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スノウ コレラの「真犯人」を突き止めた医師【手のひらの偉人伝13】

1840年代、ロンドンではコレラが蔓延し、大量の死者が出ました。

コレラは「患者の糞尿が混じり、コレラ菌を含む水」を介して広がります。

しかし、当時は細菌学が未発達で、「害毒を含む空気(瘴気、しょうき)」を原因とする説が有力でした。当局はこの瘴気説に立ち、市街で悪臭(瘴気)を放つ、糞尿を含む汚物を川に廃棄する対策を行い、かえってコレラを蔓延させていました。

これに対し、ロンドンの開業医ジョン・スノウ(1813~1858)は、「コレラは飲み水が原因」と考えました。

「環境の悪い(瘴気が多い)スラムでも、エリアによって患者数が大きく異なることがある」「両者の間では、飲み水(使っている井戸や水道)がちがう」ことに着目したのです。

真犯人は、瘴気ではなく水ではないか。

スノウは、飲み水のコレラ菌のことは知りません。しかし、病気の発生状況を統計的に調べて基本的な因果関係を推定しようとしたわけです。

彼は、多忙な本業の合間に、コレラの発生エリアに赴き、丹念な調査を行います。

病気が蔓延する街区の一軒一軒を訪ね、ヒアリング。さらに、患者宅の飲み水のサンプルを分析し、塩分濃度などから井戸や水道を特定する……

スノウは成功した医師で、すでに名声も安定した暮らしもありました。こんな研究は、むしろキャリアの妨げです。それでも彼は、研究にのめり込んでいきます。

調査を重ねると、「飲み水とコレラの因果関係」が明確になってきました。彼はさらに研究を続け、瘴気説に立つ学界の主流派との論争も行いました。

彼の説が勝利するには、10年ほどかかりました。その後、正しい原因論に基づき、下水道整備などが進められるようになります。

スノウのような人が、この世界には必要です。功名心や義務感を超える強い意志で、忍耐強く科学的真理を探究する人がいないといけないのです。

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*古今東西の偉人を数百文字で切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしています。

(参考文献)
・スティーヴン・ジョンソン『感染地図 歴史を変えた未知の病原体』矢野真千子訳、河出文庫、文庫版2017年
コレラについてのスノウの研究を主題にした本です。

スノウのことは、最近はマンガにもなっています。最近書店で見かけて知りました(未読)。
・吉田優希『スノウ(1)』講談社、2025年


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