米国7月雇用、23,000人減で反転 ― データセンター建設だけは20,000人近い増加
米国の雇用市場に減速の兆しが見られる一方、AIが関わる産業分野だけは着実な伸びを見せている。8月7日放送のBloomberg Techでは、この雇用統計の分析に加え、Twilio・Lyft・DraftKingsの決算、SpaceXの株価動向、そして、OpenAIの新デバイスやTikTokをめぐる内部文書の報道まで、幅広いテーマが取り上げられた。
1. 7月の米雇用、23,000人減 ― しかし、AI関連セクターは堅調
1-1. 労働力人口の縮小が失業率を押し下げる
Bloombergのマイク・マッキー氏は、7月の米雇用統計について「数カ月ぶりに雇用が減少し、23,000人の減少となった。前回の減少は2月だった」と説明した。減少の主因は政府部門の雇用だとし、「表面的に見えるほど悪い内容ではない」と付け加えた。失業率は、4.1%に低下したが、その理由は労働力人口が24万人減少したことによるものだという。「仕事を探していない人は失業者にはカウントされない」ためだと説明している。
一方で、AIに関連する明るい材料として、マッキー氏は、「AIデータセンター向けの建設で多くの雇用が生まれている。特殊工事業者と非住宅建設だけで合計約20,000人の雇用が増加しており、この分野での労働需要の高まりが続いている」と指摘した。コンピューターや半導体の製造分野でも雇用が増加しているという。「現時点では、AIが先月好調だった数少ない分野の一つであり、減速の兆しは見られない」と述べた。
1-2. Lattice CEO「これは危機ではなく再調整だ」
HRテック企業Latticeの CEOであるサラ・フランクリン氏は、この雇用データについて「これは危機ではなく、再調整だ。AIが形を成すにつれて労働力が変化し、進化している様子が見えている。テック業界だけでなく、製造業や建設業でも同様だ」と述べた。企業の長期的な人材計画については、「過去数年の混乱を経て、企業は今、長期的な計画を立てられるようになっている。AIが何に有効で何に有効でないかを、1年前よりもはるかによく理解している」と説明する。
「AIがあるからといって、仕事そのものがなくなるわけではないと企業は理解し始めている。従業員を大量に解雇して仕事が消えるわけではない。彼らの知識や、会社への信頼、企業文化が必要だ。だからこそ企業は"退職金パッケージではなく、スキルへの投資が必要だ"と言うようになっている」と述べた。AIスキルを持つ人材の待遇についても、「需要のあるスキルを持つ人は、しっかりとした報酬を得られるようになる。コストが上がれば、賃金も上がる必要がある」との見方を示している。
2. SpaceX、ロックアップ解除でも株価は9%上昇
市場では、SpaceXの株価が、大量のインサイダー株式解除にもかかわらず値を戻す動きも見られた。木曜・金曜と株価が上昇し、912万株、約1000億ドル規模のロックアップ解除という複数日にわたる動きの中での回復となった。この動きは、SpaceXの上場後初の決算でAI関連支出が予想を上回ったことを受けて水曜に14%急落した後のものだ。株価上昇の一因として、Argusが、同社株を「買い」に格上げし、AI投資からの急速な回収を指摘し、目標株価を160ドルに設定したことが挙げられている。ただし同社株は、6月のIPO価格である135ドルを依然として下回る水準にとどまっている。
3. Twilio決算後に株価30%超上昇 ― 「AI時代のスイス」戦略
クラウドコミュニケーション企業Twilioは、第2四半期決算を発表し、売上高でアナリスト予想を上回るとともに、過去最高の収益性とキャッシュフローを記録した。株価は一時30%近く上昇し、2020年5月以来最大の上昇率を記録する場面もあった。
CEOのコゼマ・シップチャンドラー氏は、「素晴らしい四半期だった。トップラインの成長を再加速させ、粗利益を伸ばし、過去最高のフリーキャッシュフローと収益性を記録できた。今、当社は良好な財務特性を示せる数少ない銘柄の一つであり、株式報酬も削減しながら、"AIの勝者"として自らを位置づけられている」と述べた。同氏は自社の立ち位置について「捕食者か被食者かではなく、我々は、このAI時代の"スイス"であるとして自らを位置づけている。どの企業がどんな選択をしても、シームレスに統合できるインフラになりたい」と説明した。4800もの異なる国・地域とのキャリア契約網が、規制対応やコンプライアンスの複雑さを伴う"堀"になっているという。
AI関連の収益への貢献については、「正直に言うと、AIは今のところ話の一部にすぎない。追い風にはなっているが、収益への実質的な貢献は比較的小さい。AIの物語はまだ非常に早い段階にあるので、これからさらに多くの追い風が来るだろう」と述べた。「AIネイティブ企業」と呼ばれる企業のTwilio利用については、「数千社に及ぶのは事実だが、実際の収益への貢献は比較的小さい。収益の大部分を占めるのは、はるかに大規模な既存企業だ」と説明している。
エージェント型AIの将来像についても言及があり、「エージェントと人間のインタラクションには、専用のチャネルが必要になる。エージェントとやり取りする際、相手が誰であるかを特定する必要がある未来を見据え、アイデンティティへの投資を始めている」と述べた。
4. Lyft、サンフランシスコで前年比20%増 ― Waymoが生む「市場拡大」
配車サービスのLyftは、プレミアム配車の需要拡大と欧州市場の強化を追い風に決算を発表した。CEOのデイビッド・リッシャー氏は、サンフランシスコ市場で前年比20%の成長を記録した理由について問われ、「業界は自動運転車の登場という大きな変革の最中にある。Waymoが、その市場リーダーだ。こうした変化が起きるとき、代替が起きるか、市場拡大が起きるかの2つのシナリオがあるが、今回は市場拡大が起きている」と説明した。「自動運転車に乗った人は、それを非常に気に入る傾向がある。信頼性が高く、プライベートな空間を保てる製品だが、それでも人間のドライバーに運転してもらうことへの関心が失われるわけではない」と述べている。
サンフランシスコの需要増加が、Waymoからのシェア移動なのか、単純な供給不足による代替なのかという問いには、「正直、どちらも起きているだろう」と回答した。「長期的には、市場拡大が優位になるというのが私の見立てだ。理由はシンプルで、既存のプラットフォームに新しいクールな製品が乗ることになり、人間ドライバーの車と自動運転車を組み合わせたハイブリッドネットワークが、すべての人にとって最良の結果を生むと信じている」と述べた。
米国では、自家用車での移動が年間約1600億回に対し、配車サービス全体で提供しているのはせいぜい30億回程度にとどまるとし、「これは非常に良い体験だ。後部座席に座り、テキストを送り、自分の空間を持てる。一部の人が配車サービスを避ける理由の一つに、"他の誰かに運転されたくない"という感情があるが、自動運転車はそれを取り除く」と説明している。同氏は、事故で身体に大きな影響を受けた友人の息子の例を挙げ、「彼にとって、ドアが大きく開き、運転手がいないかもしれない自動運転車に乗るという体験は、自分だけの空間を持てるという点で意味を持つ」と述べた。
欧州展開については、「Lyftは、1年半ほど前まで基本的に国内企業だった。カナダへの展開が上手くいき、その後海外の複数の小規模企業を買収した」と説明し、バルセロナで現地のタクシーを配車できる機能を実際に4回使い、問題なく機能したと明かした。欧州とアメリカの違いについては「欧州の多くの地域では、タクシー業界の役割が非常に大きく、それが規制当局との強い関係にもつながっている。これは自動運転車を巡る対応において重要な意味を持つ」と述べている。
5. DraftKings、Kalshiとの競争激化の中で7.5%高
スポーツベッティング企業DraftKingsは第2四半期決算で、Kalshiとの競争激化を背景に市場予想を下回る内容となったが、株価は7.5%高となり、2026年に入ってからの下落を一部相殺する動きを見せた。CEOのジェイソン・ロビンス氏は「コアビジネスは10億ドル規模の収益を生み出しており、数年前には損失を出していた事業が、今は強力なキャッシュフローを生んでいる」と述べた。
ワールドカップの影響については、「ほぼすべての指標で予想を上回った。予測市場とオンラインスポーツベッティングの両方で新規顧客を獲得でき、獲得効率も改善した」と説明し、「7月にはワールドカップ終了後も前年比20%増を記録した。これは非常に大きな数字だ」と述べている。新規顧客の定着については、「多くが以前にプレイしたことがあり、再度アクティブになって継続している」との見方を示した。
若年層への訴求方法については、「DraftKingsと他社との重要な違いは、我々が"賭け金で家賃を払える"というようなマーケティングや、大学キャンパスやフラタニティへのマーケティングを行っていないことだ。我々は成人層への訴求と、エンターテインメント製品としての位置づけに焦点を当てている」と述べ、この点は今後さらに規制の目が向けられるだろうとの見方を示した。
6. OpenAI初のハードウェア、「ドーナツ型」の詳細判明
番組では、OpenAIが、開発中の初の消費者向けデバイスについても報じられた。関係者によれば、このAIスマートスピーカーは片手で家の中を持ち運べる「ドーナツ型」のデザインで、来年発売予定だという。このデバイスは、「AIファーストのコンピューター」として位置づけられ、ユーザーの作業をサポートする役割を担う。個性を演出する「可動部品」を備え、価格は300ドルを超える見通しだとされている。
7. BlackRock、Meta向けデータセンター債務調達で「リアルマネー」投資家に照準
市場では、AI関連債務市場の動向にも注目が集まった。BlackRockが、Meta向けデータセンター案件の債務ファイナンスを調達する際、短期的な利益を狙う投資家を避け、年金基金や保険会社といった「リアルマネー」勢に照準を絞ったことが報じられている。Bloombergのクレジット担当記者は、「先月はまさにこうした債券が二次市場で振るわなかったという話をしていた。人々は供給過剰への懸念を抱いている」と説明し、「AIの拡大自体は市場も認めているところで、いずれ何らかの形でファイナンスされる必要がある。銀行が今やろうとしているのは、市場からリスクをできるだけ取り除くことだ」と述べた。
具体的には、Barclaysが300人の投資家に「何がリスクプレミアムを高めると考えるか」を調査したところ、60%が「供給のペース」を挙げ、25%が「AI投資の行方」を挙げたという。「発行体側も"今日250億ドルを調達するが、年末までは戻ってこない"という安心材料を提供している」と説明し、前日のAlphabetの起債がその例として挙げられた。
8. TikTok内部文書、16歳少年の自殺とアルゴリズムの関係を露呈
番組終盤では、Bloombergのオリビア・カービル記者が報じた、TikTokに関する重大な調査報道が取り上げられた。2022年、ニューヨーク州ロングアイランドで16歳の少年チェイス氏が自殺した。うつ病の診断歴もなく、友人も多く、明るい性格だったという同氏の母親が、息子のソーシャルメディアアカウントを調べたところ、大量の自殺・悲しみ・孤独に関する動画が表示されていたことが判明した。
カービル氏は、この件を巡る内部文書についてコメントを求めた結果、社内調査が行われていたことが分かったと説明する。「この内部の機密文書は、チェイス氏の視聴履歴を極めて詳細に分析したもので、死の直前の数日、数週間、数時間に何を見ていたかを記録しており、会社側の分析でも彼が"フィルターバブル"、つまり、同種のコンテンツによるオンラインのエコーチェンバーに陥っていたことが確認されていた」という。TikTokは、当時、フィルターバブル防止策の効果を検証する実験を行っており、1500万人のユーザーに対して安全機能を意図的に提供しない対照群を設けていた。チェイス氏はこの対照群に含まれていたという。
TikTokの対応について、カービル氏は、「この社内レビューの中で、従業員自身が"対照群の規模が大きすぎた"と指摘している。ユーザーの10%に送るべきではなかった。対照群をユーザーの1%に減らし、極端なダイエットやチェイス氏のケースのような自殺・うつに関する問題コンテンツへの露出期間も短縮すべきだという議論があった」と説明した。「露出期間は半年から1年だったものを7日間に、対象人数は1500万人から1%まで縮小した。この変更は、チェイス氏のアカウントで何が起きたかを会社側が把握した時期とほぼ同じタイミングで行われた」という。TikTokはこの報道への対応として、「ユーザーの安全と幸福に深くコミットしており、悲劇的な喪失を経験したすべての家族に心を痛めている」との声明を出し、その後導入された他の安全機能について言及したとしている。
なおMetaについても、若年層のプラットフォーム利用方法の変更を命じられ、損害対応基金への5億ドル超の支払いに加え、3.75億ドルの民事罰金を課されたことが番組内で報じられた。

