祖母と、みかんと、香りの記憶|思い出の中の養生
昨日作った蒸しみかん。
あのあと、皮とシナモンでみかんのお茶を煮出しました。
このお茶をつくるとき、いつも思い出す風景があります。
それは、私の小さい頃、
祖母が冬になるとストーブの上で、
みかんの皮をことこと煮出していた姿です。
冬の祖母の部屋は、
いつもやさしい柑橘の香りがしていました。
扉を開けると、
少し甘くて、あたたかい匂いがふわっと広がって、
それだけでなんだか安心してしまうような空気。
湯気の立つ湯のみと、
ほんのり甘い、みかんのお茶。
それをもらうのが、とても好きだったのを覚えています。
無農薬のみかんを手に入れるようになり、
蒸しみかんを作るようになってから、
ふとした拍子に、あの部屋の匂いを思い出すことが増えました。
大人になってからは、
みかんの皮を煮出すことなんて、ほとんど忘れていたのに――です。
祖母と、みかんのお茶。
甘く、やさしい思い出の香り。
そう考えると、祖母はシナモンは使っていなかったけれど、
私がつくる、みかんの皮とシナモンスティックのお茶と、その香り。
これがいつか、子どもたちが巣立ったあと、
私にとっての祖母の部屋のように、
記憶のどこかに残るのだとしたら。
そう思うと、少しだけ胸の奥があたたかくなります。
子どもたちが帰ってくる時間に合わせて、
砂糖を少し多めに入れると、
「また蒸しみかん作ったの?」
なんて言いながらも、
ちゃんとカップを持ってきて、黙って飲んでくれます。
そして、このお茶を本当は好きなことを私は知っています。
いつか、こんな何気ないやりとりも、
味と香りとともに子どもたちの中に残っていくといいな。
そんなことを思いながら、
カップに注いだお茶にはちみつをほんの少し入れて、
祖母の思い出とともに味わいました。
無農薬のみかんが手に入ったときは、
果肉だけで終わらせずに、皮まで、ゆっくり使ってみる。
それだけで、
昨日の湯気と、今日の湯気が、
ひと続きになるような気がしています。
祖母のストーブの上から、うちの台所へ。
香りだけが、少し形を変えて、
今も静かに残っている。
そんなことを思った、冬の時間でした。
🔳 今日の小さな養生
蒸しみかんを楽しんだあとの皮とシナモンで、
もうひとつ、冬をあたためる。
蒸してある皮は、すでにやわらかく、
苦味も少し丸くなっています。
香りも湯気に溶けやすく、短い時間でもよく出ます。
鍋に入れて、
水を注いで、
弱火でことこと。
甘さは、砂糖でも、はちみつでも、
その日の気分で。
香りを待つ時間も、養生。
そう思っています。
おわりに
冬の養生は、
新しいことを始めるよりも、
昔からあったものを、もう一度、思い出すことなのかもしれません。
皮を煮る音。
湯気の立ちのぼる匂い。
甘さの奥に残る、柑橘の気配。
そんな小さなことが、
今日の体を、明日の体へ、
静かにつないでくれる気がしています。
🔳 蒸しみかんの記事▼
🔳 12月|冬の養生 記事まとめ▼
冬のあいだ、喉や鼻の乾燥、
台所での養生について書いてきた12月の記事を、
まとめてあります。
