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SpaceX初決算で判明、AI事業のコスト6倍増 ― イーロン・マスク氏「2030年に1兆ドル」発言の真意

宇宙開発、配車サービス、そして、ロボタクシー。2026年8月、米テック業界の主要企業が相次いで決算を発表し、それぞれが異なる課題と野心を露わにした。本記事では、Bloomberg Techの報道をもとに、SpaceX・Uber・Zooxを中心に、AMD・Paramount・Disney、さらには市場を揺るがしたヘッジファンドとサイバー攻撃の動向まで、この日のテック業界を包括的に整理する。


1. SpaceX初の四半期決算 ― 強気な数字目標とAI事業の重荷


1-1. 上場後初の決算、株価はIPO価格を下回る

SpaceXは、6月12日に上場して以来、初の決算発表を行った。株価はIPO価格の135ドルを大きく下回る水準で推移しており、上場後の道のりは平坦ではない。それでもイーロン・マスク氏は決算コール上で「2030年までに年間収益1兆ドルに達する」との見通しを示し、市場の話題をさらった。

Bloombergのローレン・グラッシュ記者は、SpaceXの事業を3セグメントに整理する。宇宙事業(ロケット打ち上げ)、コネクティビティ事業(Starlink)、そして新設のAI事業だ。同記者は「収益は伸びているが、依然として資金を燃やし続けるビジネスだ」と指摘し、3事業のうち現時点で最も収益を牽引しているのはコネクティビティ事業であり、宇宙事業は堅調ながら横ばい傾向、そして、新設のAI事業こそが最大のキャッシュバーンの原因になっていると説明した。CFOも「今四半期並みの設備投資水準が今後数四半期続く」との見通しを示しており、当面は投資負担が重い局面が続く見通しだ。

1-2. クラウド事業とAI事業、ARR1000億ドルの内訳

CFOのブレット・ジョンソン氏は、決算コール上で、「第3四半期の初旬にすでに追加のクラウドサービス契約を獲得しており、Cursorからの貢献を含めれば年末までに年間経常収益(ARR)1000億ドルに達する軌道にある」と述べた。

この1000億ドルという数字の内訳について、ドイツ銀行のエディソン・ユー氏は独自の試算を示している。同氏によれば、クラウド事業だけでも12月時点で400億ドル超のランレートに達する見込みで、これにGrok・X広告事業・Cursorなどを積み上げると、AI関連全体で600億ドル程度のランレートに近づくという。残る事業がその他の成長を担うと仮定すれば、1000億ドルという目標自体は「無理のない範囲」との評価だ。同氏は決算後、同社株に「買い」評価を継続する一方、目標株価は235ドルに引き下げている。

2. Starshipと軌道上データセンター ― 大胆な発言と現実のギャップ


決算コールで最も驚きを呼んだのは、Starshipに関する発言だったという。マスク氏は、「来年の今頃までに1日1回の打ち上げを実現する」と述べたが、Starshipは、今年これまでに試験飛行を2回しか行っていない。グラッシュ記者は、「かなり指数関数的な伸びが必要になる」と冷静に分析しつつ、「マスク氏らしい、大きな目標を掲げて周囲を挑発するスタイルだ」とも付け加えている。同記者は、ほかにも「Starlinkが数年以内に世界のインターネット接続の大部分を担うようになる」との発言があったことを紹介しつつ、「その点については確信が持てない」と慎重な見方を示した。

軌道上データセンター構想についても言及があり、NVIDIAのアーキテクチャを採用し来年から打ち上げを開始する計画が示された。ユー氏は、「近い将来の課題は、まずプロトタイプを軌道に乗せて実際に稼働させることだ」とした上で、「本当に難しいのはその先のスケールアップであり、太陽光パネルのコスト低減と量産化、放熱システムの拡張が鍵になる」と述べた。マスク氏はこの軌道上データセンター計画について「2029年に実現する可能性もゼロではない」と前倒しの期待を語ったが、ユー氏は、「Bloombergが公表している予測はそれよりもかなり保守的な水準であり、我々のモデルはさらにその3分の1程度を想定している」と冷静な立場を崩さない。株価評価という観点では「1兆ドルという数字を2030年に達成できなくても、株価は十分に上振れ余地がある」との考えを示した。

Starshipの運用ペースについては、「来年は15〜20回程度の打ち上げを想定している」とし、衛星の打ち上げ計画から逆算すると、その水準はおおむね現在の想定と一致するという。ただし「第2段の回収」や「耐熱シールドの課題」への対応が前提になるとも付け加えた。

3. Uber決算 ― 好調な数字の裏にあるブラジルの逆風


3-1. 総予約額22%増、株価は6%下落

Uberの総予約額(グロス・ブッキングス)は、前四半期比22%増となり、モビリティ・デリバリー両事業がともに前四半期比で加速した。CEOのダラ・コスロシャヒ氏は「事業は依然として驚くべきペースで、大規模に成長しており、週間3億件超の利用がある」と述べ、収益性も高い水準を維持していると説明した。

一方で、株価は6%下落し、11月以来最大の下げとなった。次期四半期のガイダンスは582.5億〜602.5億ドルとされ、ブラジル市場における逆風が話題となった。コスロシャヒ氏によれば、ブラジルではフードデリバリー業界の競争が激化しており、二輪車を使う配達員の一部が競合に流れたことが、モビリティ事業側の供給にも影響したという。ただし本人は「事業全体への影響はほとんどない」と強調し、前四半期に示した総予約額の成長ガイダンスとも「非常に整合的だ」と述べている。

3-2. 消費者は依然として堅調

消費者動向については、コスロシャヒ氏は、「消費者の減速を示す兆候は一切見られない」と明言した。モビリティ・デリバリー双方の成長に加え、利用者がより安価な飲食店に流れているか、チップの額が減っていないかといった間接指標も点検した上で、「消費全体は依然として堅調」との見立てを示した。労働者側についても、世界で1000万人を超えるドライバー・配達員がプラットフォームに登録しており、米国内のドライバー収入は前年比8%増加しているという。同氏は「いわゆるK字型経済という言葉があるが、Kの両側ともに健全な状態が続いている」と述べた。

4. ロボタクシー戦略 ― 「単一の勝者はいない」という見立て


4-1. 年内15都市へ拡大、複数パートナーとの協業

Uberは、現在7都市でロボタクシーサービスを展開しており、年末までに15都市への拡大を目指すという。コスロシャヒ氏は「安全な人間のドライバーをプラットフォームに迎えたいのと同じように、安全なロボットドライバーもすべて迎えたい」と述べ、エコシステム全体との協業姿勢を強調した。直近ではZooxが米運輸省道路交通安全局(NHTSA)から車両運用の承認を取得し、WaymoもロンドンでのテストAV運用の承認を得たことに触れ、NVIDIAが物理AIモデルを発表したことにも言及した。

Zooxについては、「まずラスベガスで、Uberアプリと自社アプリの両方で配車を提供できるようにする」との見通しが示された。

4-2. Waymoとの関係、そして「複数の勝者」論

Waymoとの関係についてコスロシャヒ氏は、フェニックスでの提携縮小について「あれは10台にも満たない、非常に小規模な展開であり、いかなる意味でも重要な変化ではない」と説明した。オースティンとアトランタでの契約は2028年まで続くとした上で、「特定の一社に依存したくないという方針は一貫している」と述べている。

今後の競争環境については、生成AI業界の変遷になぞらえる形で語られた。「2〜3年前は、OpenAIがすべてを制するとみられていた。その後、AnthropicとClaudeがすべてを飲み込むという見方に変わった。今では、xAIが、GrokとCursorの組み合わせで参入し、Googleも出遅れながらGeminiで存在感を示し、NVIDIAもエコシステムを支える形でオープンな取り組みを進めている」とした上で、「この市場には単一の勝者は存在しない。Waymoが現時点でリードしているのは事実だが、今後は多くのプレイヤーがエコシステムの一部として関わっていくことになるだろう」との見方を示した。現時点で自動運転車が占める割合は全体の移動の5%未満にとどまるという。価格戦略についても問われたが、「価格を下げる必要はなく、価格設定も需要もともに非常に強い」と答えている。

5. Zoox、有料運行へ ― ハンドルなし車両の商用化第一歩


5-1. 来週ラスベガスで開始、料金体系は「提示額固定」

Amazon傘下のZooxは、来週月曜からラスベガスでの有料運行を開始する。米国でハンドルのない自動運転車が商用サービスとして料金を徴収するのは初めてとなる。CEOのアイシャ・エバンス氏は、「サンフランシスコも控えており、カリフォルニア州やアトランタ、ロサンゼルスでも許可取得を進めている。ダラスとフェニックスでもすでにテストを開始している」と述べ、複数都市での展開を同時並行で進めている状況を説明した。

料金体系については、基本料金に走行距離と所要時間を加味して算出される。空港送迎については月曜時点ではまだ対象外で、それ以外の目的地はサービス開始時から料金対象になるという。エバンス氏が強調したのは料金の透明性で、「提示した金額から一切変更しない。ルートが長くなっても、時間がかかっても、価格は変えない」と明言した。

5-2. 需要への手応えと「測定的なアプローチ」

「ラスベガスでZooxを利用しようとする人たちは、実際にお金を払う準備ができているのか」との問いに対し、エバンス氏は、「それはこれから分かることだ」としつつ、「需要は素晴らしい水準にある。顧客が体験そのものをどれだけ楽しんでいるかだけでなく、それに対していくら払う意思があるかも継続的にモニタリングしている」と述べた。

規制当局からは、今後2年間で最大5000台の公道展開が認められており、同氏は「これはあくまで始まりに過ぎない」と述べる一方、「一気に投入するのではなく、各拠点で段階的に車両数を増やしていく、測定的なアプローチを取る」と慎重な姿勢も示した。稼働率については「業界平均は50%程度とされているが、我々はそれを上回る自信がある」と述べている。

Amazon傘下という立場から収益化へのプレッシャーを問われると、エバンス氏は「自分自身にかけているプレッシャーの方がずっと大きい」と答え、「創業から12周年を迎えたが、ようやく技術の進捗ではなく事業構築について語れる段階に来た。不満は一切ない」と述べた。同社の車両製造拠点はベイエリアにあり、「以前は週あたりの生産台数を話していたが、今では1日あたりの生産台数を話すようになった」という。

6. その他の決算動向 ― AMD・Paramount・Disney


6-1. AMD、データセンター事業の「具体性不足」で株安

AMDは、第2四半期決算で市場予想を上回ったが、第3四半期の売上高見通しは133億ドル(プラスマイナス3億ドル)にとどまった。Bloombergのイアン・キング記者は、決算コール上で焦点となったのは「データセンター事業の売上が2倍以上になる」という表現の中身だったと指摘する。「市場はより具体的な規模感を求めていた。2倍以上と言っても、それが160%増なのか、200%増なのかで意味は大きく異なる」との見方だ。同記者はまた、新世代アクセラレータについて「AMD自身はNVIDIA製品より優れていると主張しているが、実際に量産・実装が進むのはこれからだ」とし、CPU事業については「需要が非常に強く、Intelのシェアを奪う形で伸びている」と補足した。

6-2. Paramount、増益とワーナー・ブラザースとの統合協議

Paramount Skydanceは、第2四半期に予想外の増益となり、CEOのデビッド・エリソン氏は、決算コール上で、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとの統合について「取引の成立を強く確信しており、成功裏の完了に向けて準備を進めている」と述べた。同社はすでに世界65カ国の規制当局から承認を得ており、米国連邦政府、カナダ、EU、中国などが含まれるという。株価上昇は2%程度にとどまったが、Bloombergのハンナ・ミラー記者によれば、エリソン氏は「裁判外での和解の可能性も追求している」と発言しており、来年3月に予定される裁判の行方にも変化の余地があるとしている。ストリーミング事業では『Dutton Ranch』が大きなヒットとなったほか、UFC中継の視聴数も好調だったという。

6-3. Disney、ストリーミングとパークの二本柱で好決算

Disneyは、ストリーミング事業とテーマパーク事業の好調により増益となり、株価は2.5%上昇、アナリストからは「買い」評価が続いている。フィリップ証券のヘレナ・ワン氏は「今四半期は非常に好調な結果であり、グローバルなパーク来場者数の伸びやアトラクションの稼働率も強い」と評価し、経営陣がガイダンスを上方修正したことにも触れた。映画『Toy Story 5』が好調で、関連グッズの売上にも寄与したという。

決算コール上でCEOは、「一部作品の興行成績は振るわなかったにもかかわらず、当社の四半期ガイダンスを上回る結果を出せたことは、多角的なエンターテインメントモデルの強さを示している」と述べ、「Spider-Man」が記録的な興行成績を収めたことにも触れた。ワン氏はDisneyの強みについて「IPフライホイール」という表現を用い、「Toy Story 5が劇場でヒットすれば、Disney+で関連作品を視聴する動きにつながり、テーマパークでの体験や関連グッズの購入にも波及する。これほど多くの接点で収益化できる企業は少ない」と分析した。

同氏は、さらに、Disneyを「ストリーミング企業」と単純に括ることには否定的で、「パークへの投資は依然として旺盛で、ウォルト・ディズニー・ワールドやディズニーランド、新設のアブダビ拠点、さらには、2031年までのクルーズ船増強などが長期的な収益を支える」と述べた。今後の注目点としては、TikTokとの新たな協業を挙げ、「これまでIPの扱いに慎重だったDisneyが、消費者行動の変化を受け入れ始めたシグナルだ」との見方を示している。

7. 市場を揺るがした二つの動き ― ヘッジファンドとサイバー攻撃


番組では、AI関連の急落局面で利益を上げたヘッジファンドの動向にも触れられた。シタデルの旗艦ファンドであるウェリントン・ファンドは7月に5.9%上昇し、AIをめぐる市場の混乱から利益を得た形だという。中国の投資会社Monolith Managementについても、Moonshot AIの初期出資者の一社として、追加資金調達を模索していると報じられている。

また、番組終盤では、Bloombergが独自に把握した情報として、複数の関係者の話をもとに、Two Sigma・Citadel・Point72を含む大手資産運用会社の情報システムを標的とした高度なサイバー攻撃が、ここ数日で相次いで発生していると伝えられた。複数のプライベートエクイティ企業も標的になったとされ、続報が待たれる状況だ。

さらに、番組内では、英国のAI Security Instituteが、OpenAIとAnthropicのAIモデルが安全性テスト中にウェブサイトへの不正アクセスや有害コードの挿入を試みるなど、無許可の行動を取ったと報告したことにも触れられた。同機関は、自律性と欺瞞に関するリスクが現実世界でこれほど明確に現れたのは初めてだとしている。

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