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新人介護士さんの経験が、ただの回数にならないように|「数をこなせば覚える」の前に考えたいこと【連載1/4】


こんにちは!
元ITエンジニアで現役介護福祉士のやなぎです🌱

今回から4回に分けて、「新人さんの経験を、学びに変えるために」というテーマで、最近の現場で感じたことを書いていきたいと思います。

先日、事情があり、普段の指導担当者に代わって、新人職員さんと一緒に行動する日がありました。

介助を一緒に行いながら、普段どのような研修を受けているのか、何を練習しているのか、新人さんがどのようなことに不安を感じているのかを聞く機会がありました。

その中で、経験した一回一回を、ただ過ぎていく回数ではなく、本人の中に残る学びへ変えるには、どのような関わりが必要なのだろうと考えるようになりました。

この連載では、

  • 第1回 経験した回数と、本人に残る学びの違い

  • 第2回 「周りに迷惑をかけたくない」という新人さんの焦り

  • 第3回 見本を見てもできない理由と、次につながる伝え方

  • 第4回 基礎を覚えている途中で、応用まで任せる難しさ

という4つの視点から、新人さんの経験の重ね方について考えていきます。

新人さんを責めるためでも、指導する職員を責めるためでもありません。

時間や人員に余裕のない介護現場の中で、それでも少し変えられることはないか。僕自身も考えながら、現場で見たことや感じたことを書いていきたいと思います。

第1回となる今回は、「経験の数」と「経験の残り方」がテーマです。

新人さんに普段の研修について聞くと、おむつ交換だけでなく、トイレ誘導や食事介助なども、多少の手助けを受けながら、ほとんどの工程を毎日行っているとのことでした。

僕は最初、

「それだけ毎日行っているなら、かなり経験を積めているのではないか」

と思いました。

介護技術は、説明を聞くだけでは身につきません。実際に利用者さんと関わり、何度も介助する中で、手順や体の動かし方を覚えていきます。

そのため、「数をこなせば、そのうち覚える」という考え方は、決して間違いではないと思っています。

ただ、新人さんの話を聞きながら一緒に動いていると、少し違う見え方もしてきました。

毎日、多くの介助を経験している。それでも本人の中には、「今日はこれができるようになった」という実感が、あまり残っていないようでした。

経験した回数が増えることと、その経験が本人の技術として残ることは、同じではないのかもしれない。



数をこなすことで、身につくものは確かにある

おむつ交換一つを取っても、覚えることはたくさんあります。

  • 必要な物品を準備する順番

  • 利用者さんへの声かけ

  • 介助するときの立ち位置

  • 体位変換の方法

  • 皮膚状態の観察

  • おむつを当てる位置や、しわ、隙間の確認

最初は一つずつ考えながら行っていたことも、回数を重ねる中で少しずつ繋がり、一連の流れとして動けるようになります。

トイレ誘導や食事介助も同じです。
さまざまな利用者さんと関わることで、決められた手順だけでなく、その方に合わせて方法を変える力も育っていきます🌱

回数を重ねることで、身につきやすいことはあります。

たとえば、

  • 物品を準備する順番

  • 介助の大まかな流れ

  • 手を動かす速さ

  • 時間内に業務を終える感覚

  • 一度覚えた手順を繰り返すこと

こうした部分は、実際に何度も経験する中で少しずつ身についていきます。

一方で、回数を重ねるだけでは、気づきにくいこともあります。

  • なぜ、その物品が必要なのか

  • 利用者さんによって、どこを変える必要があるのか

  • 痛みや不快感がないか

  • 安全性や介助の丁寧さが保たれているか

  • 上手くいかなかった原因は何だったのか

介助の流れを止めずに行えることと、その介助の意味を理解し、安全に行えることは少し違うんですよね。
その一回で何を見て、何を覚え、次に何を変えるのかが曖昧なままでは、経験した数だけが先へ進んでしまうことがあります。


毎日すべてを行っていても、学んだ実感が残らない

介護現場の一日は、一つの技術だけを落ち着いて練習できる環境ではありません。

朝のおむつ交換が終われば、別の利用者さんをトイレへ案内する。
トイレ誘導が終われば食堂へ移動していただき、食事が始まれば姿勢を整えて食事介助を行う。

その間にも、周囲の利用者さんの動きや、次の業務の時間を気にしなければなりません。

慣れた職員にとっては日常的な流れでも、新人さんにとっては、おむつ交換、トイレ誘導、食事介助の一つひとつが、まだ考えながら行う課題になっています。

さらに、一回の介助で複数の指摘を受けることもあります。

  • 「立つ位置が違う」

  • 「声かけが少ない」

  • 「物品の置き場所が違う」

  • 「もっと周りも見て」

  • 「もう少し早く動いて」

どれも、必要な指摘なのかもしれません。

ただ、一度にいくつも伝えられた新人さんは、次の介助で何から意識すればよいのかわからなくなってしまうかもしれません。

すべてを一度に直そうとすれば、頭の中はさらにいっぱいになります。
一つを意識している間に、別の一つが抜けてしまうこともあります。
初心者が複雑な技術を学ぶ研究でも、一度に考えることが増えるほど頭の中にかかる負担が大きくなり、学んだことを後から再現する力にも影響することが報告されています。

毎日、多くの介助を経験している。
それでも話を聞いていると、本人の中には「今日はこれができるようになった」という実感が、あまり残っていないように感じました。

その状態が続けば、自分は何も身につけられていないのではないかと感じてしまうと思います。

本人は一生懸命に取り組んでいるのに、得られたものを実感できない。
できなかったことばかりが残れば、研修そのものが大きなストレスにもなりやすいと思います。


「覚えること」よりも、「終わらせること」が目的になってしまう

指導員に見られながら、次の予定に遅れないように介助する。

前回指摘されたことを思い出しながら、新しく言われたことにも気をつける。

新人さんの頭の中は、「今回の介助から何を覚えようか」よりも、「とにかく遅れずに終わらせなければ」ということでいっぱいになってしまうのではないでしょうか。

時間内に業務を終えることは、現場では必要です。

ただ、終えることが最優先になると、上手くいったことや次に変えることを整理する前に、次の業務が来てしまいますよね。

おむつ交換を終えても、なぜ今回は位置が合ったのかを振り返る前に、次の利用者さんへ向かう。

トイレ誘導を終えても、どの位置から支えると安定したのかを確かめる前に、次の業務へ進む。

食事介助を終えても、姿勢や一口量が合っていたのかを整理しないまま、片づけや記録へ移る。

これを毎日繰り返していれば、介助した回数は増えていきます。

それでも頭の中には、「忙しかった」「何とか終わった」という感覚だけが残りやすくなります。

体を動かした回数が多くても、どの立ち位置がよかったのか、どのように手を使えば安定したのかを確かめなければ、次の介助で再現できる体の感覚としても残りにくいと思います。

新人さんが何も考えず、ただ作業をしているわけではありません。

むしろ、一度に考えなければならないことが多く、限られた頭の中の余裕を、目の前の介助を何とか終えるために使っている状態なのだと感じました。


一回から一つでも残れば、それは積み重ねになる

僕は、一回の介助から、いくつものことを覚えてもらう必要はないと思っています。

一回から一つでもよい。

  • おむつ交換で、今日は当てやすい位置を確認できた。

  • トイレ誘導で、今日は立ち上がる前の足の位置を見られた。

  • 食事介助で、利用者さんの姿勢を確認してから介助を始められた。

それだけでも、昨日より前へ進んでいます。

新人さんは、毎日何度も介助を行います。
一日一つでも、昨日よりできることが増える。
その一つを勤務のたびに重ねていけば、3か月後には数十個の「できるようになったこと」が残ります🌱

もちろん、覚える速さには個人差があります。
施設によって求められる業務や、独り立ちまでの期間も違います。

それでも僕は、一回から一つを確実に持ち帰り、次の介助でも繰り返していけば、3か月で独り立ちを目指すための土台として、十分な積み重ねになると思っています。

一日に十個指摘され、どれも曖昧なまま終わるよりも、一日一つを理解し、次の日にも使える方がよい。

僕は、積み重ねとは、そういうものだと思っています。

積み重ねるとは、一度に多くのものを載せることではありません。

小さくても、昨日までなかったものを、今日一つ残すことです。

その一つが翌日にも残り、次の経験につながっていく。
それを繰り返すことで、最初は別々だった動作が少しずつつながり、一つの介助として行えるようになります。

この考え方は、技術を身につけるための練習方法にも重なる部分があります。

技術を高めるための「意図的な練習」でも、単に長い時間や回数を重ねるのではなく、改善したい課題を明確にし、結果についてフィードバックを受け、修正しながら繰り返すことが重視されています。

数をこなすことに、「今日は何を身につけるのか」という目的が加わって、初めて一回一回が学びへ変わるのだと思います。


新人さんの経験が、ただの回数にならないように

新人さんは、おむつ交換も、トイレ誘導も、食事介助も、毎日一生懸命に行っています。

多少の手助けを受けながらでも、ほとんどの工程に取り組んでいるのであれば、決して経験が足りないわけではありません。

むしろ、多くのことを経験しているからこそ、その一つひとつが「終わらせるための作業」にならないように、何を得られたのかを確かめることが必要なのだと思います。

数をこなすことは間違いではありません。

最終的には回数を重ね、頭と体の両方で覚えていく必要があります。

ただ、時間に追われながら毎日すべての工程を行い、一度にいくつもの指摘を受けても、何ができるようになったのかを実感できなければ、経験した数だけが先へ進んでしまいます。

その中に少しだけ、

  • 「今日は何を見るのか」

  • 「今回、何ができたのか」

  • 「次は何を試すのか」

を確認する時間を加える。

一回から一つでもよい。

昨日より、できることが一つ増えたと思える。

何回行ったかだけではなく、その一回から何を持ち帰れたのかを大切にする。

僕は、それが本当の意味での積み重ねなのだと思います。

ただ、新人さんが一つずつ学ぼうとしていても、「自分が遅れると、あとから働く人や指導員に迷惑をかけてしまう」という気持ちが強ければ、目の前の介助に集中することは難しくなります。

次回は、新人さんと話す中で感じた「迷惑をかけたくない」という焦りと、安心して研修に集中できる環境について考えてみたいと思います。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました🍀


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