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やなせたかし・過去の仕事を何度も再検討する【手のひらの偉人伝5】

やなせたかし(1919~2013)の「アンパンマン」が誰にも知られるようになったのは、1988年にテレビアニメ化されて以降のことですが、アンパンマンの原型は、1969年に生まれています。

しかし、それは普通な感じの男がアンパンマン的な格好をして、飢えた人にパンを配るというもの。文も挿絵もやなせ作の、青年向け読み物に登場するキャラです。

その後、1973年に絵本のキャラになるのですが、今よりもすらっとしたプロポーションで、マントはつぎはぎだらけ。困った人を助ける、清貧のヒーローという設定です。

今のようなアンパンマンのキャラが定まるのは、1975年にその後も続く絵本のシリーズの1冊目が出て以降です。

ただし、このシリーズも当初は「貧困を救う」という子どもにはむずかしいテーマが打ち出されていたのですが、しだいに幼児向け作品として完成度を高めていきました。

つまり、アンパンマンは、過去の作品を何度も食い下がって再検討することで生まれたのです。

もちろん、あれほどの人気キャラは、食い下がってがんばればできるというものではない。やなせは、著書でこう述べています。

《ローマは1日にしてならず。いくらあせっても、やすやすと人気キャラクターは生まれない。努力でできるというものでもない。ひとつの天運、千載一遇のチャンス、時の流れ、奇跡の星、それらが重なってキャラクターは誕生する》
(『アンパンマンの遺書』岩波現代文庫、2013)

たしかにそうなのでしょう。しかし、もしも1969年や1973年のバージョンであきらめていたら、アンパンマンに天運はめぐってこなかったのです。

マンガや絵本などで、マイナーだった作品をリメイクして、ヒットさせた例は、水木しげるの「鬼太郎」など、ほかにもあります。しかし、アンパンマンはその手の事例の最大のものにちがいありません。

「過去の仕事の再検討」は、創造の大切な手段なのです。

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*古今東西の偉人を数百文字で切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしています。

(参考文献)
やなせたかしの生涯についての最初の1冊としては、これを。

・やなせたかし『アンパンマンの遺書』岩波現代文庫、2013年

2025年に出た、新しい評伝。やなせたかしの伝記の今後の定番になると思います。

「手のひらの偉人伝」のつぎの記事。マガジンにもまとめています。

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