【夜の静寂🌙、昼の気配】(5)休止符のない揺れ
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年末年始の休みは、
ほとんど自宅で内業をして過ごした。
外に出る理由も、誰かと会う予定もない。
淡々と、画面に向かい、手を動かす。
それだけの時間が、
いつもより長く続いた。
仕事納めの日のことが、
何度も頭をよぎる。
派遣の彼女が
「お疲れ様でした」
と声をかけてきた。
私は顔を向けず、
返事だけして、その場を離れた。
あれでよかったのだろうか。
いや、
きちんと面と向かって、
こちらからも挨拶をしておいた方がよかったのではないか。
そんな考えが、何度も戻ってくる。
どうして、
私は彼女に印象を残そうとするのだろう。
彼女にスルーされても、それでいいではないか。
気に入られなくても、
他の社員と同じ扱いで、何の問題もないはずだ。
そう言い聞かせようとするたび、
心の奥で、別の声がざわめく。
──覚えてほしいのか。
──特別だと思われたいのか。
──それとも、ただ、無視されるのが怖いだけなのか。
自分の中に、
はっきりしない感情がいくつも重なっている。
整理しようとすると、
かえって絡まっていく。
長い連休の終わりを、
珍しく待ち遠しく感じている自分にも気づいた。
休みが嫌なわけではない。
だが、職場に戻ることで、
何かが確認できるような気がしている。
その期待が何なのか、
自分でも、まだ言葉にできない。
夜、布団に入ると、
思考はさらに自由になる。
現実では距離を保っているはずの彼女が、
架空の存在として、すぐ隣にいる。
触れない。
言葉もない。
ただ、
そこにいるという設定だけが、
妙に現実味を帯びる。
それは欲望というより、
安心に近い感覚だった。
昼の私は、理性を選ぶ。
距離を測り、線を引き、平静を装う。
夜の私は、その線を何度もなぞり直す。
越えない。
だが、消しもしない。
建前と本音は、
どちらかが勝つことも、
完全に負けることもなく、
ただ、揺れ続けている。
連休が終われば、
また昼の時間が戻ってくる。
何事もなかったように、
私は席を選び、仕事をし、会話を交わすだろう。
それでも、
この揺れだけは、
静かに持ち越されるのだと思っていた。
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