投資家は“第1イニング”にいる──AIラリーを制する視座とは
本稿では、Goldman Sachs Exchangesの「AI Exchanges: How tech giants are navigating the AI landscape」より、アリソン・ネイサン氏、ジョージ・リー氏、エリック・シェリダン氏らによる対談をもとに、米国を代表するテックジャイアンツがAI時代にどのように対応し、投資家は何を注目すべきかを解説する。専門的な内容をできるだけわかりやすくし、発言引用や具体的事例を織り交ぜて論じる。
1. テックジャイアンツのコミットメント──資本支出と供給制約
1-1. 2025年残り期間の資本支出維持
対談冒頭でジョージ・リー氏は、「これら大手企業は、少なくとも2025年末まではAI対応のための資本支出を維持する意向を示している」と指摘した。具体的には、Metaが売上比で約40%の資本強度を維持し、Alphabet(Google)やAmazonも同様の方針を堅持している。
「We are first batter, second strike of the first inning.」(我々は第1イニングの1打者目、2ストライク目にいる)
この言葉からも分かるように、AIという新たな“試合”の先行きに大きな期待感を抱きつつも、まだ序盤戦だという認識をあらわにしている。
1-2. 供給制約下の需要増大
一方で、多数の顧客がAIワークロードを求めるなか、GPUなどハードウェア面での「供給制約」が深刻化している。これに対し、CoreWeaveのようにNVIDIA製GPUを中心にレンダリング・AI訓練基盤を提供する新興企業が登場し、テックジャイアンツの供給網強化に一役買っている例がある。
2. 第三のコンピューティングシフトとしてのAI
2-1. 過去の「シフト」と本質的類似性
エリック・シェリダン氏はコンピューティングの歴史を振り返り、
Web 1.0(デスクトップコンピューティング)
Web 2.0(モバイルコンピューティング)
Web 3.0(AIを中心とした新たな波)
という三段階のシフトがあり、現在は後者の“後半”から“初期フェーズ”へと急速に進んでいると説明した。
「チャットGPTの登場前、ほとんどの人はChatGPTを知らなかった」
という事実からも、わずか2年半で月間8億人超のアクティブユーザーを獲得したAIインタフェースの“バズ速度”を強調している。
2-2. インフラ層→プラットフォーム層→アプリケーション層の進展
また同氏は、「あらゆるコンピューティングシフトにはインフラ→プラットフォーム→アプリケーションの三層構造がある」とし、
インフラ層:大規模言語モデル(LLM)の訓練・構築
プラットフォーム層:AI APIや開発環境の提供
アプリケーション層:実際の業務や消費者向けサービス(例:Gemini、ChatGPTなど)
という流れをたどると指摘。現在はプラットフォーム層への移行期にあり、これからアプリケーション層の「本命」が続々と現れるフェーズだという。
3. 投資家が注目すべきポイント
3-1. 資本強度と成長率のトレードオフ
テックジャイアンツの資本支出は巨額に上る一方で、
Meta:売上比約40%の資本強度
Alphabet:2025年CapEx 750億ドル予想
Amazon:1000~1100億ドル規模のCapEx予定
といった水準が維持され、「この水準が続くと成長率は今後40~60%から中間二けた台に落ち着く可能性」が示された。
3-2. タリフ(関税)影響の顕在化
近年の米中貿易摩擦や部品調達コスト上昇に伴い、「関税がCapEx入力コストを押し上げる」事例が報告されている。Metaは関税分を見越しCapExを引き上げ、Opex(運営費)は下方修正するなど、マクロ要因への対応策を講じている。
3-3. 広告自動化と検索の行方
AI導入による広告運用の自動化では、
「広告の作成、配信、効果測定を自動で繰り返し、ROI向上を実現」という好循環が成立し、GoogleやMetaのコアビジネス強化に寄与している。一方で「検索のカニバリゼーション」は懸念されるものの、現状では検索広告収益への顕著な影響は観測されていないとの見解だ。
4. 今後の展望とリスク要因
4-1. アプリケーション層での勝者・敗者
最も重要なのは「プラットフォーム層を経て、どのアプリケーションが採用されるか」だ。過去のWeb 2.0では、UberやAirbnbが既存のタクシー業界・宿泊業界を塗り替えたように、AI時代でも新興企業が既存プレイヤーを脅かす可能性がある。
4-2. 投資家の忍耐力
エリック氏は、投資家が「数四半期の業績に一喜一憂しやすい」点を懸念しつつも、
「5年後を見据えた投資判断ができるかが最大のカギ」
と述べる。先行きの不確実性は高いが、長期的視点での資本投入こそがAIラリーの勝敗を分けるという示唆である。
テックジャイアンツは、資本支出を惜しまずAIインフラを拡充し、プラットフォーム層からアプリケーション層への展開を急ピッチで進めている。投資家は、マクロ要因(関税や景気変動)と、各社の資本強度・成長見通し、そして最終的にどのアプリケーションが市場を制するかを見極めることが求められる。AIの「序盤戦」はまだ続く──ゆえに、これからの動きを長期的視点で注視していきたい。
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