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Robinhood共同創業者が語るイノベーターの思考法——次の「波」を見つけるための問いの立て方

シリコンバレーのシンボル的な場所、HPガレージ。ここで行われたForbes「最も偉大な生きているイノベーター250人」の一人に選ばれたBaiju Bhatt氏へのインタビューは、起業家の軌跡と思考法を学ぶ上で示唆に富む内容だった。

Bhatt氏は、Stanfordで物理学と数学を学んだ後、数社の失敗を経てRobinhoodを共同創業。ゼロ手数料の株式取引プラットフォームとして金融の民主化を進め、数千万人のユーザーを獲得した。そして現在は「Cowboy Space Corporation」の名のもと、宇宙データセンターという新たなフロンティアに挑んでいる。

本稿では、2つの産業で「プラットフォームの転換点」を見極めてきたシリアルアントレプレナーの視点を整理する。


1. Robinhood誕生の背景——「怒りではなく、参加への招待」


1-1. Occupy Wall Streetという時代の空気

Robinhoodのアイデアが生まれた2011〜12年は、「Occupy Wall Street」運動が盛んな時期だった。若い世代が資本市場を「自分たちのものではない」と感じ、既存のシステムへの怒りを表明していた。

Bhatt氏はこの時代をこう振り返る。「両親がより良い未来を求めて米国に移住してきた。そのため、私には、アメリカの資本主義システムは世界中の人が羨むものだという感覚があった。それなのに、なぜ同世代の若者たちがそのシステムを根本的に拒否しようとしているのか——そこに大きな違和感があった」

同氏とVlad Tenev共同創業者は、「システムを壊す」のではなく、「若者をシステムに参加させる」という方向性でRobinhoodのコンセプトを固めていった。市場へのアクセスコストを下げることで、より大きな不満の一部に答えられると考えたのだ。

1-2. ミッションとしての「金融の民主化」

「あの頃、若者に『お金のことを気にするか?』と聞けば、多くが『自分には関係ない』と答えただろう。それはおかしい。自分の未来なのだから、自分のことだ」とBhatt氏は語る。

今日、若い世代の多くが当然のように個人の資産形成に関心を持つようになった背景に、Robinhoodのような存在が果たした役割は小さくないとBhatt氏は見ている。

2. プロダクト開発の方法論——定性と定量の使い分け


2-1. 顧客との直接対話を惜しまない

Robinhoodの開発初期、Bhatt氏たちは、スタンフォード近くのカフェで定期的にユーザーテストを行っていた。エンジニア・デザイナー・コンプライアンス担当など異なる役割のメンバーが小チームを組み、近くにいる学生に声をかけてプロダクトへの反応を直接観察した。

「推測するのをやめて、実際に使ってもらい、そのまま教えてもらおうとした。そこから学んだことは非常に大きかった」

2-2. 定性調査と定量分析の役割分担

Bhatt氏は定性・定量の使い分けについてこう整理する。「10人にインタビューをして同じことを繰り返し聞いたとき、それを仮説として立てる。その仮説が多くの人に当てはまるかどうかを、データで検証する」

定性調査はアイデアの源泉として、定量データはその妥当性の確認として機能する——この構造は、多くのプロダクト開発にも共通する考え方だ。

2-3. 初めてのプロダクトマーケットフィット

Robinhoodが最初にウェイトリストを公開したとき、Bhatt氏は、「数百人か、うまくいけば数千人」の登録を想定していた。実際の反応はその想定を大きく上回るものだった。

「あのとき初めて、プロダクトマーケットフィットというものを目の当たりにした。これがそれか、と。消費者向けプロダクトにおける一つの指標は、期待を超えたサインアップだ」

「100,000人規模のグループがどう行動するかを、人間の脳は直感的に理解できない。だからこそ、実際に出してみるまでわからない」とも語った。

3. 宇宙へ——Cowboy Space Corporationが解こうとする問題


3-1. AIスケールの壁は「エネルギー」

現在Bhatt氏が取り組む新会社Cowboy Space Corporation(旧Aether Flux)は、AIのスケールアップを阻む最大の課題のひとつとしてエネルギーインフラを挙げる。

「AIの成長に必要なエネルギー需要は、地球上で賄いきれないと考えている。宇宙は、この問題に対する自然な解答になり得る」

具体的なアプローチは、ロケットの上段をそのまま宇宙データセンターの衛星として活用する独自のアーキテクチャだ。ロケットのフェアリング部分が宇宙空間で展開し、大型ラジエーターとして機能しながら、太陽光パネルで電力を供給してメガワット級のデータセンターを動かす構想だ。

同社は打ち上げから衛星まで垂直統合を進め、エネルギー供給の宇宙インフラを丸ごと手がける方針だ。

3-2. 「プラットフォームの転換点」というパターン認識

Bhatt氏は、RobinhoodとCowboy Space Corporationの共通点をこう説明する。「Robinhoodのときはモバイルという新しいプラットフォームがあり、そこに金融サービスがネイティブに存在しなかった。今回は宇宙という新しいプラットフォームに、エネルギーという産業がネイティブに生まれる可能性があると見ている」

新しいプラットフォームの上に、まだそのプラットフォーム専用に設計されていない産業の垂直領域を見つけること——この思考の枠組みは、2度の起業を貫く一貫したテーゼだ。

4. チームと組織——初期フェーズの人材の特徴


Bhatt氏は、スタートアップの初期フェーズで活躍する人材の特徴について率直に語った。「こういった環境で活躍する人材は、どこか一風変わっている。Robinhoodの初期には、大学を中退したり、まったく実績のない若者が、気づけば優れたリーダーに成長していた」

共通するのは「自分が何を知らないかを知っている」という姿勢と、失敗することへの耐性だという。正解を知っていることより、未知への好奇心と柔軟さが早期フェーズには重要だというのがBhatt氏の見方だ。

5. 若い起業家へのメッセージ——「失敗を急げ」


5-1. 「今すぐやめて、アイデアに取り組め」

起業を考えている若者に向けて、Bhatt氏は明確なメッセージを送った。「よく聞くのが『正しいタイミングを待っている』という言葉だ。でも今より簡単になることは絶対にない。今すぐ話をやめて、アイデアに取りかかれ」

若さのエネルギーは、正しくない方向性に走り続ける体力にもなる——それが最終的に正しい方向を発見する経路だと同氏は考えている。

5-2. 「失敗へのアルゴリズム」

Bhatt氏が自身の思考プロセスとして明かしたのが「できるだけ早く失敗する」というアルゴリズムだ。最初のアイデアをその論理的な結論まで走らせることで、80%ほど進んだところで「これは本当に正しいアイデアではないかもしれないが、本当のインサイトはここにある」という気づきを得られることが多いという。

「その気づきは、最初の段階で話をやめずに実際に動かなければ、絶対に得られなかったものだ」

この「行動から生まれるアイデア」という考え方は、「完璧なアイデアが先にある」という一般的な起業神話とは対照的だ。

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