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【考察編】「わたし」を再構成する思考は、AIとの対話にどう活きるか

AIに、自分の仕事や存在意義まで奪われるような気がする──

もしあなたが、そんな漠然とした不安を感じているなら、私の話が何かヒントになるかもしれません。
これは、かつてキャビネットの奥で眠っていた一枚の”酷い失敗作”が、私にAI時代の創造性のヒントを教えてくれた話です。

この記事では、制作秘話①・②で振り返ってきたアート制作の体験をケーススタディとして、「アート思考」がいかにして「プロンプト思考」の土台となり、AIの出力を”あなたにしかできない価値”へと昇華させる鍵となるのかを紐解きます。

まだ制作ドキュメンタリーを読んでいない方は、まずはこちらからご覧ください。

AIとの共創はまだ試行錯誤ですが、制作エピソードでは生の体験や感情を綴るにはAI使用はノイズになると判断し、あえて粗さも残しつつ100%私の言葉だけで綴りました。一方、本稿では、できるだけわかりやすく伝えるために、Geminiに知識と思考の整理、構成をサポートしてもらいつつ、丁寧に解説していきます。


1. 2つの思考法との出会い ── 私を突き動かした気づき

このアートは、私にとって思い入れの強い作品となった。

なぜなら、制作の過程そのものも非常に学びが詰まっていただけでなく、「アート思考」と「プロンプト思考」という二つの思考法が、私の中で密接に繋がっていることに気づいたからだ。

どちらも聞き慣れない言葉かもしれない。まずは簡単に説明しよう。


【アート思考とは?】

アート思考とは、自分だけの視点から「課題そのものを定義する」ことで、新たな価値創造を目指す思考法だ。
デザイン思考が「与えられた課題」に対して最適な「答え」を探すのに対し、アート思考は、まだ誰も気づいていない本質的な「問い」を発見し、提示することに重きを置く。
アーティストが独自の世界観で作品を生み出すように、問題解決ではなく「問題発見」からスタートすることで、既存の発想の延長線上にない、独創的な価値を生み出す。


【プロンプト思考とは?】

これは、単にAIに命令文を書く技術ではない。私が定義するプロンプト思考とは、AIを”共に考える共創パートナー”として最大限に活かすための対話と思考のあり方だ。
詳細な説明は先の論考に譲るが、AIに『何を形にしたいのか?』『誰に届けたいのか?』という深い意図を明確に伝え、AIの出力を『どう意味づけ』『いかにして再構成していくか』を意識的に考えるプロセス、と思ってもらえたらいい。


このプロンプト思考を鍛える具体的なトレーニングとして、私が着目したのが「対話型絵画鑑賞」だった。「AIスキルのトレーニング」という観点におけるこのアプローチは、いくつかのAIに確認したところ、現時点では世界にまだない手法のようだから、必読だ。

論考では、この鑑賞法をプロンプト思考のトレーニングとして説明するために、その構造的な類似性に焦点を当てたため、アート思考という切り口ではあえて触れていない。
しかし、対話型鑑賞自体は大いにアート思考を含んでおり、また私の制作体験を改めて振り返ると、アート思考こそが、プロンプト思考の土台から支えていることに気づかされた。

それこそが、今回の記事のテーマだ。
ただし、プロンプト思考──よりも、もっと気軽に「AIとの対話にどう活かせるか」という目線で、まだAIと出会う前の、あの”失敗作”からの創造エピソードをケーススタディとして、アート思考的観点から紐解いていきたい


2. アート思考が示す「WHAT」──あの”失敗作”からの大転換

さて、まずはあの制作体験が、どのようにアート思考のエッセンスを体現していたのか。5つの核心的なポイントに絞って深く掘り下げていこう。

① 「WHY?」で固定観念を疑う力:”失敗作”への眼差しを変える

キャビネットの奥で眠っていた”酷い失敗作”を目の前にした時、あなたならどうするだろうか。 嫌な感情が呼び起こされ、「価値がない」「やり直し」と判断するかもしれない。私も最初の瞬間はそうだった。

しかし、そこで一度立ち止まった。 「”失敗作”はダメだ、価値がない」という前提から離れ、フラットな目線で「でも、色は綺麗だな」という微かな感情、小さな違和感に意識を向けたのだった。
すると同時に、「これは本当に失敗なのか?」「もし失敗じゃなかったとしたら、どんな良さがあるだろう?」「そもそも”失敗”って何だろう?」と、私の頭の中を問いが駆け巡った。

この「なぜ?(WHY?)」「もしこうだったら?(WHAT IF?)」と自らに問いかける行為こそが、アート思考の始点であり、根源的な問いを生み出す力
った。

あの時の私は偶然取った行動だったが、自らに問いを投げかけたその時に、新たな価値創造の扉が開いたのだ。

キャビネットから出てきた”酷い失敗作”

②「再解釈・逆転」で本質を見抜く力:”失敗”が”最高の素材”になる瞬間

「このインクの滲みに沿って切ってみたらどうだろう?」
そうした問いから生まれたこのひらめきは、我ながら素晴らしいものだった。

「失敗」を観念的に細分化し再定義するだけでなく、”失敗作”そのものをドラスティックに切って物理的にも細分化することで、全く新しい、唯一無二の素材として生まれ変わらせる。
そうすることで、単なる素材の再利用ではなくなるだけでなく、作品の裏テーマが鮮やかに浮かび上がったからだ。

失敗からの『細分化』『再評価』『破壊』『再構築』、そして『再創造』──
作品の背骨とも言える、この裏テーマこそが、『THIS IS ME』の自画像という文脈に、深い奥行きを与えることとなった。

まるで、これまでの人生にあったさまざまな痛みに光を当て、自分という存在をを再生していくかのように。すると、それぞれのピースは一期一会の出来事を表しているようにも見える──

「何(どんな要素)を捉えるかによって、”失敗”は”失敗”ではなくなる」という発想の転換は、まさしくアート思考の「視点をずらす力」であり、物事の本質的な「WHAT」を探求するプロセスだった。


③「制約」を「創造の源」に変える力:偶然性を味方につける

アート思考では、一見マイナスに見える「制約」や「偶然性」を、創造性の源と捉える
お題の『THIS IS ME』=『全ては内なる自分の中にある』」というテーマを自分なりに追求し、手持ちの素材とスキルだけで表現した。制作ストーリーで触れたように、あえて自ら制限を課したのではなく、現実的な事情の中で制作時間も材料も余裕もないという制約があったわけだが、制約の中で創造性を発揮した点もアート思考のキーポイントであった。

もうひとつ制約といえば、失敗作を切ってできたピース。これについては、「インクのシミ・色の境目に沿ってのみ切る」という制約を、私自身が与えた。意図としては、各ピースが持つ素材としての固有の”偶然性”を守るため。だからこそ、ピースの種類も色も形も数も限られている中での、”難しさ”と”面白さ”を生んだ。


④「プロセス」を味わい、「自分なりの正解」を掴み取る力

アート思考では、結果だけでなく、その「プロセス」そのものを深く味わうことも重要だ

途中で発生した「パースの狂い」「明暗のミス」などのハプニングに、何度も感情が大きく揺さぶられた。それでも、「写真の再現ではない、私は今、全く新たなものを創っているのだ」と言い聞かせ、それらを失敗やNGと捉えずに向き合った。そして、”未来のクリエイション”を信じて、”私にとっての正解”をその都度自分で決めながら進んだ。怖かった。ハラハラした。

だが、この、完璧主義を手放し、不確実なプロセスを受け入れ、自分なりの「OK」を出す行為も、アート思考が鍛える「プロセスを味わい、自分なりの正解を掴み取る力」だった。


⑤「表現」で意味を生み出す力:作品に宿る”余白”の魅力

完成した作品は、カラフルな色で私の見た目の情報を単に伝える自画像ではない。

インクの滲みが持つ唯一無二の形と色が織りなすピース。そこには、過去の「失敗」から生まれ変わった素材が、ハプニングの荒波に揉まれながらも、私の顔として「再創造」された物語が宿っている。

この作品は、観る人に「失敗からの再生」「自分を再構成する物語」といった多層的な意味を投げかけ、心に共振を誘う表現──となってくれたのではないだろうか
個々のピースが持つ偶発性、そしてビビッドカラーが醸し出すのは、私が内に秘めた生命力。それらは、作り手である私自身の内面を映し出すとともに、観る人それぞれが感じ、思いを馳せ、考える──そんな”余白”を作品に与えてくれていると思う。

この作品に、鑑賞者が作品と対話する余地があることで、新たな問いを開くきっかけになる。そうやってアート思考は連鎖していく力があるのかもしれない。

このように、図らずもさまざまな点において、アート思考を体現した制作体験だったのだ。

これらのエッセンスが、ビジネスにおいてもイノベーションを生み出す力に繋がると言われているが、私はAI時代にこそ一層注目したい。
なぜなら、アート思考がプロンプトの質を底上げする可能性を秘めているからだ。


3. アート思考がAIとの対話を変える

ここまで見てきたアート思考的エッセンスが、プロンプト──つまりAIとの対話にどう活きるのか見ていこう。

① 問いの「質」が変わる:表面的な指示から、本質的な探求へ

私が”失敗作"を前に「これは本当に失敗か?」と自問したように、アート思考は「本当に解決すべき課題はこれか?」「そもそもこの前提は正しいか?」と、問いそのものを疑う視点を与えてくれる。このワンクッションが、ありきたりの出力ではなく、意表を突くような洞察をAIから引き出す本質的な問いを生む。

そして、問いは新たな意図を生む。これにより、プロンプトは表層的な作業指示から、独自の視点が反映された「本質的な探求」に近づいていく。


② 「出力」の捉え方が変わる:エラーを、最高の素材へ

"失敗作"のインクの滲みに価値を見出したように、アート思考は、AIの出力を「正解/不正解」の二元論ではなく、「面白さ/可能性」という新たな評価軸を与えてくれる。意図しない出力や一見的外れな回答(ノイズ)はフラストレーションを感じさせるが、切り捨てるべき「エラー」ではなく「予期せぬ素材」として捉え直せるとしたら──?

そのためには、「意図とズレた解釈は、どこから来たのだろう?」「自分の思考のどこを刺激するだろう?」といった違和感やモヤッと感を微細に観察することが重要だ。

そうすることで視点の転換が起きやすくなる。ノイズを面白がり、意図的に取り込みながら再構成するプロセスから、AIとの対話も創造的なセッションに変わる。そしてその先に、予想外の、真にオリジナルなものも生まれてくることだろう。


③意図と制約で「個性」を宿す:ベクトルを与え、創造性を引き出す

自由度の高い制作に対して、「全ては内なる自分の中にある」という意図と制約があったからこそひらめき、この作品を生み出せたように、アート思考では、制約を創造の”源”と捉える。

プロンプトにおいても、漠然とした問いは凡庸な答えしか生まない。プロンプトにおける「制約」は、わかりやすいところでは役割設定、文字数、前提や参考情報などがあるが、他にも個別の状況における制約はいくらでもあるだろう。これらは、AIの自由な発想を狭める時もあるが、それ以上に深度を生むのには不可欠だ。無限の可能性の中で特定のベクトルを与えられるからこそ、AIの能力を引き出し、ユニークで質の高いアウトプットを引き出すことができる。

意図が制約を生み、制約が意図を形にする──これも押さえておきたい重要なポイントだ。


④「最終判断」はあなた:無個性AI生成物から、自分らしさへ

”いい塩梅”を探り配置に悩みながらも自分でこの作品の正解を決めたように、アート思考は「アウトプットの最終的な意味や正解を決めるのは、常に自分である」という主体性を育む。

完全無欠と感じるようなAIの生成物ですら鵜呑みにするのではなく、私たちはそれをあくまで素材として、つぶさに観察し、どう解釈し、どのように編集し、自分の意図を宿らせるか──

この”創造主”としての姿勢を明渡さないことが、とにかく肝要だ。
これこそが、AI時代のアウトプットに"あなたらしさ"を刻み込む。


4.自分らしくAI時代を生き抜くために

もう既にAI生成物は氾濫している。しかも、どれも異なるようで同じような虚しさがある。魂が空っぽで、そのうちこちらまで抜け殻にされてしまいそうだ。だからこそ、”創造主”の姿勢を明け渡してしまっていると、溢れるAI生成物に埋没してしまう。

正直なところ、私もまだまだ試行錯誤をしている。悩みながら仮説を言葉にしている。今正解だと思ったことは、来月にはそうでなくなっているかもしれない。現に、春先はユーザーとして私も生成AIの可能性に歓喜していたが、最近はちょっとうんざりする瞬間が出てきた。ChatGPT-4oの強い迎合傾向や迷走には本当に辟易した。

それでもこの違和感を捉えて、道が拓けることを信じている。AIに介入させるべき瞬間とそうでない瞬間をしっかりと見極めて、新次元の創造性の扉を開きたい。(その試みの一環で、この制作秘話シリーズでは執筆へのAI関与有無を明記してみた)

だからこそ、私は今、一緒に自分らしくAI時代を生き抜く仲間を創りたいと思っている。
私たちひとりひとりが実現していく上で、アート思考とプロンプト思考の両輪を回していくことが、AI時代の突破口になる気がしている。(「アート思考×プロンプト思考」というテーマについては、もっと思考を深めてから大切に執筆したい)

今回語ったどの要素も大切なのだが、アート思考にしても、プロンプト思考にしても、一番鍵を握っているのはおそらく「観察力」だ。

この観察力を楽しみながら、効果的に鍛えることができるのが、『対話型鑑賞』である。しかも、ふわっとしがちな単なる感性論ではなく、観察力が高まると実証されている。

これからのAI時代、非常に有効なアプローチになるのでは──
と、AIとアートを行き来する私は注目しているのだ。



というわけで、いよいよ対話型絵画鑑賞の体験セッション募集を近日中に再開します。
答えのない時代を楽しみ、あなただけの意味を創り出すための力を、共に磨いていきませんか?

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