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葛飾北斎・開花したのは高齢になってから【手のひらの偉人伝7】

葛飾北斎(1760~1849)の作品でとくに有名な『富嶽三十六景』や『富嶽百景』は、70代のときのものです。

北斎の画業が大きく開花するのは、高齢になってからでした。ただし、北斎は50歳頃までにも一定の評価は得ており、さらに50代前半で描き始めた『北斎漫画』(森羅万象のイラスト集)の大ヒットでメジャーになっています。

北斎の作品は、版画による出版物です。彼はその版画の下絵を描く「絵師」であり、アカデミックな「画家」とは異なります。

そして絵師として、70歳を過ぎても、90歳近くで死ぬまで懸命に絵を追究し続けました。

それは「老大家が熟成した渋い作品を描く」のとは違います。「三十六景」や「百景」で、北斎はこれでもかこれでもかと、アイデアや技巧を凝らした作品を打ち出しています。

北斎は75歳の頃に、「自分が70歳までに描いたものは取るに足らない」と述べています。版画集『富岳百景』のあとがきでのことです。

《私は6歳のころからモノのかたちを写す癖があり、50歳のころから多くの作品を発表してきたが、70歳までに描いたものは取るに足りない。》

(原文)
己(おのれ)六才より物の形状(かたち)を写すの癖(へき)ありて半百の比(ころ)より数々(しばしば)画図を顕すといへども、七十年前(ぜん)画(えが)く所は実に取に足(たる)ものなし。

そして、こう続けます。

《73歳になり禽獣虫魚(きんじゅうちゅうぎょ)や草木の自然の姿をきちんと描けるようになった。そこで80歳でさらに向上して、90歳では奥義をきわめ…》

さらに、それで終わることなく「110歳まで生きて、神の領域にまですすんでいきたい」ということまで、北斎は述べています。

北斎の大器晩成の生涯や、彼の言葉をみると、それは「年をとっても人間は成長できる」ということの証明であるように思えます。

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*古今東西の偉人を数百文字で切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしています。

(参考文献)
いずれも入門書として比較的手軽・手頃でおすすめ。

・『誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」完全ガイド (AERAムック)』朝日新聞出版、2021年

・瀬木慎一『画狂人北斎』河出文庫、文庫版2020年

・大久保純一『カラー版 北斎』岩波新書、2012年 
カラーの図版付きで北斎の生涯をたどることができる新書。

「手のひらの偉人伝」の次の記事。マガジンにもまとめています。

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