【公務員向け】公務員AI転換記①——IT資格持ちでも挫折した私が、本気で向き合わざるを得なかった理由
はじめに:「あなたには無理」と思わせたくない
この記事は、生成AIを「ほとんど使ったことがない」公務員の方に向けて書いています。
「AI活用」という言葉を聞くたびに、どこか遠い世界の話に感じてきませんでしたか。民間企業の話、IT部門の話、プログラミングができる人の話——そう思って、ブラウザのタブを閉じてきた方も多いのではないでしょうか。
正直に言います。私も最初はそうでした。
「プロジェクトマネージャ」「ITサービスマネージャ」など、高度情報処理技術者の国家資格を複数持ち、VBA(Excelのマクロ)も多少は書けた私が、生成AIに最初に触れたとき、強い衝撃とともに「挫折しかけた」のです。
なぜ挫折しかけたのか。そこから何を変えたのか。そしてなぜ、IT資格を持たない公務員の方でも再現できると断言できるのか。
その全プロセスを、この3部作の記事に書きました。
読み終えたとき、「自分にもできるかもしれない」と思っていただければ、それだけで十分です。
1.すべての出発点
1-1.最初のきっかけ
きっかけは、試験勉強の最中に生まれた、小さな違和感でした。
2024年10月、私は「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」の試験を受験していました(合格発表は同年12月)。セキュリティの観点からさまざまな情報システムのリスクを体系的に学ぶ中で、ある疑問がじわじわと湧いてきたのです。
「急速に普及し始めている生成AIは、いったいどう管理・運用していくべきなのだろう?」
AIのリスクについて、私はそれまでほとんど何も考えてきませんでした。しかし、セキュリティの学習を深めるにつれ、「これは他人事ではない」という実感が強くなっていきました。行政の現場にも着実に広がり始めていた生成AIを、誰かが正しく理解して運用しなければならない——そう思い始めた瞬間が、私のAIリスキリングの本当の出発点です。
ただ、この段階ではまだ「関心を持った」に過ぎませんでした。背中を押す決定的な出来事は、もう少し後にやってきます。
1-2.逃げ場のない制約が、私を動かした
5歳と3歳の二人の子どもがいる。毎日、定時に退庁しなければならない。
これは、私が地方自治体の現場で抱えていた、ごくリアルな個人的制約です。同時に、組織としても時間外勤務の縮減が強く求められていました。
そんな状況で、ある日上司から突然こう言われました。
「残業は原則禁止だが、この施策に関する説明資料を30分以内に作ってくれ」
従来のやり方ゼロから自分で構成を考え、過去の似たファイルをサーバーから探し回って切り貼りする——では、どうあがいても30分以内に納得のいくアウトプットは出せません。
セキュリティの勉強で頭に灯っていた「AI活用」への関心が、この瞬間に一気に実践へと引き寄せられました。「考えていた」が「やるしかない」に変わった瞬間です。
特別な環境があったわけではありません。最先端のシステムが庁内に導入されていたわけでもありません。あったのは、組織で導入されているテキスト生成AI(画像・動画生成不可)と、「何とかしなければ」という切実な動機だけでした。
1-3.私の出発点:「IT資格持ち」でも挫折しかけた
ここで正直に話しておきます。
私は「AIをゼロから始めた人間」ではありません。前述のとおり、高度情報処理技術者の国家資格を複数持ち、ExcelのVBAも書けた。それなりのIT知識は持っていたつもりでした。
それでも、最初に生成AI(当時の初期のChatGPTなど)を触ったとき、思うようなアウトプットが出ず、挫折しかけました。
理由は単純です。「〜について教えて」「〜の文章を作って」——そんな単純な入力しかできず、返ってくる回答はどこか的外れで、実務に使えるレベルとはほど遠かったのです。
「IT資格を持つ自分ですら使いこなせないなら、一般の職員には無理ではないか」とすら思いました。
ただ、私を含めた公務員にAI講座を開いていただいたときに、強い衝撃を受けました。
その方は、多量のインプット情報をAIに渡し、音声入力まで駆使して、アウトプットを異常なスピードで出していました。
それが「AIへの向き合い方」を根本から変えました。
AIにやってほしいことが分かるように伝える、インプットを充実させる——この2点を意識しただけで、それまで積み上げてきたITの知識やVBAの素養が、生成AIという強力な加速装置と掛け合わさり、爆発的な相乗効果を生みました。
結果として、職場のテキスト生成AIだけで年間「100時間」という圧倒的な余力を創出することに成功しました。(これは実際に削減効果を記録し続けてきた実績値です)
1-4.この連載が約束すること
本連載は「VBAをスラスラ書けるようになるための記事」ではありません。
「Excelの関数すら怪しい人でも、日本語の指示の出し方のコツ(型)さえ真似すれば、年間100時間の余力を創出できるための再現マニュアル」です。
私が泥臭く失敗しながら体系化したステップを、そのままあなたのデスクで再現してください。
2.「勉強しても使えない」を防ぐ、学び方の骨格
2-1.動画を見るだけでは1秒も短縮されない
「AI活用の勉強を始めよう」と決意したとき、多くの方が陥る罠があります。
分厚い解説書を読み進める。動画講義を何時間も視聴する。——その結果、「わかった気がするが、翌日自分のパソコンの前に座ると手が止まる」という状態になります。
どれほど優れた教科書を読んでも、実務は1秒も短縮されません。脳は「わかったつもり」になっているだけだからです。
私が成長と実務応用を両立できた理由は、インプットとアウトプットの比率を「3対7」に固定したことにあります。
これは樺沢紫音さんの書かれた『アウトプット大全』に記されている考え方です。
例えば、15分テキストを読んだら、35分は実際にAIの画面を開いて入力して壁打ちをする。そこで得た気づきを、「職場の同僚に伝える」「コミュニティで発信する」という形でアウトプットに変えるのです。
アメリカ国立訓練研究所の「ラーニングピラミッド」モデルによると、講義を受けるだけの学習定着率はわずか5%。一方、「他の人に教える」という形のアウトプットの定着率は90%に達します。

「教える立場」や「発信する場」を先に作ってしまう。それがリスキリングを最速化させるエンジンです。
学び方と定着率
受動的インプット
• 講義を受ける・本を読むだけ: 定着率 5〜10%
積極的アウトプット
• 自ら実践する・他者に教える: 定着率 75〜90%
2-2.「失敗しながら覚える」より「型を先に入れる」
通常の業務習得では、小さな失敗と成功を繰り返す中から「こういうときはこうすればいい」という法則を導く「帰納的な学び方」をします。公務員現場では、ありがちです。しかしこれは、圧倒的に時間がかかります。
私が取り入れたのは、真逆の「演繹的アプローチ」でした。難しい言葉ですが、要は「まず体系的な法則(型)を頭に入れてから、目の前の課題にそれをはめ込む」という順序です。
例えるなら、料理を覚えるとき、材料を見ながら感覚で作り始めるのではなく、まずレシピ本(基本の型)を頭に入れてから、実際の食材に応用する——そのイメージです。
具体的には、AIの実務経験が浅い段階で「生成AIパスポート」「G検定」といった資格試験の勉強を行いました。生成AIがどんな原理で動き、どんなリスクを持ち、どんな指示の型が有効かという「共通言語」を、先に身に付けるためです。
この土台があったため、実務でAIを使うときに「あ、AIはこういう動きをするから、こう入力してみよう」と、迷わず動けるのです。
「型を先に入れる」——これが、私が最も強く勧める学習戦略です。
まとめ:「関心」を「動機」に変えた2つの出来事
第①話では、私のAI活用が始まった「起点」を正直に書きました。
セキュリティ試験の勉強が、AIリスクへの眼を開かせた
職場の「逃げ場のない時間制限」が、関心を実践に変えた
「型を先に入れる」学習戦略で、挫折を突破した
「すでにITの知識がある人向けの話だろう」と思った方——次の記事を読んでから判断してください。②では、プロンプト(AIへの指示文)を3つまるごと公開します。コピーして貼るだけで、明日から使えます。
▶ ②「デスクでそのまま使える型と、AI3体の使い分け【プロンプト全公開】」は、こちらです。
▶ ③「資格トリプル合格・ゼミ立ち上げ、そして年間100時間の余力へ」は、こちらです。
この記事は、著者の実務経験と個人的なリスキリングの記録をもとに執筆しています。プロンプトや手法は各組織のセキュリティポリシーに従った上でご活用ください。
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