されるまでは、「使いどころを選定して使用していくスキル」こそが武器になります。
10.AIエージェントへの扉——次のステージを見据えて
10-1.CDLEという場で受けた衝撃
G検定に合格後、私はG検定・E資格合格者コミュニティ「CDLE」へ参加しました。
そこで参加した「AIエージェント勉強会」が、私のAI観をもう一段高い次元へ引き上げる衝撃的な体験となりました。
10-2.「プロンプトを叩く」を超えた世界
紹介されていたのは「自律型AIエージェント」の世界でした。
人間が「最新のAI医療に関するトレンド新聞を週刊で発行せよ」と一言ゴールを与えるだけで、AIが自律的に英語論文をクロールして探し回り、信頼性を自分で吟味・要約し、デザインまで行い、最終的なPDFの新聞を勝手に発行してしまう——そんな世界が、すでに現実として動いていたのです。
それを見た瞬間、私はこう気づきました。
「これからは、複数のAIが自律的に連携して動く仕組みそのものを理解し、自分の仕事のインフラとして配置する段階へシフトしなければならない」
最新技術へのキャッチアップと、過去の成功体験に固執せず自らを拡張し続ける姿勢——これがAI時代を生き抜くすべての人に求められるマインドセットだと、そのとき確信しました。
11.エピローグ——AIを武器に、本当の仕事へ
11-1.100時間の余力が生む「選択と集中」
私たちが目指すべきゴールは、「AIを巧みに操るプログラミングオタク」になることではありません。いま、全国の地方自治体やビジネスの現場が直面しているのは、人口減少社会の到来と、それに伴う圧倒的なマンパワー不足という、目を背けることのできない冷徹な現実です。
AIに任せられる「システムに代替可能な作業」——定型的な文章作成の思考や、スライドを構築するためのVBAコード生成——は、触れる環境にある一瞬に、瞬発的なスキルで自動化して終わらせればよいのです。
そして、その結果として創出された年間「100時間」という圧倒的な余力を、私たちはどこへ注ぐべきか。それこそが、人間にしかできない業務——創造的な時間——です。それこそが、この3部作が目指す終着点であり、持続可能な公務員DXの本質なのです。
11-2.「導入」の先にある未来を見据える
だからこそ、私たちは「AIを導入すること」や「ツールを使いこなすこと」自体をゴールにしてはなりません。テクノロジーを扱うときに最も大切なのは、「AIを導入したその先に、どんな未来が見たいのか」という明確な目的意識です。
職員数が年々減少し、一人ひとりの業務負担が増していく中で、今の行政サービスをどうやって維持していくのか。そして、限られたリソースの中で住民の幸福度を最大化するには、どうすればいいのか。
「今の苦しい業務環境を維持・改善するために、まずはAIの手を借りてみよう」
そんな切実な問いと、未来への危機感こそがすべてのスタートラインになります。道具に使われるのではなく、理想の未来を引き寄せるための手段として、AIを定義し直すことが不可欠です。
11-3.最高の近道は「TTP(徹底的にパクる)」
もし、「自分にはまだ、ゼロからプロンプトを組み立てたり、新しい仕組みを作ったりするなんて無理だ」と感じるなら、それで全く構いません。
私がこの記事で公開したプロンプトや、職場の同僚、あるいはオンラインコミュニティの仲間たちが実践している優れた活用法を見つけたら、まずは「TTP(徹底的にパクる)」ことから始めてください。
「学ぶ」の語源は「真似る」にあります。先人が試行錯誤の末に見出した良い使い方を徹底的に真似ることで、あなたの引き出しは確実に、そして爆発的なスピードで増えていきます。そうして増えた引き出しの組み合わせの中から、いつしかあなただけの「新しいAIの使い方」が自然と芽吹いてくるはずです。
11-4.明日、デスクに座ったら
難しい資格の参考書を、最初から無理に開く必要はありません。
明日、あなたが自分のデスクの前に座ったら、今日処理しなければならない業務の中で「少し面倒だな」「時間がかかりそうだな」と感じる作業を、一つだけ探してみてください。
まずは、お礼のメールの代筆を1通任せてみる。Excelの管理表の項目を1点だけ考えさせてみる。それだけで十分です。
やりたいことを的確な日本語で伝え、AIという最高の相棒を武器にして、あなたの働き方と、あなたの組織を少しずつ変えていきましょう。
「公務員には無理」なんてことは、絶対にありません。
3部作のまとめ
3本読んでいただいた方、本当にありがとうございました。この記事が、あなたの「最初の一歩」のきっかけになれば幸いです。
この記事は、著者の実務経験と個人的なリスキリングの記録をもとに執筆しています。プロンプトや手法は各組織のセキュリティポリシーに従った上でご活用ください。
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