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従業員40%削減。Jack Dorsey率いるBlockが示す、AIエージェント時代の新しい「組織のOS」

ジャック・ドーシー率いるBlock(旧Square)のビジネスリード、Owen Jennings(オーウェン・ジェニングス)氏は、a16zのインタビューで淡々と、しかし、衝撃的な事実を語りました。Blockは、先頃、全従業員の約40%を削減するという大規模な人員整理(RIF)を断行しましたが、それは単なるコスト削減のためではありません。

AIという「電動ドライバー」を手にした今、これまでの「組織の形」そのものが非効率になったことへの、創業者主導の果敢なアップデートだったのです。本記事では、BlockがいかにしてAIを中心とした組織へと再構築(Reorg)されたのか、その全貌を解説します。


1. 2025年12月に起きた「バイナリ・チェンジ」


AIの進化にはいくつかの段階がありましたが、Jennings氏によれば、2025年の年末に決定的なパラダイムシフトが起きたと言います。

1-1. 既存の複雑なコードを理解する知能の誕生

それまでのAIは、新しいプロジェクトのコード(グリーン・スペース)を書くのには適していましたが、既存の巨大で複雑なコードベースを扱うには力不足でした。しかし、Claude Opus 4.6やCodex 5.3といった次世代モデルの登場により、その状況が一変しました。

「一握りのエンジニアがツールを使いこなすことで、従来の10倍、20倍、時には100倍の生産性を発揮し始めたのです。もはや、1,000人の人間を雇って作業させるよりも、AIシステムの方がはるかに優れていることは明白でした」

1-2. 人数と成果の相関関係の崩壊

過去数十年にわたり、テック企業の成長は「従業員数(Headcount)」と相関してきました。しかし、AIエージェントの台頭により、この相関関係は完全に壊れました。Blockは、この現実を直視し、Q1の全期間をかけて「AI時代の組織はどうあるべきか」を徹底的に議論。その結果が、40%を超える人員削減という決断でした。

2. Blockが構築した「AIエージェントOS」の正体


Blockは、単に人を減らしただけでなく、組織の中に「AIエージェント」という新しい労働力を組み込むためのインフラを数年前から準備していました。

2-1. モデルを選ばない基盤「Goose」

Blockが独自に開発した「Goose」は、モデルに依存しない(モデル・アグノスティックな)エージェント・ハーネスです。Anthropic、OpenAI、あるいはオープンソースのモデルなど、約120ものモデルを用途に応じて使い分け、開発プロセス全体をオーケストレーションします。現在、Block内で行われる自動化の多くが、このGooseを経由して実行されています。

2-2. 開発を自動化する「Builderbot」

さらに画期的なのが、「Builderbot」と呼ばれる内部ツールです。このツールは、GitHubのプルリクエスト(PR)を自律的にマージし、機能開発の85〜90%、時には100%をAIだけで完結させます。「コードを手書きする時代は終わりました。今は、AIエージェントが作成したPRを、人間が文脈を理解した上で最終的な10%を仕上げる。それが現在のBlockの開発スタイルです」

3. 「ジェネレーティブUI」:アプリの形が変わる


組織の変革は、ユーザーが手にする製品の形をも変えようとしています。

3-1. スタティックUIからダイナミックUIへ

これまでのアプリは、エンジニアが事前に定義した固定的なUI(スタティックUI)でした。しかし、Blockが展開する「Moneybot」(Cash App内)や「Manager Bot」(Square内)では、「ジェネレーティブUI」が採用されつつあります。

例えば、ユーザーが「最近の支出を可視化して」と頼めば、AIがその場でチャートやグラフを生成します。これはソースコードに事前に書かれたものではなく、AIがその都度「発明」するUIです。「あなたのCash Appと私のCash Appは、見た目も機能も全く異なるものになるでしょう。アプリが人間に合わせる時代が来たのです」

3-2. プロアクティブ・インテリジェンス

Blockが重視しているのは、ユーザーにプロンプトを打たせることではありません。AIがユーザーの文脈を先読みし、適切なアクションを提案する「プロアクティブ(先回り型)」な体験です。これにより、金融という複雑な領域において、AIがパーソナルCFOのように振る舞うことが可能になります。

4. AI時代に生き残る企業の「真の堀(モート)」とは


あらゆる企業がAIを導入できるようになった今、何が競争優位性を分けるのでしょうか。Jennings氏は、将来的な「堀」について非常に鋭い洞察を示しています。

4-1. 「他人が理解できない何か」を理解しているか

単にコードを生成できるだけでは、もはや差別化にはなりません。 「最大の堀は、他社が理解するのが極めて困難な何かを、その会社がどれだけ深く理解しているか、という点に集約されます」

Blockの場合、それは「買い手と売り手が経済にどう参加しているか」という膨大なデータと深い洞察です。この独自の「信号(シグナル)」をAIにフィードバックし、学習ループを回し続けること。この改善サイクルを1日に数百回、数千回と回せる企業こそが、最終的に勝ち残ります。

4-2. リーンな組織への回帰

Blockの組織は、かつての階層的な機能別組織から、1〜6人の小さな「スクワッド(分隊)」へと再編されました。管理レイヤーも50%以上削減され、情報は自由に行き交っています。 「小さく、痩せ型で、レイヤーが少なく、スパン(管理範囲)が広い。そしてひたすらビルド(構築)に戻る。それが今のBlockです」

まとめ:あなたの組織は「バイブ・コード」で消えないか


Owen Jennings氏の話は、未来の予言ではなく、すでに起きている現実です。

AIエージェントを「1,000人の部下」のように使いこなし、意思決定のスピードを極限まで高めるBlockの姿は、すべてのビジネスパーソンにとっての鏡となります。 「もし、自社が他社に真似できない何を深く理解しているのか答えられないなら、その会社はAI(Vibe Coding)によって消し去られてしまうかもしれません」

私たちは今、歴史上最も激しい「組織の進化」の目撃者であり、当事者なのです。

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