見出し画像

4. 彼の部屋の整理を手伝う。

前の話はこちらです。


翌週、彼の身内の方と彼の部屋で初めて会いました。
こんな形で会いたくなかった。
彼と顔の骨格がとても似ています。
佇まいも似ているかもしれない。

初めて会ったのに、普通にリラックスして
やりとりをしているのが不思議。
彼という共通の話題があるからなのか。
この部屋を片付けなきゃならないという
共通の目的があるからなのか。

もう部屋はぐちゃぐちゃになっています。
先週来た時よりも物が減っています。
本も服もない。
あのぬいぐるみもいない。
ごめん。助けられなかった。
あっちで彼をひとりにしないであげてね。

形見に好きな物持って行ってといわれても、
何をもらいたいのかよくわかりません。
だいたい残っているのは私がプレゼントしたもの。
あげたものは欲しいと思えません。
服は全部処分されていたから、
彼の匂いも手元に残せません。

どんなものでも、部屋にあるものは
彼や私の意思でそこに存在しているのに。
全部のものに思い入れがあるのに。
第三者から見たら、みんなどうでもいいものなんだな。
こんなにめちゃくちゃにされると
つみあげてきた生活が全否定されたみたいです。

でも、現実にはこれが正しい。
この部屋は賃貸だから引き払わなくちゃいけないし、
書類とかの必要なものを確実に取り出すには
全部をひっくり返すのが一番確実。

私がこの役割をしなくちゃならなかったら
何ヶ月も家賃を払わなきゃならなかったでしょう。
感傷に浸っている場合じゃないんです。
こういう作業は第三者が客観的にする方がいいことが
よくわかりました。

片付けをしていたら、
彼が留学していた時の古い写真を見つけました。
ここにいつか遊びに行こうねって言っていたのに。
私が一人で行っても面白くないよ。

そうか、いつか行こうねって言っていたところが
たくさんあったのに、もうどこにも一緒には行けないんだ。
美味しそうなお店を見つけても一緒に行けない。
いいもの見つけてもプレゼントできない。
バレンタインのチョコ、いつも高級なやつ渡してたけど
もう、そこのチョコは二度と買うチャンスがないかもしれない。
ゼルダの新作も一緒にやりたかったのに。
楽しみにしていた未来が全部なくなっちゃったんだ。
お先真っ暗。

部屋を後にしてから、駅前をうろつきました。
あのお店のごはん、おいしかったな。
あのお店でよく買い物したな。
ここのケーキ、彼が好きだったよね。
このお店はかわいいものがたくさんあって、
よくプレゼントに買ってくれてたな。
もう、この街には二度と来ないかもしれないと思うと
なかなか電車に乗れません。

ずいぶん長い時間うろついてから、
なんとか電車に乗りました。
座ったとたんにぐっすり眠れました。
何日ぶりだろう。



いいなと思ったら応援しよう!