ヘミングウェイ・「氷山の水面下」を大きくする生き方【手のひらの偉人伝4】
作家アーネスト・ヘミングウェイ(1899~1961)は「省略の文体」といわれる、シンプルで力強い表現で知られます。
彼は自分の文章を「水上に現れる氷山の8分の1」に例えました。書く対象について十分な知識や経験(水面下の8分の7)があれば、多くを省略して書いても、読者には伝わるのだと。
《作家は自分が書いていることを充分よく知って、わかっていることを省略したとしても、作家が真実を書いているかぎり、読者は作家が実際に書いたと同様に強くそれを感じることができるのだ》
《氷山の動きがもつ威厳は、水面に現れている8分の1による》
(ヘミングウェイ『午後の死』より、今村楯夫・山口淳『ヘミングウェイの流儀』日本経済新聞出版社からの孫引き)
彼は、自分の表現を支える「氷山の水面下」を大きくすることに努めました。「自分は本は読まない」と言って無知を装うこともありましたが、じつは読書家で、自邸には多くの(9000冊の)本がありました。
一方、旅行や取材、戦地での活動、海外への移住、狩猟や釣り、酒と美食、4回の結婚など、さまざまな経験をしています。実体験と読書の両面から、この世界を理解しようとしたのです。
彼の作品は、多くの読書と多彩な経験を通してつくられた「大きな氷山」の一角ということです。
しかし、中高年になると健康が悪化して、経験することも書くことも思うにまかせなくなり、悩んだヘミングウェイは61歳のとき猟銃で自殺しました。
それは残念なことですが、彼が自分の信条に沿って精一杯生きたことはたしかです。
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*古今東西の偉人を数百文字で切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしています。
(参考文献)
「氷山」の例えは、ヘミングウェイ『午後の死』が原典ですが、本記事は今村楯夫・山口淳『ヘミングウェイの流儀』(日本経済新聞出版、2010年、新潮文庫版2013年)からの孫引きです。ヘミングウェイのファッションやライフスタイルに光をあてた評伝。タイトルの写真は同書の単行本版。
「手のひらの偉人伝」のつぎの記事。マガジンにもまとめています。
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